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竜を殺す者  作者: 東雲
"賤鉄"級昇級試練編

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5/25

探索者の悔しさ

2話ずつ投稿しています

「えぇっと……四つ腕熊と角猪……」

互助会(ギルド)に隣接する資料館。

魔物の出現記録、薬草の採取地、鉱石の分布などがまとめられた、簡素な部屋だ。

リゼ曰く、「この資料がなければミルゼの平和は維持できない」らしい。

「四つ腕熊……あ、あった」

羊皮紙を乱雑に束ねた巻物のような資料を広げる。

「獣型、熊科、悪属……雑食性で、肉でも木でもなんでも食べる。気性は荒く……」

ファルは項目を一つずつ目で追う。

読み書きと計算は、探索者登録時にリゼに叩き込まれた。

「読めなきゃ依頼は受けられない。計算できなきゃ報酬を減らされる。自衛のためにも覚えなさい」

この一年半、ほとんど座学。採取に出られるようになったのは、つい半年前のことだ。

おかげで資料の複雑な記述も理解できる。

魔物は大きく四種に分類される。

獣型、亜竜型、悪精型、鳥型。

さらに「悪属」「中庸属」「正属」の三属が付き、人族への脅威度が定められている。

たとえば四つ腕熊は「獣型・悪属・中型」で、脅威度は3〜4。

角兎は「獣型・中庸属・小型」で、脅威度は0〜1。三匹以上でようやく2に達するかどうか。

木版に重要な部分を書き写し、角猪の資料を探していると──

「おい、雑草摘み……じゃねぇや、ファル」

背後から声がかかる。振り返ると、ミケルとニーナが立っていた。

少しバツが悪そうで、少し恥ずかしそうな顔。

「お、ミケーナ。どうした?何か用か?」

“ミケーナ”──互助会で二人を揶揄して呼ばれる愛称。

「くっつけるなよ、ったく……お前、昇級試験なんだよな?」

ミケルは片手剣と皮盾、腰に短槍を下げた中衛寄りの前衛スタイル。

ニーナは槍と小型ボウガンを装備した後衛寄りの中衛。

幼馴染で息もぴったり、互助会でも相性の良い徒党(パーティー)と評されている。

ただ、ファルとは付かず離れず。ライバル関係で馴れ合わず、でも互助会(ギルド)の仲間として助け合う。

そんな二人が、珍しく真剣な顔で言った。

「昇級試験……手伝わせてほしいの」

ニーナがまっすぐファルの目を見る。

「俺はありがたいけど……いいのか?」

賤鉄級の二人にとって、試練の同行はメリットがない。

貢献度(ポイント)にもならず、報酬も出ない。

「こないだの依頼で、四つ腕熊とやったんだ」

ミケルが口を開く。

「……ドランに怒られてたな」

「ぐっ……そうだよ。下調べもせずに火属性の魔石使ってさ。獣だから火に弱いと思い込んで……」

拳を握りしめるミケル。

「結局、討伐はドランさん一人でやったんだ」

ファルは興味なさげに資料を探りながら聞いていたが、ニーナが続ける。

「功績には“討伐数2”って書かれてるけど、私たち何もしてない……」

「つまり、復讐戦(リベンジ)したいってこと?」

ファルは資料の束を探りながら、ぽつりと口を開いた。

「俺はさ……わかんないんだよね。探索者の矜持とか、こうあるべきとか、そういう崇高な志」

独白のような、でもしっかりとした口調。

「孤児院出だからさ。明日食う飯があるか、寝床があるか。それだけで探索者になった」

「でも最近、分かる気がしてる。いや、分かりたいって思ってる」

スッと一枚の羊皮紙を取り出す。角猪の資料だった。

「手伝ってくれ。よろしく頼む」


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