第17話:諦めない!
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稜基が目を覚ました時、目の前にはティレイスの姿があった。
「…柳は。柳はどうなったの!」
稜基が叫ぶようにして問うとティレイスは顔を少しうつむかせた。稜基はそれで悟り、ゆっくりと身体を起こすと傷一つ無い己の身体に気付いた。
「…これ、身体、治してくれたんだね。ありがとう………」
礼を述べるとティレイスは首を横に振った。
「そんなことしか出来なかった。…私は――――」
「大丈夫。柳のことは僕に任せて。…貴方は貴方のやるべき事を………」
稜基がそう言うとティレイスは頷いた。
「私の力を貸し与えよう。…カナタを頼む」
稜基の身体を光が包み、稜基は強く頷いた。
「任せて、絶対に柳は僕が助けるっ!」
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柳は必死になって己に付けられている枷を外す、または壊そうととしていた。
「くっそ…何でこんなに丈夫なんだよっ!」
神術でも壊れることのない頑丈さに苛立ちを覚えながら何とか外してやろうと躍起になっていると、板チョコを右手に持った倭が柳の前で腰を低くした。
「まあ、死にたくないのは分かるが全て運命だと思って諦めろ」
「ここで諦めたら全部無駄になるだろうがっ!」
言い返しながら活路を探しているとふと、枷に付けられている鎖の先に気付いた。
鎖はこの柳の後ろの壁に全て取り付けられている。
そして柳は一か八かの方法を思い付いた。
「…ずっと思っていたんだが、この壁や床って石製か?」
「ああ、建てるときにそう命じたんだ」
「ふうん…」
柳はそれなら大丈夫だと確信した。
「おい、倭。口元にチョコ付いてるぞ」
「な!」
倭は顔を赤くして鏡のある場所を求めて部屋から出て行った。
(今しかない!)
柳は壁に向かって神術の光を放った。
壁に亀裂が入っていき柳は頃合いを見計らってぐいっと鎖を引いた。
鎖が固定されていた壁は崩れ、柳は枷は付いたままだが壁から鎖が取れたことにより動けるようになるのに成功した。
急がないとまた捕まる。柳は迷わず脱走した。
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稜基は夜通し歩き続け国境を越え、アドレティリアの朔夜のいる神殿へと向かっていた。
山の中を散々彷徨い、ようやく辿り着いたとき、目の前には助けると誓った友達がいた。