第18話:急げ!
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「柳!」
柳は目の前に稜基がいるのに気付くと安堵しようとした。が、
「逃がすものか」
まとわりつく闇に足を止め背後を振り返った。
「倭…」
「驚いた。まさか壁を破壊してまで逃亡を図ろうとするとは…」
倭の呆れ混じりな表情を柳は強く睨め付けた。
「うるさい、俺は絶対に儀式をやらせるわけにはいかないんだ」
「柳、ちょっと待ってね」
稜基が杖を軽く振ると柳の枷はあっさりと外れて落ちた。
「さっきのままだと動きにくいよね」
「解錠の魔術か………」
倭は舌打ちして槍を構えた。柳は稜基から剣を受け取ると鞘から抜き、倭に突進した。
互いの刃を打ち合い、服を裂き、肌をかすめる。それが繰り返される中で稜基が静かに上級魔術を構成していった。
「柳っ!」
稜基の声に応じ、柳は一度間合いをとった。すかさず稜基が杖を振り倭の周囲を電流が取り囲んだ。
「呑まれろっ!」
電流が弾けるようにして倭を包んだ。
「ぐああああっ!」
倭は叫びながらも魔術によって電流を振り払った。
「…時間もない。例の方法を使うとしよう」
倭の言葉に柳はハッとした。倭は嗤うと二人の前から姿を消した。
柳は舌打ちすると稜基の腕を取った。
「稜基、やばい」
「え?」
何も知らない稜基は不思議そうに首をかしげた。
「倭の奴、俺が気絶してる間に俺の血液を採取してやがったんだ。…俺が儀式をしなくても俺の血さえあればナイクレーゼントを復活させられるんだよ!」
説明を聞いた稜基は顔を蒼白にしていた。
「急ぐぞ!」
「う、うんっ!」
二人の少年は走った。