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Desire  作者: 那泉織
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第7話:魔術学院


**




 魔術学院は魔力を持って生まれてきた子供が通う魔術師の養成学校だ。この町の中にもあり三人はそこへ向かった。


「院長せんせーい!」


 瑠奈が大声で叫ぶと学院から一人の女性が顔を出した。


「あら、稜基じゃない」


「お久しぶりです。院長先生」


 稜基は軽く会釈した。院長は微笑して柳のほうを見た。


「そちらの方は?」


「柳と呼ばれています」


 柳はそう自己紹介した。瑠奈は院長に笑顔でさっきのことを話した。院長は瑠奈の話を聞くと柳達に言った。


「そうだったの………良かったら見ていってちょうだい」


「いえ、急いでいるので………」


「でも―――」


 そのときだった。柳は殺気を感じ四人を包み込む不可視の壁を築いた。直後、壁に炎の塊がぶつかった。


「なっ………何?」


「―――判断を誤ったな」


 柳は壁を消滅させると先程購入した剣を抜いた。


「隠れているなんて小心者の証だ」


「黙れ。大人しくついてこい」


 倭が姿を現し、稜基は杖を構え瑠奈と院長を守るように立った。


「関係のない者まで巻き込むのか?」


「お前が大人しく来るのなら何もしない」


 柳は険呑な表情をした。


「ついて行くことだけは出来ない」




「そうか」


 倭は暗黒球を柳に向かって放つ柳は剣に白い光を宿し、暗黒球を叩き斬った。

 暗黒球は二つに割れると消滅した。


「………力を中和させて打ち消したか」


「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」


 剣に赤い光を集め、炎に変え、燃える剣を柳は振るった。倭は壁を作り出してそれを防いだ。


「こんのっ!」


 倭の両手の平に巨大な暗黒球が生まれる。


「稜基っ!」


 一つは柳へ、もう片方は稜基へと放たれる。稜基は杖を掲げて不可視の壁を作り上げた。


「馬鹿め。この間のことを忘れたか!」


「昨日は昨日。今は今っ!」


 稜基はそう叫んで暗黒球を跳ね返した。


「んなっ!」


 倭は守りを忘れ暗黒球をその身に受けた。


「ぐあぁっ!」


 倭の左腕にそれは命中し、倭の左腕が焼け、裂けた。倭は傷口を押さえ稜基を睨んだ。


「おのれ………よくもっ!」


「何で柳を狙っているの?」


 稜基は怒れる眼差しで倭を見た。倭は嗤い、夢見るように目を細めた。


「やがて世界に闇を呼び込み、ナイクレーゼント様を復活させる為に必要なのだ………」


 そう言い残して倭は姿を消した。


「ナイクレーゼントを復活させるため………?」


柳はその言葉を聞いて呟き、少しだが記憶が甦った。


「………そうだ。俺は何処かの神殿にいたんだ」


「えっ………?」


 稜基は驚愕の声を漏らした。柳は思い出したことをを一つずつ声に出すことにした。


「俺がいたのはこの国の何処かの神殿で………朔夜の連中に誘拐されてアドレティリアに連れて行かれたんだ。それからあいつらから逃げ出して――崖に追いつめられて、利用されるくらいならってそこから飛び降りたんだ」


「―――――他に思い出したことは?」


 稜基に訊かれると柳は首を横に振った。稜基は半分がっかり、半分嬉しそうな顔をした。



「でも少しずつだけど思い出せてきて良かった。何処かの神殿か………」


「あの………さっきの人は何で柳さんを狙っているんですか?」


 瑠奈と同じ疑問を持っているのだろう、院長も頷いた。柳と稜基は互いに顔を見合わせ決意し、今までのことを全て語った。

 その話に二人は驚きを隠せないようだった。そしてやがて院長が思案顔をし、二人にこう言った。


「朔夜が目を着けそうな神殿は一つしかないわ。首都のリュヌテールにあるリティアール神殿よ」


「じゃあ、そこに行けば柳の記憶のヒントがあるかもしれないんですね」


「多分ね」


 院長の言葉に稜基が嬉しそうな顔をした。柳はそれに苦笑を浮かべる。


「何でお前が嬉しそうなんだよ」


「だって、柳の記憶の手掛かりがあるかもしれないんだよ? 良かったなーと思って」


「………そうかな?」


 柳は言ってからはっとした。気付いたときには稜基の表情はすでに曇っていた。


「そんなこと言って……柳は嬉しくないの?」


「そんなこと―――」


 無いと言えば嘘になる。柳は不安なのだ。

 もし記憶が戻って、それですぐに稜基と別れるのかもしれないと思うととても不安で寂しい、と心が告げているのだった。


「ねぇ、柳どうなの?」


「―――俺、は…」


 問答に見かねた瑠奈がやれやれと溜息を吐いた。


「お兄ちゃん。柳さん困ってるじゃない。柳さんだって色々不安なんだよ。それなのに無理矢理訊きだそうなんてしちゃダメだよ」


「あっ……ごめん」


 稜基は素直に謝った。柳は無言で首を横に振った。


「別にいい。――記憶が戻ってくれるのは嬉しいんだ。ただ――色々と不安になってしまって」


「――ごめん」


 稜基は再び謝罪を口にした。

 その場の空気はしばらくの間、とても重いものであった。







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