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最年少ダンジョン配信者の僕が、JKお姉さんと同棲カップル配信をはじめたから  作者: タイフーンの目@『劣等貴族|ツンデレ寝取り|魔法女学園』発売中!
第6章 世界のピンチも救っちゃいます

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第89話 特別討伐クエスト


「来ていただいてありがとうございます、蓮さん」


 エレベーターを降りてすぐ、マネージャーの衛藤が出迎えてくれた。

 ここはアイビスの事務所。

 蓮は、昨日の襲撃事件について報告するために訪れていた。


「さすがに女子寮で話す内容ではないですからね。四ツ谷ダンジョンも今はちょっとゴタゴタしてますし――」


 いつもミーティングで使っている部屋へと案内されるが、そこには見慣れない人物が立っていて、


「はじめまして遠野蓮さん」


 と、折り目正しいあいさつを投げかけてきた。

 ピシッとしたスーツ姿の、20代半ばくらいの男性。


「ダンジョン庁 総合企画課の新田と申します。配信、いつも拝見しています」

「は、はあ……、ども……」


 配信では、最近は少しずつカメラに目線を向けられるようになったが、こうして初対面の人間に面と向かうと目を合わせられない。

 一応、前もって来客があり同席するとは聞いていたが、だからといってスムーズに会話ができるわけでもない。


「本日は、例の件でお話をうかがいたくお邪魔しました」

「蓮さん、こちらへ。新田さんもどうぞお掛けください」


 衛藤が会議テーブルに着くよう2人を促す。

 いつもは衛藤の圧を前にやや避けてしまう蓮だが、つい無意識に、衛藤のすぐ隣に着席していた。


 対面に座った新田は微笑んでいる。

 ただ、営業スマイルというにはお堅い印象だ。ビジネスマンというより役人のような……いや、ダンジョン庁の職員なのだから、まさに公務員なのか。


「では始めましょうか」


 改めて簡単にあいさつを交わしてから、衛藤がさっそく本題に入る。

 雑談で場を和ませて……というのがこういった場合の定石なのかもしれないが、蓮の性格を考慮して、余計なコミュニケーションは最小限にしようとしてくれているようだ。


 正直、助かる。


「蓮さんのことを襲った着物姿の少女、じつは他の配信者も目撃していたんです」


 衛藤が言うには、おそらく蓮が20階層でレッド・コカトリスを討伐した直後の時間帯のこと。

 あの少女と――それから蓮が【音架の旅神(ヘルメス)】を通して確認した白衣の女性に、配信者の3人組が遭遇していたらしい。


 彼らは配信中ではなかったため映像は残っていないのだが、問答無用であの少女に倒され、1階層にリスポーンした。


「新田さん、彼らは何と話しているんですか?」

「それが、かなり精神的に参っているようでして。配信者なのでモンスターにやられた経験もあるようなんですが、なんというか――まあ、落ち着いていないので。それに接触した時間もごく短いようですから、突っ込んでみてもあまり有益な情報は得られないでしょう。それよりも――」


 新田は、会議テーブル上に半透明のウィンドウを表示させると、着物少女の姿と白衣の姿を映し出した。


 どちらも、蓮が撮影したものだ。


「遠野さんから提供いただいたこれらが大変役に立っています。解析したところ、少女のほうは人間ではない――のは当然なんですが、モンスターでもなさそうです」

「ゴーレムとか、そういうタイプのモンスターとも違うんですか?」


 衛藤が例示するとおり、モンスターの中で一番近いのはその類いだろう。石や金属などで構成された肉体に、魂が宿ったモンスター。


「……その可能性を完全には否定できませんが。まず状況証拠が」

「蓮さんが『壊した』あとに、白衣の女性と会話してますしね。でも、しゃべるモンスターだっていますよね?」

「いるにはいますが。それは人間を惑わせるため、人語を真似ているだけでしょう。ですが彼女は――我々は取りあえず【人造モンスター】と呼んでいますが――この人造モンスターと女性との会話からは、そういった様子はうかがえない」


