第6話:兄と妹
「大量大量。これで物が買えるな」
「うん、そうだね」
約束通りの報酬を手に入れた二人は武具屋へと向かっていた。
そこで剣と杖を手に入れると続いて食料品店へと赴いた。
「とりあえず三日分ぐらいかな?」
「ドライフルーツとかは絶対買っておこう。長持ちするからな」
等々とあれだこれだと柳と稜基が相談している時だった。
「あれ………? お兄ちゃん?」
一人の少女が二人の所へと歩み寄ってきた。その少女を見て、稜基は息を呑んだ。
「瑠奈………?」
「やっぱりお兄ちゃんだ! 久しぶり、お兄ちゃん。元気にしてた?」
少女は微笑んだ。
「………妹か?」
柳は無言ののちに訊ねた。稜基は苦笑して頷く。
「うん、妹の瑠奈だよ。今はこの町にある魔術学院に通ってて、そこの寮に住んでるんだ」
「初めまして。瑠奈・アルディラージです。あなたは?」
瑠奈に訊かれ、柳は少し悩んだ。
「………一応、柳と呼ばれている。自分の記憶についてほとんど忘れてしまっているんだ」
「あ………ごめんなさい……」
瑠奈は表情を変じさせた。柳は首を横に振って言った。
「気にしなくていい。少しずつ思い出してはいるんだ。それに稜基が手伝ってくれるからな。辛くはない」
「そうなんですか……お兄ちゃん! 柳さんの足引っ張っちゃ駄目だよ?」
「足引っ張ったりしないよ!」
「どうかなぁ。お兄ちゃん結構ドジだもん」
「む…………」
稜基と瑠奈のやり取りに柳は微笑した。
「そっ、そういえば何で瑠奈はここにいるの?」
稜基は顔を恥ずかしげに赤らめていた。話題を変えようとしているのが丸分かりだ。
瑠奈は苦笑するとやれやれと息をついた。
「今日は私が食事当番なの。それで足りない物を買い足しに来たの」
そういって瑠奈は何か思いついたようだった。
「ねぇ、良かったら学院に寄ったら? 院長先生もお兄ちゃんが来るの大歓迎だと思うよ?」
「はっ?」
「ええっ!」
柳は呆気にとられ稜基は正直少し嫌そうな顔をした。
「ダメ?」
「駄目というか………」
稜基に見詰められ、柳も困っていた。
柳は朔夜に狙われている。巻き込んでしまう可能性がある為なるべく町には長居したくはないのだ。
しかし瑠奈のこんな悲しそうな顔を見ると断り辛い。
「柳、どうする?」
稜基に問われ柳は悩む。が、仕方が無く溜息をついた。
「少しぐらいなら構わないだろう」
「いいんですか?」
瑠奈は嬉しそうに笑った。稜基は柳にしか聞こえない程度の声で話しかけてきた。
「本当にいいの?」
「変に断ってしまうのも可哀想だろう」
「まぁそうだけどさぁ」
稜基は諦めるように溜息をすると仕方が無く了承した。