第20話:真実と決着
稜基を中心にぶわっと風が巻いた。
「柳、君はもし僕が倒れたら戦って。…神を封印したり、殺せるのは同じ神か、神の器だけだってティレイスが言ってた。――だから」
稜基は決めていた。殺すことは自分には出来ない。ただ、神の力を弱めることぐらいは只人である稜基にも可能だと力を貸してくれた神は言っていた。
だから初めは自分が戦う。どんなに少しでも柳の負担を減らしたいから。だから、
「―――力を貸して。柳にばかり頼りたくないんだ」
二柱の神にそう祈る。
そして稜基はすでに構成を済ませた魔術を解き放った。
「何!?」
風が、水が、炎が、大地が、雷が――血肉を断ち切る刃となり、生命を凍てつかせる息吹となり、身を灰燼と化させる爆炎となり、全てを貫ける矛となり、天より落とされる槌となって、暗黒神を襲った。
「ぐあああああああぁぁぁぁぁぁっっっっっ!」
ナイクレーゼントは絶叫し、怨嗟のごとく声を振り絞った。
「おのれ…人間如きがぁぁ!」
「がはっ…」
暗黒神が呪いだし、叫ぶほどその傍らにいる倭は苦しそうな表情を浮かべ、口元を押さえ、そしてその手の指の隙間から深紅の色をした血が漏れた。
「…そうか、あのとき倭があの顔をしたのは――――」
ようやく柳は気付いた。
何故かナイクレーゼントを復活させようとしているのか倭に問い掛けたとき、彼は一瞬だったが辛そうな表情をした。
その訳は―――。
「…ナイクレーゼント。お前、自分が復活する為に倭に呪いをかけたのか…? ――自分が復活出来なければ倭を呪い殺そうと…」
倭は哀しそうに、無言で頷いた。邪神は叫ぶ。
「倭、あいつを…神の器を、愚かな人間を殺せぇ…!」
倭は首を横に振って拒否をした。それによってさらに邪神は呪うように叫んだ。
その邪神の様子に、しでかしたことに、柳は怒りを爆発させた。
「…許さない。お前だけはっ! お前だけは許さないっ!」
叫びと共に、柳の身体を七つの光が包む。
それと共鳴するように柳が首からさげているペンダントも、同じ七つの光を放った。
「うおおおおおおおおっっっっ!」
「滅べっ! 暗黒の神、ナイクレーゼントォォォッッッ!」
虹色の光の宿った剣は暗黒神の心臓を貫き――ナイクレーゼントは恨みの籠もった絶叫を喉が裂けんとばかりに漏らすと消え入るようにして、冥府へと下っていった――――。