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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

は? なんでイベントなんかやらなきゃならんのだ?

作者: よぎそーと

「まーた何かやるらしいな」

 告知されたイベントの宣伝。

 それを眺めながら仲間同士で呟きあう。

「面倒だな」

「まったく」

「本当に」

 居合わせたプレイヤー達は次々に頷いていく。



 とある多人数参加型RPG。

 現実そのものと言われるVRが売りのそれなりに売れてるゲーム。

 そんなゲームを楽しむ彼等は、定期的に打ち出されるイベントにウンザリしていた。

「まあ、参加しないからいいけどさ」



 この場に集まってるプレイヤー達は、こうしたイベントを心の底から嫌っていた。

 時間がかかるし手間がかかるからだ。

 だからこそ攻略すればゲームにおいて名が売れる。

 だが、それだけだ。

 別に現実で現金がもらえるわけではない。

 有名になってもそれでスポンサーがつくわけでもない。

 配信でもすれば投げ銭が入るだろうが。

 その為には熾烈な競争に勝たねばならない。



 そうでなくてもだ。

 期間限定で行われるイベント。

 攻略するのが難しい事件の解決。

 これらの何が楽しいのか。

 この場のプレイヤー達にはさっぱり分からなかった。

 手間暇かけてまでの価値など全く無い。

 これが彼等の出してる結論である。



 だから定期的に開催されるイベントというものに参加していない。

 楽しくもない事に参加するつもりはない。

 はっきり言えば、つまらないのだ。



 それでもゲーム自体は楽しい。

 なにせ、プレイヤーの腕前が一切反映されない。

 キャラクターの操作などにプレイヤーが一切介入できない。

 攻撃の命中も回避も、あらゆる行動も全てゲームのキャラクターの能力で決定される。

 おまけに確率が変わる可能性もない。

 たとえば、成功率10パーセントならほとんど成功しない。

 偶然はありえるが。

 だが、成功率90パーセントなら確実に成功する。

 まれに失敗する事はあっても、二回目には成功する。

 表示される成功率が嘘をついてるという事はない。



 というより、こうした成功率など一切存在しない。

 あるのは、能力値や技能が足りてるか。

 能力値が必要な高さになっていて。

 技能レベルが必要な段階にまでなっていたら成功する。

 そうでなければ失敗する。

 この分かりやすいゲームシステム、ゲームの作り方がプレイヤー達にはありがたかった。



 徹底的に排除される、プレイヤーの才能と能力。

 偶然性を排除したゲームの作り。

 これらがここにいるプレイヤー達にはありがたかった。

 加えて、もう一つありがたい要素がある。

 プレイヤー同士の戦闘、プレイヤーキルがない事だ。



 プレイヤー同士の争い。

 このゲームにはこうした要素が一切ない。

 プレイヤーに襲われてアイテムなどを奪われるコトがない。

 ゲームの邪魔をされる事がない。

 これだけでもストレスが発生する事がなくなる。



 そもそもとしてプレイヤーと戦う要素が一切無い。

 プレイヤー同士の対決というイベントや。

 プレイヤー同士が戦える場所など。

 こういった要素がこのゲームにはない。

 おかげで無駄に絡まれる事もない。



 そんなゲームだから、ここに集まってるプレイヤー達は楽しく遊んでいた。

 無駄に頑張らなくて良い。

 気楽に好きなように遊べる。

 肩肘張らずに済む。



 気楽さ。

 遊びだからこそほしいものだった。



 ただ、だからこそ彼等には定期的なイベントが鬱陶しいものだった。

 イベントは手間も時間もかけねばならない。

 そんなものに参加しては遊びの遊びたる所以がなくなる。

 遊びとは気楽にやるものだ。

 手軽に楽しめるものだ。

 それが手間も時間もかけねばならないとなれば、本末転倒。

 遊びが仕事や義務になってしまう。

 そんなの御免だった。



 また、嫌な思い出もよみがえってくる。

 かつて遊んでいた他のゲームでは、こうしたイベントに熱中する者達のせいで散々な目にあった。

 そうした者達と運悪く一緒に活動していた者は、イベントに集中しないプレイヤーを罵倒した。

 そうでない者達も、普段のゲーム中に場を荒らされた。

 希少なアイテムを手に入れる場所を独占されるからだ。

 そうならないのはイベント期間くらい。

 この最中はイベントに熱を上げてる連中はイベントのおかげで出払ってる。

 希少なアイテムが出現する場所も開放される。

 他のプレイヤーはそんな時くらいしか希少アイテムを手に入れられない。



 そんなゲームがイヤになって離れていき。

 流れ流れてたどりついたのが、今遊んでるVRゲームだった。

 現実再現度はさほど高くは無い。

 だが、遊ぶなら好都合。

 他のプレイヤーに邪魔される要素もほとんど無い。

