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最年少ダンジョン配信者の僕が、JKお姉さんと同棲カップル配信をはじめたから  作者: タイフーンの目@『劣等貴族|ツンデレ寝取り|魔法女学園』発売中!
第5章 夜も激しくなりそうです

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第82話 反響:有紗・羽美


「今日もお疲れさまでした、羽美先生」


 テニス部の練習終わりに、キャプテンの早川はやかわ有紗ありさが話しかけてきた。


 メガネをかけた、スラっとした黒髪おさげの3年生。

 羽美のことを慕ってくれている、頼りになる女子キャプテンだ。


「お疲れさま早川さん」


 ちょっと頑固なところはあるが、真面目で素直な生徒。


 けれどここ数日、その表情に変化があったように見受けられる。

 どこか気を張っていたところのある彼女だったが、その顔から幾分か険がとれたような気がする。

 大人にも負けまいと自分を律しているように見えていたが、それが和らいでいるようなのだ。


 今は年相応の、「しっかりした中学3年生のお姉さん」といったところ。


「いつもありがとうね。今日も会議で遅れちゃって。新入部員のお世話とか」

「いいえ。やる気のある子たちがいっぱいで、私もモチベーションが高まっていますから」


 仮入部を経て正式入部した1年生は多い。

 もともと人気の部活ではあったが、今年は特に。


(蓮くん……遠野くんはさすがに無理だったけど)


 最初から分かっていたことだ。彼には本業があって、今は大事な時期。


 先日のナイトライセンス試験でさらにフォロワーを増やし、スター街道まっしぐらだ。


「早川さん、いいことあったって顔してるね」

「そう……見えますか?」


(あれ?)


 有紗の頬が赤らむのは、運動を終えたあとだからだろうか?


(早川さん、男子にあまり興味なさそうだったけど。もしかしてそっち方面だったりして?)


 中学生なんて恋多き年頃だ。

 彼女が恋愛に目覚めたなら、それはそれで良いことだろう。


「実は私……、ダンジョン配信を見るようになって」

「え!?!?!?」

「えっ?」

「う、ううん、そ、そうなんだぁ……」


 つい過剰な反応を見せてしまった羽美。

 ダンジョン配信を見ていることはバレてもいいが、担任クラスには『人気者』がいる。

 彼のリスナーであること、彼を《《ちょっと》》気に入っていることは、さすがに隠さなければ。


 しかし、ダンジョン配信を毛嫌いしていたあの有紗が。やはり何らか心境の変化があったんだろう。


「…………彼」

「うん?」

「彼の配信、見てるんです――」

「彼って」

「……い、1年の、遠野蓮くん……」

「っっっっ!?!?」

「彼とはその、色々とあって」


 有紗は、その事情をかいつまんで説明してくれた。

 彼女の家庭事情は、部活の顧問である羽美も知っていたし、先日事件があったことも聞いている。


 ただ、そこに蓮が絡んでいたことは初耳だった。


 センシティブな事情だけに、ごく限られた人間にしか知らされていなかったようだ。蓮自身にはなにも被害がなかったので、担任の羽美にも情報が回って来なかったのだろう。


「話してくれてありがとうね。そっか、蓮く――遠野くんがね」

「はい。それで、見もしないでダンジョン配信を嫌うのは良くないって思い直して。先生、ナイトライセンスって知ってますか?」

「えっ? ああ、うん、聞いたことある、くらいかなぁ――」


 嘘だ。

 メチャクチャ詳しいし、先日もかじりつくように視聴していた。そしてネットのコミュニティで夜通し語り合った。


「――彼がそのナイトライセンスの試験を受けるというので。その前に予習したんです。彼の配信を」

「は、ハマった……?」

「はい」


 真面目なまなざしで有紗は、


「学校での彼とは違って……いいえ、部活のときや私を助けてくれたときに見せてくれた、ああいう彼の姿があって」

「へ、へえ」

「私、憧れました。彼のことが大好きに――あっ!? は、配信者としてですよ? アスリートみたいっていうか、ええっと」


 耳まで赤くする姿がいじらしい。

 ……それに。


(正直に言えるの、羨ましいな――)


