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竜を殺す者  作者: 東雲
"賤鉄"級昇級試練編

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11/25

狩猟開始Ⅴ:賤鉄の連携と凱旋

賤鉄の連携と凱旋

~2日目、午後、森丘の林道~


ファルが野営地で罠の準備を進める一方、ミケルとニーナは”角猪”討伐のため、昨日見つけた(つがい)の縄張りへと向かっていた。


森と言うのは様々な音を発している。小さな虫が鳴く音、小型の動物が草を分けて走る音、それを追う中型の獣の鳴き声…それらの音が一切無くなると言うのは異常事態以外のなんでもなかった。風さえ止まり、生き物の気配が消えた森は、まるで死んだ世界だった。


全ては森の奥からやってきた”暴君”から逃げる為、”暴君”…”四つ腕熊”は今日も獲物を探していた。”四つ腕”自身もこの異常事態に驚いている。それもこれも森の奥に”あれ”が来たせいだ。立ち向かう気すら失せる。純粋な暴力の化身。“竜”——その名を思い出すだけで、四つ腕の心臓が縮む。あれは暴力ではなく、世界そのものの破壊を体現していた。だから森の奥を脱して、浅いところに餌を求めてやってきた。ところがどうだ。大きくなりすぎた自身に浅い森は飢えを満たしてくれなかった。腹は痩せこけ、腕は細く、歩くたびに骨が軋む。それでも飢えは止まらず、獲物を求めて森を彷徨う。猪の一匹でも居ればよかったのに…グルルとのどを鳴らし、”暴君”は森を闊歩する。


――あぁ、腹が減った。


方針を決めた”徒党”の行動は早かった。罠と餌の作成はファルに全部任せ、ミケルとニーナは”角猪”討伐に向かっていった。

「”角猪”ってさ、真っ直ぐしか進めないんだよね」

ニーナが丘の上から遠眼鏡で索敵を行っている。

”角猪”はその強靭なで分厚い皮膚のせいか、警戒心が非常に”低い”。探索者が近くに居ようが、なんだろうが食事を優先するほどに、警戒心が薄い。

だが、その強靭な防御を崩す方法はいくつかある。例えば腹側の皮膚は薄く、木の杭程度でも刺さる。他にも頭蓋骨は固くて重いが、揺れには弱く、脳震盪をすぐ起こす。なんていうものあったはずだ。

「真っ直ぐしか進めないって言うか、真っ直ぐ進んだ方が自分の強みを発揮出来る…とかそんなじゃなかったっけ?」

反対側を同じく遠眼鏡で見ながらミケルがニーナに返す。

強み、それは強靭な防御力と推進力での突進。角も相まって樹木くらいなら薙ぎ倒して進んでくる。

「いた、(つがい)の”角猪”」

普段とは違い冷静で落ち着いた声色のニーナ。

「方角、南東。距離15メルト、オス後方1メルトにメス。オス大きさ大体2メルト、メス大きさ1.2メルト…大物だ」

淡々と情報を伝える。普段のおちゃらけで能天気でおっちょこちょいのニーナしか知らない人からしたら別人と見まごうだろうが、実はこっちが素なのだ。

「了解。15だと…狙撃可能か?」

「無理、風がある。10メルト接近まで待ってみる?」

「そうだな…少し待機。10メルトで狙撃。オスを狙おう」

ミケルが提案しつつ、肩に掛けた弓を準備する。”剣鹿”の腱と”反動竹”の複合弓で張力が強く、引くのすら困難である。連射は不向きで、射程距離20メルト程度。だが、威力はとてつもない。

初撃はこれで撃ち込み、ニーナの小型弩弓でけん制しつつミケルの剣で撃ち合う…がいつもの狩猟パターン。このパターンに入りさえすれば、この二人、実はかなり実力があるのだ。

「…距離12、風微風…」

ニーナは、遠眼鏡を覗きつつ、腰の弩弓に手を伸ばす。対象は丘の南東から北に向かっている。

高い草に紛れ姿を隠し、ミケルが狙撃の姿勢に入る。

「3、2、1――今っ!」

ギリリと引き絞られた弓から風を切り裂き、矢が発射される。通常の矢よりも太く、鋭い鉄製の矢。

前を歩いていたオスの”角猪”の鼻頭に突き刺さる。

脳まで矢が刺さったオスの絶叫。メスが一瞬恐慌状態になるが、ニーナがすかさず姿を現し、弩で小さな矢を連射する。襲撃者の姿を確認し、メスの目が怒りに染まる。後ろ足をいななかせ、突進の姿勢をとる。

