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金曜日は屋上で

作者: 犬熊 遊


 六枝高校の屋上には花壇がある。園芸部が管理しているそこには花と野菜が植えられていることをほとんどの生徒は知らない。そもそも屋上は生徒が立ち入ることを禁止されているため、園芸部と教師しか知らない。

 だから鷹架たかほこ光希みつきは毎週金曜日の水やり当番を一人で行い、そのまま朝の予鈴までゆっくりしていた。


「あ、光希みっけ!」


この旧友ーー犬落瀬いぬおとせゆいに見つかるまでは。





 四月二十六日金曜日の朝。まだ春というのもあり風は強い。


「おっはよう!水やり終わった?」

「今から。相手する時間ないから帰ってよ。しっしっ!」

「犬みたいな扱いよしてよぉ!ちょっと傷つく!」

「苗字に犬がついてるからいいじゃん。あ、近寄んないで。風が強いから水が飛んじゃう」


水道から如雨露に水を入れる。風のせいで水が横に飛ぶ。髪も乱れる。スカートも捲れ上がる。人のいない屋上でよかったと光希は安堵した。


「あー!髪がぁ!せっかく緩くまいたのにぃ…」

「なら教室戻れば?どうせカールアイロン持ってきてるんでしょ?」

「持ってきてるけど、今は光希と話したくてーーきゃぁ!」


また強い風が吹き砂が舞う。光希と結の顔に容赦なく砂粒がぶつかる。


「いたいんだけど!」

「はあ、早く中入ったら?」

「うう、またね、光希」

「無理して来なくていいし、うちのこと構わなくていいから」

「またくる!」


バン!と強く屋上の扉が締められる。

 光希は扉に背を向けたまま花壇に水やりを行う。


「小学校の頃と変わんないなぁ……あ」


また風が吹く。今度は今までとは逆の方向から風が吹いたせいで如雨露の水が光希の靴を濡らした。


「最悪……なんで、うまくいかないかな」


水遣りを終わらせた光希は、濡れた靴を気にしながらスリッパを借りるために屋上の鍵を閉めて立ち去った。





 五月十日金曜日の朝。ゴールデンウィークを挟んだからか芽の成長は著しい。苗から植えた一部の花も僅かに茎が伸びている。


「…お前らは目に見えて成長できて羨ましいよ。いつかは咲けるんだから」


光希はマリーゴールドの葉っぱを触りながら一人呟く。

 登校してくる生徒の声が屋上にいる光希の耳にも届く。どれも和気藹々とした明るい声だ。その明るさが今の光希には少し、眩しく思う。

 小学生の頃からソフトボールが大好きで仕方がなかった。プロ選手を夢見て練習もたくさんした。レギュラーになった時はとても嬉しかった。でも、中学三年の最後の大会で後輩にレギュラーを奪われた。言葉では後輩を祝福したが、家では悔しくて泣いた。泣いて、妬んで、己の才能がなかったのだと諦めた。そうして、ソフトボールに対する情熱が消えてしまった。

