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最年少ダンジョン配信者の僕が、JKお姉さんと同棲カップル配信をはじめたから  作者: タイフーンの目@『劣等貴族|ツンデレ寝取り|魔法女学園』発売中!
第5章 夜も激しくなりそうです

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第58話 初夜(健全)


「蓮くん、激しっ――」

「ゴメン、もっとゆっくりしようか?」

「ううんいいよっ、もっと速くして……!」

「――分かった。覚悟してね?」

「んっ、くっ……、あっ、あっ」



・これ、音声ファイルで販売してくれない?

・声だけ聞くとアカンやつやなw

・イヤホンで聴いててビックリしたわww

・まだ夕方ですよ⁉︎

・ ※ これは健全な戦闘レッスン配信です。



 四ツ谷ダンジョン3階層にある広い空間。

 ここが本日の【れんゆの】のカップル配信場所だ。


 いまは結乃の反射神経を鍛えるために、蓮の剣撃を剣で受ける練習をしている。もちろん全速力で斬りつければ結乃が対応できないので手加減は必要だ。


 しかし、


(――本当に筋がいい)


 普段は結乃至上主義の蓮だが、レッスンに関してはフラットに扱っているつもりだ。


 結乃はどうやら防御向きの性質らしい。強い殺気は発揮できず攻め手には欠けるが、防御のための忍耐力がある――。


 いまは互いに打ち込む稽古の最中なのだが、結乃は蓮に圧倒されっぱなしだ。それなのに、焦れたり諦めたりしない。粘り強く斬撃をさばきつつ、隙をうかがうのも忘れていない。


 それどころか――


「――――っ!」

「【アクア・ボール】っ!」


 水魔法のスキル。

 水球を操作して叩きつける初歩的な技だが、結乃はそれを自分の背後に生成して、蓮の剣をいなした直後に魔力操作でぶつけてきた。威力は低いが、そのぶん発動が速く乱戦になれば敵に気づかれにくい。


 いいカウンターだったが、無論、素直に食らう蓮ではない。


 せっかくだ、新装備を試してみる。体を振ってカーキ色のマントをはためかせ、その布地で水球を打ち落とす。


「あっ」


 そのまま回転すると結乃の死角へと斬撃を与えて、寸止め。


「これでまた一本」

「うう……行けると思ったんだけどなぁ」

「狙いは良かったよ。でも例えばもう一発、体の影にアクア・ボールを隠しておいて、僕の反撃に合わせて放てば効果的かも」

「そっか、一発目を囮に使うんだね」


 素直な結乃が、もっと意地悪く戦術を選べるようになれば攻撃面も成長するだろう。


「蓮くんのほうはどうだった? マキ・テクノフォージの【イージスマント】」


 蓮が纏うカーキ色のマントは、例のマキ・テクノフォージ社からサンプル提供されたものだ。配信でレビューすることを条件に、無償で与えられている。


 装備者の意思と魔力操作によって、形状と性質を変える。先ほどのように、部分的に硬質化させ水魔法を弾くこともできる。


「うん、いい反応してる。ただちょっと――」

「?」

「……サイズが。大きい」


 これでも丈の短いものが選ばれているのだが、背の低い蓮が着用すると裾を引きずりそうになってしまう。


・確かにw

・成長期前の中学生かな? うん中学生だったわ


「でも、それだけ長くてもちゃんと蓮くんの反応に追いついてくれるんだね」

「前に使った大剣もうそうだったけど、魔力伝導率の高さは信頼できる。自分の反応に付いて来れない装備はちょっと着けたくないから。……あとは、黒ならもっと良かった」

「蓮くん、黒好きだよね。似合うもんね」


・言われてみれば黒のイメージあるかも

・ショートマントのイメージだよね

・男子中学生はみんな黒が好きだよ(偏見)

・マキさん、特注カラーよろしく!


