表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
最年少ダンジョン配信者の僕が、JKお姉さんと同棲カップル配信をはじめたから  作者: タイフーンの目@『劣等貴族|ツンデレ寝取り|魔法女学園』発売中!
第4章 ギャルお姉さんにも好かれています

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

49/116

第49話 報酬


 梨々香の【ルミナスアロー】で射出された蓮の目前に、


『キィイイイっっ――!』


 数体のウィムハーピーが迫る。


「――――っ!」


 急激な方向転換。蓮の体には強いGがかかる。


 梨々香は、蓮のオーダーどおりに【ルミナスアロー】を操ってハーピーの群れを器用に回避してくれた。

 ぐんぐんと上がる高度。【雲の監牢】が迫ってくる。それは、空に作られた監獄。どこか卵を想起させる、巨大な楕円の牢。


 蓮は大剣を構え、【ルミナスアロー】の軌道と呼吸を合わせて――雲の一端を切り裂いた。ぶわっ、と強風とともに内側から白い雲が流れ出す。一瞬見えた内部。白い乱流。規則的に循環する雲が、幾人かのプレイヤーを捕らえていた。


 だが蓮が見ていたのは――


(――――あそこか)


 風の流れ、雲の流れ。魔力の流れ。

 それらから【雲の監牢】の中心部を推測する。


【ルミナスアロー】の推進力は【雲の監牢】の上端を追い抜いたところで停止し、光の矢は霧散した。

 

 ここまで来れば十分だ。

 あとは蓮の力で中心部を貫けば――


『ギュィイイイっっっ!』


 クイーンハーピー。

 巨大な卵を守護する、ハーピーの女王。憤怒に満ちた形相。風を掴む大きな翼。


 殺すのは容易いが、ハーピーは斬らないと決めた。だから、


「――どいてくれる?」

『ギュイっ――!?』


 殺意だけを斬撃にして投げつける。クイーンハーピーはエリアボスとまで呼ばれるモンスター。どこかの、実力差をわきまえない、強さをはき違えた人間とは違う。野生の感性を持ち合わせた相手だ。

 

『ピ、ピィイっ……!』


 ――逆らってはいけない相手だ、と彼女は即座に悟った。もしも敵に回せば、眷属もろとも根絶やしにされてしまうと。


「いい子だ」


 自由落下する蓮は、重力魔法で中空に足場を作る。空に足を向けた状態で、その足場をドンっと蹴る。


 大剣を両手で構え、戦意を喪失したクイーンハーピーのそばを通過し、【雲の監牢】へと突入。


「――――っ、……――っっ!」


 まとわり付いてくる雲が魔力を奪っていくのを感じるが、構わない。視界も最悪。だが方向は見失わない。


 速度を維持したまま、先ほど見抜いた中心部へ。雲の渦が塊となったそこへと大剣を突き立て、穿ち――


【雲の監牢】を破壊した。




 ■ ■ ■



「おお~~っ! レンレンさっすが!」


 地上の梨々香は、一連の様子を眺めて感嘆の声を漏らした。


「やっぱ梨々香も天才だねっ、本番で一発、大成功っ!」


・さすりり!

・いつ見ても魔力コントロール天才的です

・人間飛ばすとか最強スキルじゃん!


「いやー、レンレンよく耐えたなぁ。バラバラにならなくって良かった良かったぁ☆」


・えっ

・バラバラ?

・どゆこと?


「【ルミナスアロー】は攻撃スキルだもん。出力を抑えればダメージは下げられるけど、さっきのは『全開』だったし」


 人間サイズのものを遥か上空まで打ち上げる必要があったのだ。


「もち、レンレンを壊しちゃわないように調整はしたよ?……でも【ルミナスアロー】あんなふうに動かしたら、普通の人なら手足がもげて、体がグニャアってなって爆発四散してたかも! レンレンがうまく対応してくれて良かったよ。結果オーライ! てへっ☆」


・てへちゃうわw

・エグくて草ァ!

・ギリギリセーフ?

・蓮くん死ぬとこだったんかw

◎梨々香ちゃんになら、バラバラにされても本望ですお願いします!

・まあでも梨々香ちゃんが可愛いから……ヨシッ!


「おお? レンレン、本気でみんな助けちゃう気かぁ」


 梨々香に見上げる先、壊された【雲の監牢】から、囚われていた配信者たちがバラバラと落下していた。そのまま落ちていけば、魔力を吸われているだろう彼らは地面に叩きつけられて、やはり絶命するだろう。


