昇級試験
2話ずつ投稿しています。
「と、いうわけでファル君を“賤鉄”試験に推薦しようと思うんだけど、どうかしら?」
互助会の奥の会議室。といっても辺境都市ミルゼの互助会は街の便利屋程度。会議室も互助会長の執務室を兼ねた簡素なものだ。
長机と二人掛けのソファが二脚。そこに座るのは受付長リゼ、探索者頭ドラン、互助会長ミルド卿の三人。
「ファル…?資質は認めるが、まだ早いんじゃないか?」紅茶を一口含むドラン。
「賤鉄級は先日ミケルとニーナが昇級したばかりだろ。戦力を急いで集める必要は…」とミルド卿。
彼は泡沫貴族に仕立て上げられた領主代理。辺境都市に押し付けられた男爵位を背負い、互助会を支えている。
「戦力はあるに越したことはないわ」リゼは紙束を揃え、二人の前に差し出す。
「四つ腕熊と角猪の出現数が昨年の倍。異常繁殖とまでは言わないけど嫌な数字よね。それと──」封書を取り出す。
「師匠からの警告。星の動きが早いって」
西の魔女からの警告に、空気が一瞬張り詰める。
「魔女殿からの警告か…」ミルド卿は嘆息し、背もたれに身を預けた。
「近年の銅級育成じゃ、何かあった時に間に合わん」ドランは焼き菓子を口に放り込む。
「ファル君なら銀、上手くいけば白銀まで行ける素質がある。早めに実戦経験を積ませるべきだと思う」
「まぁ、やらせてみてもいいんじゃないか?」ドランがカップを置き、笑う。
「問題は試練の内容だな」三人は顔を見合わせ、ニヤリと笑った。
翌朝、互助会はちょっとした騒ぎになっていた。
専属は鉄級二名、賤鉄二名、銅級一名の小規模な互助会。だが早朝は依頼人、出発前の探索者、流れの探索者、商人で賑わう。
リゼはテキパキと仕事を割り振り、助手ミネルに指示を飛ばす。いつもの朝の風景──だが今日は違った。
「おはざす…今日の依頼は…」眠い目を擦りながらファルが訪れると、空気が一瞬張り詰める。
「…?なんかあったんすか?」
「おはよう、ファル君。今日の依頼は──その前に、ちょっとこっち来てくれる?」リゼが手招きする。
首を傾げるファルの肩を、後ろからドランが叩いた。
「おはよう、“雑草摘み”。準備はいいか?」悪戯っ子のような笑顔。
「……は?準備って…?」
ギルド内がざわつく。探索者も商人も、ちらちらとファルを見る。
「今日の依頼は“賤鉄”級昇級試験だ。内容は──」
「待ってくれ!昇級ってホントに!?今日も雑草摘みだ!とか言わないよな!?」ファルは顔を紅潮させ、ドランに詰め寄る。
「落ち着け、新米。試験の内容はだな──」
「いよっしゃぁぁぁ!!ついに俺も賤鉄級だ!!」
互助会中に響く大音声。銀級らしき女性探索者がクスクスと笑う。
「だぁっ!うっせぇな!!試験内容は角猪の討伐、そして四つ腕熊の討伐だ!単独は禁止!最低二人、三人の徒党でも可能とする!」




