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絶界の浮遊島リゾート〜巫女さんとゴーレムと一緒に、雲の上で最高のDIY生活を始めました〜  作者: 寝不足魔王


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9/11

第7話:【前編】『聖域のリフォーム・プラン』

 絶界の浮遊島に、建設的な朝が訪れた。

 雲海を抜けて差し込む強烈な陽光が、昨日レンが磨き上げた石畳に反射して、儀式の間を白銀の世界に変えている。レンはバキバキと音を立てて背筋を伸ばすと、隣で丸まっているポッドの装甲を景気よく叩いた。


「よしポッド、起床だ! 今日から本気で『リゾート計画』を始動させるぞ!」


「プシューッ!」


 ポッドが元気よく蒸気を噴き上げ、主人の号令に応える。

 レンが真っ先に目を向けたのは、拠点であるこの広大な儀式の間だ。昨夜、妖精たちが舞った幻想的な空間。だが、エンジニアの目で見れば、そこはツッコミどころ満載の「欠陥住宅」だった。


「ひどいな。隙間風はあるし、断熱材なんて概念すらない。おまけにあの崩れた壁のせいで気密性はゼロだ。シア、お前よくこんな過酷な環境で数百年も寝てられたな!」


 レンが声をかけると、崩落した壁の向こう側――隠し部屋から、シアが目をこすりながら姿を現した。銀髪を少し乱し、眠たげな碧眼を細める彼女の手には、相変わらずあの古びた杖が握られている。


「……おはようございます、レン。何を朝から騒いでいるのですか。聖域は静寂こそが美徳。建物の古さは、積み重ねられた歴史の重みですよ」


「歴史じゃ腹は膨れんし、腰の痛みも治らん! 見ろよ、俺の腰。石畳の上で寝たせいで、クリック感のある異音がしてるぞ! 却下だ、こんな劣悪な生活環境インフラは今すぐデバッグしてやる!」


 レンは不敵に笑うと、ポッドの正面に立ってその胸部ハッチを開いた。


「よしポッド、お前の吸気ユニットを一時的に換装するぞ。リペア&カスタム! 高性能魔力フィルタ実装、吸引出力三倍にブースト完了だ!」


 レンがポッドに手をかざすと、ポッドの正面から強烈な負圧が発生した。本来は冷却用の吸気口が、レンの最適化によって超強力な自走式掃除機へと作り替えられたのだ。


「プ、プシューーッ!」


 ポッドが勢いよく広間を駆け巡り、数百年分もの砂塵や瓦礫の破片を凄まじい勢いで吸い込み始めた。


「な、何をするのですか! 聖なる守護者に、そのような卑俗な雑用をさせるなんて! 精霊様への冒涜です!」


「冒涜なもんか! 掃除はリフォームの基本中の基本だぞ。ほら見ろ、あそこの黒ずんでた角っこが、みるみるうちに新品同様だ。ポッドも心なしか楽しそうだろ!」


 シアの抗議を余所に、ポッドは正確無比な動きで床を磨き上げていく。

 だが、レンの本番は掃除だけでは終わらない。彼は崩落した壁の境界線に立ち、右手の紋章を強く輝かせた。


「さて、次は構造系の修復だ。リペア……広域結晶再構成、起動!」


 レンが壁の断面に触れた瞬間、パキパキという硬質な音が響き渡った。

 ボロボロと砂をこぼしていた古い石材が、まるで生き物のようにうねり、分子レベルで整列し直されていく。欠けていた箇所には空気中の魔力が結晶化して充填され、瞬く間に、継ぎ目一つない大理石のような強固な壁が再構築されていった。


「嘘……。崩れた石が、元通りに……いえ、前よりも美しくなっている?」


「ただ直すだけじゃ芸がねえだろ。内部に魔力繊維を編み込んで、耐震強度を大幅に引き上げておいた。ついでに遮熱加工もバッチリだ。これで夜中にポッドが寝言で蒸気を吹いても、お前の部屋までは響かないぞ!」


 シアは呆然と、新しく生まれ変わった壁に触れた。

 冷たく、だが滑らかなその感触は、かつて一族の全盛期ですら成し得なかった精密な技術の結晶だ。彼女の価値観が、レンの振るうエンジニアリングという名の魔法によって、また一つ塗り替えられていく。


「よし、共用部はこれでいい。次は……シア、お前の寝床だ。あんな石のベッドで寝てたら、いつか脊椎が物理的に壊れるぞ」


「私の部屋!? ちょ、ちょっと待ちま……勝手に入らないでください! 乙女の部屋に無断で立ち入るなんて、最低の無礼者です!」


 杖を構えて通せんぼをするシア。だが、レンの目は既に改善すべきバグを捉えて、ギラギラと輝いていた。


「無礼より健康だ! 安心しろ、お前のベッドに低反発魔法マットをインストールしてやる。一度寝たら、二度と石のベッドには戻れなくなる究極の安眠を約束してやるからな!」


 快適さという名の甘い誘惑と、乙女のプライド。

 シアの表情が激しく揺れ動く中、レンは工具を片手に、さらなるリフォームの荒波を巻き起こそうとしていた。


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