 挫折を経験した光希は、夢を見ることを諦めて現実を見ることにした。勉強をして大学に入学して、自分に合った仕事を見つける。


「結がくる前に教室に戻ろ…」


結の明るさもまた光希には眩しく見える。

 光希は早々に如雨露を片付けて屋上の鍵を閉める。太陽の光を遮ってくれる踊り場の仄暗さが、光希を落ち着かせてくれた。



 五月二十四日金曜日の朝。夏服に変わり、湿気を含んだ風が吹く。朝のニュースで梅雨入りするって言っていたことを光希は思い出した。

 水遣りを終えて片付けるとバタバタと階段を登ってくる音がしたと思えばバタンと扉が大きな音を立てて開いた。


「光希いたー!」

「おはよ、結。もう鍵閉めるから帰ったら?」

「全然会えないと思ったらこんな早くきてたの?!七時半なんて早すぎ!ずるくない?!」

「時間はうちの勝手。それじゃまたね」

「えっ、また来てもいいの?」

「は?そんなこと言ってないし」

「またねって言った!ならまた来るね!」

「関係者以外立ち入り禁止!」


言い合いながらも屋上に鍵をかけて階段を降りていく。


「あ、光希、袖に土ついてるよ」

「ん、ああ、土触った時についたのかも」

「懐かしいね。小学校の頃はソフトボール部で毎日土汚れついてたよね。なんで高校は園芸部に?ソフトボール続けないの?」


結の何気ない問いかけに光希の顔が僅かに強張った。


「…別に。たまたま勧誘されたから入っただけ」

「そっかぁ、残念。また光希がカキーンって打つところ見たかったなぁ。この学校にもソフトボール部あったら良かったのに。そしたらあたしまた応援いったのに」

「ソフトボールはもうやらない。そもそも学校って勉強するところだから」

「えー、かたーい」

「うるさいな、別にいいでしょ。うちは鍵返してくるからついてこないでよね」

「ぶー、仕方ないなぁ。またね、光希。勉強がんば!」


バイバイと手を振る結はすぐに誰かに話しかけて去っていく。話が弾んでいるのか楽しそうな声色が階段に響く。


「友達いるならわざわざうちに会いにこなくていいじゃん」


何故朝早くに自分に会いにくる理由がわからず、光希は独りごちる。

 もうすぐ梅雨入り。水遣りをする必要はなく、雨の恵みが代わりをしてくれる。しばらく屋上で顔を合わせることはないことに、光希はほんの少し安堵した。





 六月十四日金曜日の朝。ここのところ雨が降り、水やりはお休みしていた。今日も強い雨が降っている。光希は教室で苗の注文票とスマホを交互に眺めていた。


「どれにしようかな…」

「光希ー!光希いたー!」

「は?」


名前を呼ばれて教室のドアを見れば旧友の結がいた。光希の姿を確認した結は一目散に駆け寄る。


「数学の教科書忘れた!貸して!」

「わかったから静かにして。数学は何限?うち三限」

「一限!」

「じゃあ結が先ね」

「ありがとう、光希!ところで何書いてるの?注文票って見えるけど」

「予算が余ってるから肥料と花の苗注文するところ」

「そうなんだ!お花咲いたらもらえるの?」

「もらえたり、校長室の花瓶に活けたりするって先輩が言ってた」

「あたしも欲しいなぁ」

「余ったらあげるから早く教室に戻って」

「仕方ないなぁ。お花の約束、忘れないでね!」


バイバイと手を振って結は教室から出ていった。嵐のようだと思いながら光希は再びスマホを眺める。様々な花の写真を流し見るが、自分の好みの花がわからず光希は頭を抱えた。

 授業が始まっても光希はちらちらとスマホを覗いては悩んでいた。


「まだ悩んでたの?」

「うわ、結か。なんだ、授業終わってんじゃん」

「授業中まで調べてたの?光希って授業聞かないタイプ?」

「いつもは聞いてる!教科書返しに来たんでしょ、返して」

「教科書ありがと、お礼にペロッチョ飴あげるね。じゃ、次移動教室だからもう行くねー」

「うん」


教科書を光希に渡して結はさっさと戻っていく。光希はもらった飴を口に含んですぐにガリガリと噛み始めた。


「食べれる花にするかな……ん?」


教科書の名前欄の隣に小さく何か書いてある。


【鷹架 光希 の将来の夢は?】


「…何これ。直接聞けばいいじゃん。落書きするなってーの」


夢らしいものがない光希は消しゴムで落書きを消してから、今の悩みに耽っていった。


 六月二十日木曜日の放課後。湿気を含んだ風と燦々と煌めく太陽は夏を知らせていた。

 光希は先輩と共に花の苗を植えていた。咲くのは10月頃だと光希に教えてくれた。

 開花しそうなペチュニアとラベンダーを尻目に、光希は作業を続ける。土の香りはソフトボールをしていた頃によく嗅いでいた。苦々しい思いが湧き立つが、草の香りが上書きするように光希の鼻腔をくすぐる。


