エピローグ
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ナイクレーゼントが滅んだ直後、三人の人間の前にティレイスが降臨した。
柳から全ての話を聞いたティレイスは謝辞と、謝罪を述べた。
「このような事態に陥ったのは私の責だ。……悪かった」
「……私は生きていられるのならそれで良い」
ナイクレーゼントの死によって呪いが解けた倭はぶっきらぼうに言った。
「やはり心に嘘をつき続けるのは難しい。本当は奴になど従いたくは無いという気持ちを完全に押しとどめ続けることは出来なかった……」
「いや、ほとんどもう悪役としか思えなかったから……」
稜基の感想に倭は綺麗な、優しい微笑を浮かべた。
「そうか? この命を救ってくれたこと、礼を言おう。……では、私は失礼する」
倭はそれだけを言い残すと壊れた神殿を後にした。
「あっさりとしたお礼だな」
「でも、あれが本当のあの人だって分かったね」
残された二人は大きすぎる出来事に放心していた。
「…さて、カナタ。私は戻るが―――お前は稜基を家まで送ってやれ」
「……ああ」
柳の答えを聞いたティレイスはふっと笑みを浮かべ、天へと戻っていった。
「―――稜基、行こう」
「うん」
歩きながら神殿を後にして、柳は稜基に言った。
「……俺たちは生きてんだから、好きなときにいつでも会えるよな?」
稜基はうん、と頷き、うつむかせていた顔をゆっくりと上げた。
「うん、そうだね」
稜基は満面の笑顔を浮かべて、それを柳に見せた。
そして二人はゆっくりと山を下り始めた。
少年達は笑っていた。
その表情は大切なことを忘れないように生きようと強く願う、希望に溢れる顔だと言えるだろう―――。
end
これでこの「Desire」は終わりです。
この物語を読んで下さりありがとうございました。
二年前に書いた物語をほぼ修正せずに掲載させて頂いたので、グダグダに、最後の方は特になってしまっていますが、この物語を一人でも気に入って下さる方がいれば幸いです。