表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Desire  作者: 那泉織
16/22

第15話:朔夜の統括者

 神は己を蔑む不届き者を険呑な表情で見詰め、左手に白光を放つ光球を生み出すと倭へと打ち出した。


 倭は右手に持つ槍の切っ先でその光球を切り払うと同時にティレイスとの間合いを詰める。


「むっ!」


「――喰らえ」


 冷徹に言葉が放たれると同時に倭の左手がティレイスの腹部目掛けて打ち込まれる。

 ティレイスは逃れようと後退しようとするがその行く手は倭の槍の柄に塞がれ逃げ場は無く、ティレイスはまともに倭の拳が放った衝撃波を身体に受けた。


「ティレイスッ!」


 柳は倭の槍を叩き斬りティレイスの身体を受け止めるとバックステップで間合いを取った。


「逃がすなっ!」


 倭の命令に四人の部下が武器を手にティレイスと柳を追う――が、その間に杖を構えた稜基が入り込んだ。


「柳は絶対に渡さないっ!」


 空気中に電流の網が形成され男達にそれが降り注いだ。


『ぎゃああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっっっ!』


 電流を浴びた男達は火傷を負い、その場に気絶した。


「ちっ」


 倭は舌打ちして後退するが逃げる気は無いようだった。


「やはり魔術師でもない人間は使い物にはならないか…………」


「………お前の部下だろ?」


 柳の言葉に倭は嗤って頷き―――冷酷な表情を浮かべた。


「確かにこいつらは私の部下だ。しかし、部下であると同時に私の道具だ」


 その声音にぞっとするほどの何かが走った。


「改めて名乗るとしよう。私の名は倭・ベリディリューク。朔夜の統括者にして創設した者。朔夜の支配者、倭だ」


「………何故、ナイクレーゼントを…?」


 稜基の問いに倭は一瞬辛そうな表情を浮かべ、すぐに安らかに微笑んだ。


「この世に失望したからだ。幾多もの戦、争い。愚かな人間の欲望の渦巻くこの汚い世界に吐き気がする。そう思っていた矢先にあの方の声が舞い降りた…」


 柳に身体を支えられているティレイスは倭を睨み、忌々しげに顔を歪め舌打ちした。


「ナイクレーゼントめ…僅かな封印の綻びをついて―――」


 倭は嬉しそうに嗤った。


「あの方が、ナイクレーゼント様が復活すればこの世界は一掃される。…彼の方は約束して下さった。全てを無に帰した後、私を側に置き闇の世界を創造されると…………」


「………自分は生きられる。だからナイクレーゼントの命令を聞く。そういうことか」


 稜基は珍しく怒りの表情を浮かべていた。


「許さない…絶対にそんなことさせないっ!」


 稜基の周囲を静電気の奔流が取り囲んだ。倭は目を細めた。


「馬鹿め」


 稜基が電流を放とうとした瞬間、稜基を閉じ込めるかのように結界が出現し稜基の電流がその壁によって跳ね返され、稜基は自分で自分の生み出した電流を浴びた。


「あああぁぁぁぁっ!」


「稜基っ!」


「くたばれっ!」


 倭の拳が床に放たれた時、柳は身体に激痛を覚え、視界を闇に塞がれた。






***




 色々と思うことはある。

 だが自分はどんな手段を使ってでも生き残りたいのだ。

 そう――それが他者の幸せを…生命を奪うことだとしても………。


 そう強く自分に言い聞かせた。







評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