 このイージスマント、攻撃に使えないこともないが基本的には防御用だ。形状変化と、性質変化――。


「……結乃、水魔法使った防御スキル思いついたんだけど」

「え、いま!?」

「うん。水魔法は形状変化させやすいし」


 蓮は完全に攻撃寄りのスタイルなので、身につけている防御スキルの数は多くない。だから、結乃の戦い方をもとに考えてみたのだ。


「こうして――」


 左の掌を突き出して、円形に薄い水の膜を発生させる。


「盾?」

「似たようなものかな……結乃、斬りつけてきて」

「うん、行くよ――」


 水の盾に刃が接触するが、表面で弾き返すわけではなく、『盾』のほうが歪んでしまう。形状変化。凹んだ水の盾が刃をつまむようにして下方へと流して逸らす。


 それと同時に、形状変化した別の部分がバランスを崩していた結乃に覆い被さる。


「わっ――!?」


 そこでストップ。

 その気になれば捕獲もできるし、性質を変化させて殴りつけたり、水を刃に変えて斬りつけることもできる。


 使い捨ての、攻防一体な1枚盾。


 結乃が水の網から抜け出す前には、蓮はすでにもう1枚同じものを作り出している。


「面白いね! 透明な……ピザの生地みたい!」

「ん? ああうん。似てる――かな?」


・まあでっかいピザ生地っぽくはあるけどw

・感想、まずそれが出るか?w


「……結乃、お腹空いてる?」

「えっ!? へ、減ってないよ?……ううん、本当は減ってるけど」


・素直w

・蓮くん何か食べさせてあげて

・さすがの蓮くんでも料理スキルは持ってないんじゃない?w


 赤面してお腹をさする結乃。


・今のってアクア・ウォールの変化形かな?

・変化させすぎやろ

・かなり省エネだよね

・やっぱ継続戦闘が前提なんやな


「――蓮くん。いま見せてくれたスキルって【アクア・ウォール】の応用になるのかな? 強い水流でガードするっていう」


 汎用スキルであるアクア・ウォールは、自分の周囲にぶ厚い水の壁を作り出して攻撃を防ぐ技だ。


「応用っていうか、系統は近いかもだけど。あのスキルは魔力を無駄に使うからあんまり好きじゃない。防御は強固になるけど」

「強固に……。あのさ、蓮くんが本気で防御したらどうなるの? アクア・ウォールで」


・それ気になるね

・省エネスキルもいいけど全力も見てみたい

・蓮くんは攻めのイメージ強いもんな


「ね、やってみて?」

「いいけど。ちょっと離れてて」

「このくらい?」

「もっと――」

「このくらい、かな?」

「あと10m」


・そんなに離れる?

・何する気だ

・アクア・ウォールだろ? 自分の周囲1mくらいに壁を作るヤツ


 配信用カメラは自動で位置を調整して、離れた蓮と結乃を画角に収める。


「じゃあ、やってみる」


 蓮はしゃがむと、迷宮の地面に左手を突いて、


「――――【アクア・ウォール】」


 《《普通に》》、そのスキルを発動させた。


 途端。


 ――ドバァアアァッッ!!


 轟音とともに地面から水流が巻き上がる。5階建ての屋根ほどある高さの天井までを覆い尽くし、円状に蓮を囲ってガードする。


・は?

・いやいやいや!?

・勢いおかしいって!!

・滝じゃんコレ、上下逆だけど

・防……御……?

・巻き込まれたら死んじゃわない?

・蓮くん! ゆのちゃん濡れてる!w


 通常のアクア・ウォールはせいぜい2m程度の高さで、しかも一時的に攻撃をしのぐものだが、蓮の《《それ》》は20mまで達しても勢いがやまず、激流が天井を打ち付け続けていた。


 ――ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドッッッ!!!


 やまない激流。震えるダンジョン。びしょ濡れで見上げる結乃と、高速のチャット。


・またダンジョン壊れちゃうw

・蓮くん激しくて草ァ!

