第4話:旅立ち
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翌朝、簡単な旅支度を終えた二人は稜基の家を後にした。
「………そういえば気になってたんだが、お前の親は?」
稜基は微笑した。
「今は家を留守にしてる。父さんは首都のリュヌテールにいるし、母さんは……今はュティの町にいると思う」
「………遠いな」
リュヌテールもュティも馬車で六、七日はかかる距離だ。
「んー。でも、仕事だから」
「………そうか。ところで、これから最初に隣町のテインに行こうと思うんだが」
稜基は頷いた。この村の店だけでは必要な旅用品が揃わない。妥当なところなのだ。
「歩いて一時間ぐらいだからすぐに着くと思うけど………でも、僕そんなにお金もってないよ?」
稜基が不安げに言うが柳は特に心配は無かった。昨日の夜に一つ思い出したことがあるのだ。
「町だし魔獣討伐の依頼ぐらい役所にでもあるだろう」
「………柳、それ本気で言ってるの?」
「冗談を言ってどうするんだ」
「…………」
稜基が無言になるのも仕方がないだろう。魔獣は邪神が生み出した人に害を与えるものだ。
村や街には滅多に出ることはないがその外には出没するときだってある。魔獣に襲われて死ぬ人間だって多い。
「大丈夫だ。稜基を危険にはさらさない。それに少し思い出したんだが、俺は人から魔獣退治をよく依頼されていた」
「だからって………」
「………嫌なら稜基は何処かで待っていろ。俺一人で行くから」
「いっ…行くよ! 柳一人じゃ心配だから…………」
稜基のあまりにも必死そうな表情に柳は苦笑した。
「じゃあ、行こう!」
「―――分かってるよ」
昨日との立場の違いが、柳には不思議で可笑しかった。