第11話:チャンスは三日後
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倭は痛む左腕を押さえながら苛立っていた。
神の器を捕らえるのに成功したというのに奴には脱走され、見つけたと思えば流石というべきか相手は強い。
おまけに神の器はともかくその連れにも怪我を負わされ――倭のストレスは最高潮であった。
左腕は己が放った渾身の一撃を跳ね返されたものを受けた為、完全に回復するには治癒魔法をかけたとしてもしばらくはかかるだろうと分かっている。
「あー! くそっ!」
倭は苛つきながら己の好物のチョコレートの幾つかを一気に口へ放り込んだ。
「倭様、あまり食べ過ぎるとまた血圧が上がりますよ?」
「うるさいっ! そもそも私のストレスが溜まっているのはお前達の責任だろうが! そう思うんなら神の器を逃がしたことを反省してお前達が捕らえて来い!」
倭に睨まれた彼の部下は彼の怒号に耳を塞いだ。
倭は激しい呼吸を繰り返し冷静さを取り戻すと冷たい視線を部下に送る。
「いいか、自分で引き起こした失敗の始末はちゃんとつけろ。何人で行ってもいい、力尽くでもいいから全力で神の器の捕獲にあたれ! 抵抗するようなら殺さない程度に怪我させても構わんっ! 神の器以外の連れは殺してもいいっ! 分かったらさっさと行ってこーいっ!」
「は、はいっ!」
部下は大慌てで部屋を飛び出して行った。倭は深い溜息を吐いた。
「全く………チャンスは三日後しかないということ、ちゃんと分かっているんだろうな…?」
そう、チャンスは三日後。
その日でなければ世界に闇は訪れない。