・水のないところでこれほどのアクア・ウォールを……

・出しすぎ出しすぎww

・いつまで続くのよコレw


 無論、水壁の内側にいる蓮はチャットを読むことはできず――1分ほどして、ようやくスキルの実演が終わった。


「こんな感じ……」


 蓮が周囲を見渡すと、晴れた視界の中に、水を盛大にかぶった結乃の姿が。


「結乃!? ご、ごめん、びしょ濡れに!? これ最後に使ったのずっと前だったから感覚が――」


・規模感よw

・つーか得意スキルでもないのか

・俺、毎日特訓しても出来る気がしないわ

・汎用スキルとは一体……うごごご


 蓮は慌てて駆け寄るが、結乃は笑って、


「ううん平気だよ。ただ――」

「?」

「蓮くん、いつも本当に、全力で手加減してくれてるんだな……って」


・ゆのちゃんがちょっと落ち込んでるw

・まあレベル差がねw

・これは真似できませんわ

・ゆのちゃんじゃなくて誰にも真似できんだろww

・知ってるか? これで得意属性じゃないんだぜ?(震

・水魔法はあくまで『使えるだけ』って前に言ってたよな

・やめたげてw水魔法専門の配信者が泣いちゃうからw

・普通ユニークスキルって威力上げるために開発するけど、蓮くんの場合は出力抑える目的もあるのかもね


「結乃、しゃがんで……髪拭くから……」


・おい! イージスマントをタオルにすなw

・高級品やぞww

・でも材質変化させてるし拭き心地よさそう

・マキ社のマントは吸水性も抜群です!!

・ふむ……ゆのちゃんの水滴を拭いたマントなら言い値で買おう

・↑はい通報w

・↑↑蓮くんにコロされろww


「ホントごめん……!」

「ううん。蓮くんにワシャワシャしてもらえて……。ちょっと、お得な気分かも。ありがと」


・隙あらばイチャつくんじゃねぇww

・こいつらカメラなかったらどこまで行っちゃうんだろ?

・蓮くんパパにタオルでワシャワシャされたい……

・特殊性癖が多い配信だなぁw


 と、結乃の髪や顔を拭いていると、


 ――キュルルルっ


 小さく、彼女のお腹が鳴った。


「…………」

「な、鳴ってないよ?」


(は? 可愛いんだけど?)


 思わず声に出そうなのをギリギリで我慢する。

 しかし、そういえば確かにもういい時間だ。


「今日のダンジョン配信はこれくらいで……」


 蓮がそう言うと、チャット欄からは惜しむ声が続々と上がる。


・マジか~

・贅沢言わんからあと100時間配信して欲しい

・ま、しゃーないよね

・育ち盛りだ、夕飯抜きはいかんよ

・おつかれさま!

・今日も楽しかったよ

・今来たもう終わりな感じ?

・夜も配信して欲しいです

・ナイトライセンス取れるといいんだけどねぇ


「…………」


 チャットを読みながら、蓮は少し迷う。もちろんこの配信はここで終了だ。だが今日は――


「蓮くん。言っていい?」

「――うん」


・おっ?

・なんだなんだ?

・2人とも改まってどうした

・結婚報告かな?

・おめでとうございます!!

・日取りはいつですか?

・お子さんは何人の予定で?


「ち、違うよ!?――えっとですね、私たち、今日はもう1回配信する予定なんです」


・ほう?

・ナイトライセンス取れたん!?

・いつの間に


「それも違くて……」


 結乃が横目でこちらを見てくる。蓮は、結乃の言葉を継いで報告する。


「――よ、夜。僕たちの部屋から……配信します」


・部屋?

・え待って、まさか本気の自室?

・そゆことか!

・2回行動やったーーーー!

・うおおおおおおおお!?

・2人が同棲してるお部屋……ってコト!?

・ええんか!?

・愛の巣からの配信かよ、いいぞ許す!


「う、うるさい……」


 はやし立てられて、結乃と一緒に赤くなる蓮だった。


 そう。

 今日は、2人で初めての『夜配信』を実行する日なのだ――





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