 蓮は重力魔法で跳躍しながら、彼らを救出している。抱きかかえられないまでも、首根っこを掴み、あるいは風魔法で落下の衝撃を和らげるように。


 しかし、それだけでは全ては救えない。


 ――そのとき。

 はるか遠くの蓮が、チラッとこちらを見た気がした。


「…………っ!」


 ここまで彼の想定内か。

 それだけ、梨々香の実力と性格を信じてくれているとも取れる。梨々香はなんだか嬉しくなって、


「どこまでもナイト様だね、レンレンっ! 手伝うって約束したし、梨々香もやるよ~?【ルミナスアロー】――落下ダメージなんてキャンセルしちゃえっ!」


 出力調整した光の矢で、配信者の体を側面から打つ。落下速度を緩めて、ダメージを最小限に留める。


 ドサドサっと地面に転がる配信者たちは、誰一人リスポーンすることはなかった。それを確認した梨々香はカメラに向かって、渾身のギャルピースをキメた。


「いぇい! 梨々香たちのアイビスパワー、見たかっ☆」


 リスナーたちはもちろん、おおいに湧いた。



 ■ ■ ■



 無事に【雲の監牢】を破壊し、地上へと戻ってきた蓮は当惑していた。

 

「ありがとうっ……!」

「助かりました、ありがとうございます!」

「あのままハーピーに食べられるかと――」


 10人ほどの配信者たちに囲まれて、謝辞を受け続けていたからだ。


「やっほーレンレン、おっつかれー!」


 梨々香もやってきた。


「リスポーンした人いない? そっかー、レンレン本当にみんな助けちゃったんだね」


 ハーピーたちは、クイーンへの蓮の『ひと睨み』が効いたらしく、女王に引き連れられて山岳地帯へと引き上げていった。襲撃は終わったものの、さすがにもうクエストは続行不能だろう。けっきょく、金の羽根は1枚も手に入れられなかった。


「あのさ、良かったらもらってくれないか?」

「え?」


 20代らしき男性配信者が、自分のポーチから金羽根を取り出して蓮に差し出す。それを皮切りに他の配信者たちも、


「私のも。あのままだったら、どうせ全部ロストしてたし」

「そうだな。オレらを見捨ててたらまとめてゲットできてたんだしな」

「え。いやそんなつもりは……」


 もとより蓮はプレイヤーキルをするつもりはなかった。ルール違反な行為ではないが、どうにも気乗りしなかったからだ。

 見殺しにして回収するなんて考えもしなかったし、こうして譲られても困ってしまう。


「いいじゃんレンレン、もらっときなよ。みんなの厚意なんだし!」

「でも半分は梨々香先輩の――」

「梨々香はレンレンに頼まれたことやっただけだし? あとのことは知らなーい。んじゃね☆」

「あ、ちょっ、先輩――」


 それだけ言うと、梨々香はさっさと去っていってしまった。


「遠野くん、ほら受け取ってくれ」

「私たちの気持ちだから!」

「あんたが1位になるべきだよ!」

「…………」


 みんなから捧げられる金色の羽根。


 ――蓮はちょっとだけ、色んな人間から贈り物を突きつけられるウィムハーピーの気持ちが分かった気がした。



 ■ ■ ■



『トラブルもありましたが、大盛況だった本日のイベントクエスト【気まぐれハーピーの金羽根】!!』


 司会者のアナウンスが、1階層のイベント広場に響いた。


『もっとも多くハーピーの金羽根を手に入れたプレイヤーは……、MAKITOさんっっ! おめでとうございま~~~ッす!!』


 会場からは拍手が起こり、壇上では男性配信者が1位の報酬であるシャドウブレードを、スーツ姿の男性――マキ・テクノフォージの社長から授与されていた。


「良かったのレンレン? 梨々香はエレメンタルバングルもらえたからいいけど」


 さっきまで壇上にいた梨々香が、蓮の隣までやってくる。彼女は自力で入手した金羽根の成績で、3位の報酬を受け取っていた。


「助けた人たちから受け取ってれば、レンレンが1位だったのに」


 けっきょく蓮は謝礼を固辞して、0枚の成績のままクエストを終えていた。


「1位になれば配信的にも映えてたのに。もったいなーい」

「それはそうだろうけど」

「報酬のシャドウブレードもさ、あの大剣に負けないくらいの逸品らしいよ?」

「ああ、これ……」


 そういえば、たくぼうが使っていた大剣を携帯したままだった。


「返してくる」

「え、アイツに?」

「いやその辺のスタッフにでも。あの会社の関係者だって言ってたし。っていうかこれ――」

「ん?」

「これ持ってるとアイツの顔思い出してイヤだし」

「それは確かに!」


 梨々香も納得した。


「それはそれとして……レンレンってさ」

「?」

「ドライに見えるけど、ドライじゃないよね。……うん。結乃ちゃんみたいに優しい子が一番お似合いなんだろうなぁ」

「な、なんすかそれ」

「あはは、わっかりやすーい☆」


 笑って茶化してくる。

 けれど梨々香は、ふいに真面目な表情になって、


「……でも。梨々香も本気になっちゃうかも。ガチでかっこ良かったよレンレン。今度はちゃんとコラボしようね」


 言って、優しく微笑んだ。





楽しんで頂けたらブクマ・評価・感想などで応援いただけると大変嬉しいです。


感想欄はログインなしでも書けるようになっているのでご自由にどうぞ。

評価は↓の☆☆☆☆☆を押して、お好きな数だけ★★★★★に変えてください!


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