 教え子が最推しだとは誰にも言えない羽美からすると、とてもまぶしく映る。


「で、でもですね」


 有紗は呼吸を整えてから、


「あんまり他の人には言いにくいというか、生徒会長もやってますし、1人の後輩にえこひいきしてるって思われたくないというか」

「それは――」


 有紗だって生徒の1人だ。

 テニス部の女子キャプテンや生徒会長なんて肩書きを、そこまで重責に感じる必要はないのだが。


 そういう生真面目なところが彼女の魅力でもあるけれど。


「……でも、なんで私に?」

「先生は、遠野くんの担任ですし。……もしかしたら」

「?」

「もしかしたら、先生も遠野くんの配信を見てるかもって」

「!?!?!? み、見て、ないよぉ~……?」


 変な声が出てしまった。


「だ、ダンジョン配信は見るけどぉ、遠野くんの配信は、ち、チラッとは見たかな? 切り抜きくらいで……」

「そう、ですか」


 有紗が残念そうな顔をする。


「――先生となら、彼のことを語らえるかもと思ったんですが。すみません、変な話をして」

「~~~~っ」


 有紗は羽美に信頼を寄せてくれている。羽美なら冷やかさないと思ったのだろうし、語らい合う仲間が欲しかったんだろう。


 それは、羽美も同じなのだが……。

 ネットだけではなく、リアルで語らえる仲間。しかも『彼』のことを知っている者同士として。


「あ、部活動も手を抜くつもりはありませんので」

「…………」


「むしろ力が湧いてくるんです。今まで以上に張りが生まれてきた、というんでしょうか。遠野くんの配信を見るのが楽しみで、それが翌日の活力に変わるんです」

「そ、そう……」


「……あ。『ゆのさん』との配信を見たあとだけは、なぜか頭がズキズキして、不思議な気持ちに襲われるんですけど」

「だよね……」


「それも少しずつ癖になるっていうか」

「……うん」


「勉強も部活も頑張って、ご褒美に彼のアーカイブを見て――いま、とても楽しいんです。だから先生にご迷惑は――」

「――そう!!! だよねっっ!?!?!?!?!?」

「っっ?」


 羽美の中でなにかが弾けた。 


「せ、先生?」

「ごめんなさい嘘ついて! わ、私も見てるの、遠野くんの配信! っていうか最推し!!」

「! そうなんですね」

「担任教師として公言はできないけど――」


 堰を切ったように想いが溢れ出る。


「私のつらい時代を支えてくれたダンジョン配信、その中でも遠野く――『蓮くん』は特別で! あっ、恋愛とかそういうのじゃなくてね!? もう配信を見ている時間が宝物っていうか! 生配信見て、切り抜き見て、またアーカイブで同じシーンを見たくなって!……彼からは認識されなくてもいいんだよ!? ただの『担任教師』ってだけで充分すぎるくらい! そういう特別にはならなくっていいから、ただただ応援していたいの!!――――あっ」


 まくし立て過ぎた。これには有紗も引いてしまっているに違いない。


「先生……」

「う、うん、ごめんなさ――」

「羽美先生も同じだったんですね! あの、私、ダンジョン配信のリスナーとしては初心者で……良かったら色々教えていただけないでしょうか!?」

「えっ。こ、こんな先生、気持ち悪くない?」

「そんなわけありません。その、差し出がましいですが――こ、こういうのを『推し活仲間』って言うんですよね?」


 ダンジョン配信を見始めたばかりだというのに、もうそんな言葉まで。学習能力の高い彼女らしいというか何というか。


「尊敬する羽美先生と、憧れの遠野くんのことを語らい合えるなら……私、とても嬉しいです」

「っっっ! は、早川さん……!」


 リアル推し活仲間。

 それも『遠野蓮』の。

 

「いいの? さっきみたいにたくさん語っちゃうよ!?」

「はい。そういう羽美先生を見るのも楽しいです。もちろん、誰にも言いませんから――。私、リスナーとしてのファンアカウントを作ったんです。よろしければフレンドになっていただけませんか?……厚かましいでしょうか」

「と、とんでもない! よろしくね早川さん!」

「はい、羽美先生!」


 ――こうして『遠野蓮』という新たな共通点を得て、師弟コンビの絆はいままで以上に深まった。

 




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脳破壊コンビの爆誕である
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