 希少アイテムの入手だってそう難しくは無い。

 場所の独占などができなくなってるからだ。



 というより、ゲームの性質がブラウザーゲームに近い。

 プレイヤーごとにゲーム世界が存在すると言うべきか。

 ゲームのフィールドというか場所はプレイヤーが参加する数だけ存在する。

 共通の場所に多数の人間が入るわけではない。



 仲間とはこのフィールドに入る時に合流する。

 一緒に入れば共に行動ができる。

 他のプレイヤーと接するのはこの時くらいだ。

 一応、メールやチャットもあるので、これらで連絡や相談をする事もあるが。

 特に仲が良いわけでもないなら、同じフィールドで活動するくらいで十分だった。

 他者との接点を誰もが欲しがってるわけではない。



 また、希少なアイテムなども、確率で発生するわけではない。

 挑戦した回数が10回目に出てくるとか。

 20回目や100回目にでてくるという形だ。

 時間はかかるが、数をこなせば何度でも発生する。

 確率によって手に入るかどうかと気にしなくて良い。

 それこそ、時間と手間がかかる事になるが。

 挑戦した回数だけ希少アイテムが手に入る。

 この、運を排除した要素もこのゲームが好かれてるところだった。



 おまけに、10回20回という挑戦もそれほど大変なものではない。

 たいていは数分で一回の探索は終わる。

 1時間もやれば10回はフィールドの攻略が出来る。

 ゲームは一日一時間、という標語を守っても十分に遊べる。



 こういった特徴をまとめると、このようになるかもしれない。

 血眼になる必要がない。



 攻略のために必死になる必要がない。

 頭をひねる必要がない。

 そこそこの労力と時間をかければそれなりに遊べる。

 気軽に適当に。

 気楽にやれてそれなりに楽しめる。

 遊びや娯楽の本来の姿に戻ったといえる。



 こういった部分がヘビーユーザーやマニアと呼ばれる者達には不評である。

 だが、手軽に遊びたい多くの者達には好まれていた。

 誰もが気合いを入れて挑戦したいわけではない。

 遊びなのだから手軽に楽しめればそれで良い。

 そんな者達にとって、このゲームはうってつけだった。



 弱点をあげれば、イベントが振るわない事だろうか。

 定期的に行われる、強力な敵がでてくるイベント。

 これらに参加する者達が少ない。

 熱を上げずに適度に楽しみたい者達ばかりだからだ。

 何も無理して強力な敵を倒す必要もないだろうと。

「なんでそんな事しなくちゃいけないの?」

 大半のプレイヤーは定期的に行われるイベントにこんな思いを抱いていた。



 それに、こうした催しがあると、大半のプレイヤーは思い出すのだ。

 かつて遊んでいた他のゲームを。

 そこで、こうしたイベントに向けて励んでる他の者達と反りが合わず追放された事を。

 ゲームにどれだけ入れ込むかは人によって違う。

 さほど熱を上げない者達は、どうしてもついていけなくなる。

 結果として他のゲームから離脱していった。

 そして。今遊んでるこのゲームに流れついてくる。

 ゲーマー達からは低く評価されてるここに。



 なにせ、個人の力量が全く反映されないシステムだ。

 ゲーマー達は腕の振るいようがない。

 おまけに、他のプレイヤーとの差も付けようが無い。

 やりこむのが好きな者達の興味を引く要素が一切ない。

 なので、ゲームに入れ込む者達からの評判は悪い。



 だが、そこが他の多くの者達にはうってつけだった。

 のんびりと遊ぶには最高なシステム。

 そこに多くの者達がひかれて遊びに来ていた。



 そんなプレイヤー達にとって、イベントなどどうでも良い事だった。

 希少なアイテムがいつもより多く報酬としてもらえるのが利点だが。

 イベント限定の何かが出てくるわけではない。

 このゲームの運営はそうした事はしない。

 限定配布などがある場合は、参加してるプレイヤー全員に送られる。

 ゲームに参加してる絵師による書き下ろしなどが多い。

 これらも時期を逃したら手に入らなくなるわけでもない。

 有料になるが、イベント終了後に手に入れることが出来る。

 イベント開催期間に血眼になる必要がない。

 


 そんなわけで、告知されたイベントにさほど興味を抱く者もなく。

 いつもより多めにアイテムが配布されるが、既に持ってるならさほどこだわる必要もない。



 そんなわけで、多くのプレイヤーはイベントには見向きもしない。

 いつものフィールドを慣れた仲間と巡っていく。

 それだけで十分に楽しむ事が出来る。



「それじゃ、今日もよろしく」

「おう」

「よろしく」

 音声会話をしながら仲間とフィールドに入る。

 自分達以外は誰もいない空間に。

 モンスターだけがいる場所。

 そんな場所でプレイヤー達は今日も思い思いに行動していく。

 適度に気を抜きながら、だらだらと。

 そうして遊んでいられるのがたまらなく楽しかった。






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