「突貫用意!」

「応っ!」

低い姿勢でミケルが飛び出す。丘を下り、目指すは大岩の前。

ブルル…と鼻を鳴らし、メスはミケルに照準を合わせる。

ミケルとメス猪の視線が交差した、その瞬間。先程の矢を思わせる勢いで、突進してくる。

地震を思わせるほどの揺れ、ごうごうと風を切り裂き1.2メルトの巨体が、大砲(カノン)の弾の如く、はじけ出された。轟音と共に地面が揺れる。進行方向にあった低木は弾け飛び、土が舞う。四足歩行の弾丸はその質量を感じさせない程に疾く、鋭かった。

ミケルはその前に飛び出し、盾を構える。

「来いやぁぁぁ!!」

真正面から質量とぶつかるつもりなのか、足を踏ん張り、腰を落とす。盾はいつもの皮の丸盾。頑丈なタワーシールドや、カイトシールドではない。ただの円盾。鉄板で補強されてはいるが、あくまで補強であり、防御力はないに等しい。

”角猪”はその脆弱な人間を侮った。その貧相な丸板ごと潰してやろうと速度を上げた。

3メルト、2メルト、1メルト…徐々に双方の距離が縮まる。

一足の距離まで近付いたその瞬間。

ミケルは盾を斜めに構えつつ、足を前方に滑らせた。”角猪”からは消えた様に見えたかもしれない。

ミケルは”前足の間を滑り抜けた”のだ。

速度は乗り切っている。”角猪”は前方の大岩に頭から突っ込んだ。

轟音と共に大岩にぶつかる”角猪”。岩は三々五々に弾け飛び、その破片を辺りに散らしている。

「ミケル!構えっ!!」

滑り抜け、体制を崩したミケルに向かってニーナが叫ぶ。その姿をチラリと確認して、ミケルはニーナに向かって盾を構える。

”角猪”の右側から駆け出してくるニーナ。その助走のまま、ミケルに向かって跳躍。

ミケルはその足を円盾で受け、上方に跳ね上げる。

ニーナの体が上空へと跳ねる。その手には短槍。

落下+重力+重さ。その一撃は脳が揺らされ筋肉が弛緩している”角猪”の首に見事に突き刺さった。

「美味しいところ持っていくなよ…」発射台となったミケルは一人嘆息するのであった。

ずぅん…と音を立てて横倒しに倒れる”角猪”。口角には血の泡を吹いていて、目からは光が失われている。串刺しになった”角猪”の上に着地するニーナは、油断無く周囲を見回す。

「安全クリアっと」

深々と突き刺さった槍を抜きミケルに向かって手を降る。ミケルは絶体絶命スライディングを決めた後であるが故に体中に草やら土やらが付いている。

「ニーナ、オス”角猪”の様子は?」

「不動…てか横倒れしてるね。これで生きてたらびっくりだよ」

5メルト後方のオスは頭から矢を生やし、横倒れしている。

「念の為確認…ホイッと」

腰から弩弓を取り出し、オスに向けて発射する。反応は無い。完全沈黙。

「よし、討伐完了だ…ファルに合図しておこう」

ミケルは懐から筒を取り出し、上空に向けて、後ろの紐を引く。ポンッと軽快な音を立てて、上空に花火が上がる。

「ほいさ」

ニーナも同じく筒を上空に向けて、糸を引く。同じくポンッと音を立てて緑色の花火が上がる。

「”メールバード”の魔法でも使えりゃ楽なんだけどな」

「いや、あれ覚えるのに金貨6枚だよ…?まぁ人数が増えると楽になるって聞くけどさ…うーん…ファルを徒党に本格的に誘ってみて、のってくれたら覚えに行こうよ」

帰ったら早速、魔法屋に行ってみよう。

ファルもミケルも引き連れて…うん、それ楽しそう。

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