 コミュニケーションが成り立っている。

 その上、協力関係にあることすら感じられる。


「それじゃあ、そっちの女の人もモンスターだという可能性は?」

「ない」


 蓮が口を挟む。

 2人がこちらを見る。


「――この顔。似た人を知ってる。背格好も似てる」

「…………。『甥っ子』、と言ってましたね」


 衛藤は慎重な口調で語りかけてきた。


「蓮さん、やっぱり本当に」

「うん。僕の養母――ダンジョン財団の荒巾木博士の家族だ。たぶん、あの人の姉。……モンスターが擬態してるんじゃなければ、そういう話になる」


 荒巾木(あらはばき)アーカーシャ。

 天涯孤独になった蓮のことをD財団が引き取るにあたって、戸籍上の親になった人物だ。彼女から、失踪した双子の姉がいることは聞かされていた。


 新田も深刻そうにうなずいて、


「まさにそのお話をうかがいたくて来たんです。私も業務上、荒巾木……ゴホン。アーカーシャ博士とは接点がありまして」

「……へえ」

「アーカーシャ? 蓮さんのお母さんってそんな名前なんですか?」


 衛藤の疑問に、自然に新田と目線が合う。


「あの人は……面倒なんだ」


 自分の本名が嫌いで、勝手に『荒巾木アーカーシャ』と名乗っており、他人にもそう呼ぶよう強制している。

 この新田が、彼女と交流があるのは本当のようだ。どうも、無理にそう呼ばされた苦い経験があるようだし――。


「あー……、SNSで相互フォローさせられまして、かなり無茶も突きつけられまして……」


 お堅い表情を崩して新田は、蓮の顔を見つめて、


「……正直、遠野さんを見るとあの方を思い出して、胃が痛くなるというか」

「そんな!? 蓮さんと目が合うだけで、寿命が10年は伸びると言われているのに!?」

「…………」


 衛藤の戯れ言は置いておいて、苦労人らしい新田にはちょっと親近感が湧いた。

 アーカーシャは他人との距離感が独特で、蓮とはちがった方向で社交性がまるでない人物なのだ。彼女の被害者のひとりとして共感できる。


「……ともかく」


 気を取り直して新田が言う。


「アーカーシャ博士もおっしゃってたんです。自身の姉が、とある野望のために暗躍しているのでは――と。それが今回、明らかになった」


 それも、図らずも遠野蓮、その人の手によって。


「私どもダンジョン庁としましては、彼女を放っておくわけにはいきません。アーカーシャ博士の予想を信じるのならば、ダンジョンと関わりのないすべての人に害が及ぶ恐れがあるからです。あの人物はモンスターを……ダンジョンを解き放つつもりです。そうなれば酷いことに――」


 彼の発言に対して、衛藤は声を落としてたずねた。


「――ダンジョン庁は、配信者を動員するおつもりですか?」


 配信者が配信者たり得ているのには理由がある。


 ひとつはエンタメを通して、ダンジョンにより荒廃してしまった街を復興させるため。

 もうひとつは、ダンジョンに異変があった際に対応する、主戦力として。


 配信者という職業が優遇され、国からも推奨されているのはそのためだ。リスポーン機能、痛覚遮断、転移魔法陣……それらの設備が当時としては異常な急ピッチで整えられたことも。


「特に……遠野蓮さんには、是非お願いしたく考えています」


 これまで以上に神妙になって新田が言う。


「相手が『荒巾木』であることもそうですが、何よりその腕を見込んでのことです。……国が、12歳の少年にこのようなことを依頼するのは、本当にお恥ずかしい限りなのですが。公式には、『特別討伐クエスト』として広く配信者を募集します。……ですが、本命は貴方です。遠野さん」

「蓮さん――」


 衛藤は不安そうだ。

 ただのモンスター討伐とは違う。イレギュラーな事態が充分に予想される。それでも、新田からの提案を頭ごなしには拒否しない。蓮の意思を尊重しようとしている。


「――聞きたいことがあるんだけど」

「なんでしょう」


 新田が身を乗り出す。


「討伐って……殺せってこと?」

「――――」


 蓮からの冷たい視線に、新田はやや気圧された様子を見せる。


「遠野さん、貴方は想定されているんですね……」


 あの荒巾木はモンスターではない、人間だ。そしてもちろん、配信者ではない――となれば、武力をもって相手するなら、絶命に至らせる可能性だってある。


「責任は我々が取ります」

「僕に任せる――ってこと?」

「そんな! それじゃあまりにも……!」

「いいよ衛藤さん」

「蓮さん……」


 立ち上がりかけた衛藤のことを制する。


「大丈夫。進んで殺すつもりなんてないから。ただ、その野望っていうのが本当だったら容赦はしない」


 ダンジョンを解き放つ――

 どんな方法かは分からないが、そんなことを許すわけにはいかない。


 ……あんな、自分が味わったような地獄が誰かの身に降りかかるなんて、許せるはずがない。


「受けるよ、その討伐クエスト」


 きっぱりと言い放つ蓮に、衛藤も新田も深くうなずいた。




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― 新着の感想 ―
[良い点] 更新お疲れ様です。 人間だけどヤバいからムッコロしてね…って依頼か~。まあ明らかに人類全体にヤバそうな事態を引き起こしそうな人と、地球全体を天秤にかけたらそりゃ後者に傾くか…。 とはいえ…
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