「鷹架、お前は何を植えるんだったか?」


顧問の問いに光希は小さく笑って答えた。


「エディブルフラワーです」



 七月十九日金曜日の朝。本格的な夏の到来により痛々しいほどの太陽の光とうだるような暑さに、汗をかかずにはいられない。

 六枝高校は来週から夏休みとなるが、光希は高校主催の夏期講習にくるため水やりは続ける。他の園芸部員は講習を受けないため、光希と顧問で水やりをすることとなっていた。

 夏休み前に、いつもより念入りに世話をすることにした。葉焼けした葉は取り除きき、根が見えている花には土を足す。


「おはよう、光希」

「おはよ。元気ないね」

「テストが、テストが…」

「テスト?ああ期末テストのこと?補講になった?」

「そう!三教科も!バイトあるのにぃ!」


えーん!とわざとらしく手で顔を覆う結に光希は嘆息した。


「バイト減らしたら?それともお金に困ってる感じ?」

「困るに決まってるよ!ライブに行きたいし、新しい靴欲しいし!」

「ライブは当選してないでしょ」

「してないけど貯めてるの!」

「じゃあ今回は諦めて次は追試ないよう勉強するしかないね」

「時間が足りない……うまくいかない」


大きなため息をはく結の顔には疲労の色が見えた。


「そんなに時間おしてるなら尚更減らしたら?」

「ううん、頑張る。やりたいこといっぱいあるから、お金欲しいし。それに生徒会に誘われたから夏休みのうちに稼ぎたい」

「生徒会に?」

「うん、先生にやってみないかって。あたしみないな盛り上がり役も必要じゃない?ってことで誘われたの。すごいっしょ?」


ふふん、と結は誇らしげに笑った。その笑顔が無理していると感じた光希は居ても立っても居られず、結の手を掴んだ。


「えっ、どどどうしたの?」

「ここにしゃがんで。ほら、この花の匂い嗅いでみて」

「あ、これ知ってる。ラベンダーでしょ」

「そう。リラックス効果があるラベンダー様」

「…んー、好きかも」


そう呟いて結は黙った。

 穏やかな時間を邪魔をしないように、光希は離れた場所で黙々と草取りをしはじめた。予鈴がなるまで二人は花の香りに包まれながら、心地よい沈黙に身を委ねた。









 八月二日金曜日の昼。猛暑に見舞われながら生徒は部活と勉学に励んでいる。夏期講習が終わった光希は職員室で屋上の鍵を借りて水やりに向かおうとすると、前から結が歩いてきた。


「光希!今から水やり?」

「うん。結は補講終わった?」

「今日で終わり!ようやく夏休みって感じ!電車が来るまで暇だから付いていってもいい?」

「どうぞ」

「追い返されない…どういう心境の変化があったの?」

「立ち入り禁止にされたいならそうする」

「そんなこと言わないでよ〜。ほらもう着いたし!」


屋上の扉を開けた途端、焼けた空気が肌にまとわりつき全身に突き刺さる。あまりの暑さに光希も結も扉を閉めた。


「結はここにいたら?」

「えー、光希は屋上で水やりするんでしょ?ならあたしもそっち行く」

「うちはソフトボール部だったから外の活動は慣れてる。水やりするだけだからすぐ終わらせてくる」

「熱中症で倒れないでね」

「はいはい」


光希は適当に返事をして扉を開ける。凶器のような日差しと暑さに顔を顰める。結に見栄を張った光希も暑さに苛立ちらながら如雨露で水を撒いていく。乾いた土はいつもより水を欲してどんどん吸い取っていく。


