第19話:邪神復活
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明かりのない部屋の中で、倭は静かに詠唱していた。
“古に封じられし暗黒を司どりし者よ”
“我が力と神の器の血をもって聖なる楔を打ち壊し、聖なる門を潜り抜けろ”
“目醒めよ 降臨せよ”
“今再び 此の世に降り立て…”
そして邪神は降臨した。
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柳と稜基が倭のいる場所に辿り着いたとき、そこには漆黒の服に身を包んだ倭とは違う雰囲気を感じさせる男が立っていた。
その隣に立つ倭は二人の存在に気付くとふっと嗤った。
「…少し遅かったな」
その言葉に柳は舌打ちし、男を見た。
男は冷たい表情で柳達を睥睨していた。
「…お前の神は愚かだな。この私を封じ自由を奪ったくせに、再び封じを施す際にタイミングを待つが為に私の復活を許すとは…」
「うるさい。ティレイスは慎重すぎるだけだ。より良い時を待って、待って、待った。ティレイスが悪い訳じゃない。原因は俺だ。俺が力不足だから、俺が馬鹿だったから、遅かったからお前を復活させてしまっただけだ」
柳は自分に苛立っていた。
そうではないか。
倭から自分の血さえあれば儀式は可能だと聞かされていたのにも関わらず奴を復活させてしまったのだから――――。
柳は後悔を覚えつつも今は目の前のことだけに集中しようと決めた。
「だからお前を倒す。―――倒せなくっても封印ぐらいしてやる! 俺はそのために存在しているのだから」
柳はそう言うと剣を前に構えた。それを暗黒神は鬱陶しそうにただ見ていた。
「面白い奴だな」
決して面白くはなさそうにナイクレーゼントは言うと宙から剣を取り出した。
「いいだろう。その愚かな考えをすぐにでも打ち砕いてやる」
柳は我を忘れて駆け出そうとした。――が、その肩を掴み、止めた者がいた。
―――稜基だ。
「稜基、離せ!」
「離さないよ。絶対に」
稜基はぐい、と柳をそのまま後ろにやると杖を構えた。
「…何の真似だ。力も持たぬ人間が」
稜基は不敵に笑うと真っ直ぐにナイクレーゼントを見た。
「―――確かに、僕は柳みたいな強い力はないよ。でも、それでも魔力はある。僕には十分なんだよそれで」