「あっつ…」


五分も経っていないにも関わらず、光希の額には汗が滲んでいた。水遣りを早々に終わらせて室内に戻れば、結がスケジュール帳に書き込んでいる最中だった。


「あ、光希おつかれ。暑かったでしょ」

「暑かった。家に帰ったらアイス食べてやる」

「あたしもアイス食べたーい。バイト行く前に食べよっかな」

「これからバイト?」

「うん。急にバイトの人休んだから来てって今連絡きた」


開かれたスケジュール帳が光希の視界にはいる。毎日予定が複数も書かれたスケジュール帳に光希は戦慄した。


「ちょっと、そんなに詰め込んだら調子悪くするって」

「平気だよ。バイトだけじゃなくて、遊びに行くから多く見えるだけ!」

「…宿題は?」

「うっ……最終日にがんばる!」

「頑張りすぎて倒れたら元も子もないじゃん」

「平気だってば…!それに光希に迷惑かけるわけじゃないから……。だから、口出ししないでっ」


声を荒げて拒絶する結に光希は驚いた。結は自分の口から出た言葉に困惑したのか、目に見えて動揺している。


「…もう、電車くるからもう帰るね。バイバイ!」

「ちょっと待って、結!」


静止の言葉も聞かずに結は走り去り、光希だけが取り残される。

 光希にとって、いつも涼しく居心地が良い踊り場が今日はひどく肌寒く感じた。



 九月二十日金曜日の放課後。台風の影響で風は木々を揺らし、曇り空が太陽を覆いつくし室内は薄暗い。

 夏休みが終わってから結は一度も屋上に現れなかった。光希は廊下で結を何度も見かけたが、友人と一緒で話しかけられなかった。でもそれは言い訳だと光希は一人反省する。いざ話しかけようにも、また拒絶されるかもしれないと思うと勇気がでないのだ。


「…考えるのやめよ。とりあえず台風に備えないと」


台風の対処は前日の水やり当番の担当だ。花壇はビニールシートで覆い重石を置く。プランターに植えてあるものは室内へと避難させる。力仕事だが元運動部である光希にとっては苦にならず、テキパキとこなしていく。最後のプランターを踊り場に並べていると光希の耳が足音を拾う。その音はゆっくりと一歩、また一歩と階段をのぼってくる。


「…みつき?」


踊り場にいた光希に気づいた結が顔を上げる。その表情は歪で誰が見ても作り笑いであるのがわかるほど。


「結…?」

「…ちょっとここで休んでもいいかな?」

「当たり前じゃん…!ちょっと待ってて、ジュース買ってくるから…」

「ううん、ジュースはいらない。あまり飲む気しないから…」

「飲む気ないって…食欲は?」

「ないの…」


そう言って結は階段に座って顔を膝に埋めた。光希はどうしていいか迷いながら、隣に座った。話しかけようか迷っているとポツポツと屋根に雨粒が打ち付ける音聞こえた。それからすぐに叩きつけるような音に変わる。


「……」

「……」

「疲れたの」

「うん」

「光希、前に言ってくれたよね。詰め込みすぎだって、休めって。でも、あたし、たくさんやりたいことあって…」

「うん、言ったね」

「あたし、自分で決めたから全部やりきりたかったの。でも、楽しいはずなのに、疲れてきちゃって…」

「うん」

「休もうにも、やめ時もわからなくて、わからないうちにやらなきゃいけないことも増えてきて…頭がおかしくなりそうで…」

「そっか、結は頑張りすぎたんだね」


光希は慣れない手つきで結の頭を撫でる。撫でる度に髪はぐしゃぐしゃになっていくが、お構いなしに続ける。光希自身、口下手なのはわかっている。今の結を宥め、元気づけるような魔法の言葉を光希は知らない。その代わりに、光希は結の頭を撫でる。


「カウンセラーの先生呼ぼうか?」

「…いらない。ねえ、光希」

「なに?」

「その……連絡先…交換しない?」

「急だね」

「えへへ、今まで言えなかったんだ…。また増えると思うと、できなくて。光希も嫌かなって…」

「…嫌じゃない。ほら、スマホだして」


ようやく結は光希と目を合わせて、スマホをポケットから取り出した。それから結と光希は自分のスマホを左右に振った。


「なんか、ようやくって感じだね…」

「何が?」

「友達って感じが、だよ」


そう言って笑う結に光希も笑い返した。その顔は明らかな作り笑いではなく、自然な笑みだった。





 九月二十七日金曜日の朝。晴れ晴れとした日差しを葉っぱについた水が反射する。

 あれから結は一週間程休むと光希に連絡が来た。心配ではあったが、余計な連絡を入れては休みづらいと思い我慢した。

 夏の花は枯れ、秋の花は開花を始めている。光希が植えた花も蕾をつけ始め、咲く日を今か今かと待ち侘びていた。




 十月四日金曜日の朝。秋晴れと共に肌寒い風が屋上を駆け抜けていく。屋上の花壇から植物は消えていき、一部の花だけが寒さに負けずに咲いている。


「おはよ、光希」


久しぶりに現れた結は憑物が落ちたような、晴々とした顔をしていた。


「おはよう、結。ゆっくり休めた?」

「うん。何もしてないのに、余裕ができた感じかな。これで生徒会に入っても頑張れそう!」

「また詰め込みすぎて前みたいにならないでよね」

「自分の限界はわかったから、もう無理はしないよ!」


そう言って結は花壇に近づいていく。


「ラベンダーはもうないんだね」

「ラベンダーの季節が終わったから」

「寂しいね、もっと咲いてるところ見たかったなぁ」

「花屋にでも行けば見れるよ」

「もう!そういうことじゃないの!光希は夢がないことばっかり!」

「夢ねぇ。…そう言えば、うちに将来の夢はって落書き聞いてきたよね?」

「あ、教科書に書いたやつでしょ?もうずいぶん前だね」

「うちはまだ将来の夢は決めてないんだ。…公務員系を目指そうとは思ってるけど。結は?」

「あたしはね、ネイリストになりたいけど、美容師とか服飾デザイナーにも興味ある」

「夢いっぱいじゃん」

「決められないんだもん。光希はイメージ通りって感じの夢だね。園芸関係には進まないの?」

「趣味でいいかな。それに、好きなものを仕事にして嫌いになりたくないから」

「そうなんだ」

「そうだ。…結にあれあげる」


光希は少し離れたプランターを指差した。その方向に歩いていくと結は首を傾げた。


「この花くれるの?名前なんだっけ」

「パンジー。食べれるよ」

「食べれるの?!」

「聞いたことない?エディブルフラワー、食用の花だよ」

「聞いたことはあるけど、この花って結構花壇で見るから意外かも。でもなんで急にくれるの?」

「育てるなら食べれた方がいいじゃん。あっちに植えてる菊も食用で育てたし」


光希の目線の先には菊が生い茂っている。結は我慢できず噴き出してしまった。


「あはは!もう園芸じゃなくて家庭菜園でしょ!あはははは!」

「先生だってミニトマト育ててるし、そこまで笑わなくてもいいじゃん!」

「あはははは!」


笑いが止まらない結はとうとうお腹を抱えてしゃがみこんだ。


「もう光希ってば面白いんだから!」

「いらないならうちだけで食べる」

「食べる!あたしも食べる!あ、そうだ!明日一緒に食べようよ!あたしの家のキッチン貸すから!」

「…ご飯炊いといてよ」

「オッケー!」


まだ笑っている結に前のような影はなく、光希は心から安堵した。そんな二人の耳に予鈴が聞こえた。


「さ、教室に行くよ。うちは鍵を返してから行くから」

「一緒に行こうよ」

「教室離れてるんだから途中までしか付き合えないでしょ」

「わかったよぉ。あ、ねぇねぇ」

「なに?」


鍵を閉めた光希に結は無邪気に尋ねた。


「また来てもいい?」


光希はわざとらしく肩をすくめて答えた。


「金曜日ならどうぞ」















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