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最年少ダンジョン配信者の僕が、JKお姉さんと同棲カップル配信をはじめたから  作者: タイフーンの目@『劣等貴族|ツンデレ寝取り|魔法女学園』発売中!
第2章 トラブル対応したら海外までバズりました

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第10話 レスバ

 四ツ谷ダンジョン2階層。

 蓮は念のため、配信前に辺りの様子を確かめて回る。


 昨日、思いがけず出現した10階層のモンスター。その原因はまだ分かっていない。出てきたところで蓮の敵ではないが――また昨日の結乃のように、誰かが襲われる可能性だってある。


 とはいえ、配信前にフロアをしらみつぶしに回るわけにもいかない。だからただの自己満足でしかないのだが……モンスターの気配を探りながら少しだけ時間を使うことにしたのだ。



 2階層は迷路のような通路と、学校の体育館ほどの広間とがいくつも繋がった構造をしている。人間が作ったわけではないのだが、石壁には明かりを放つ鉱石が、さながら照明器具のように等間隔に埋め込まれ、視認するのに問題ない明るさを保っている。


 ――特に異変は見つからない。

 数体のモンスターに出くわしたが、2階層レベルのものばかり。もちろん一蹴。それよりも、他の配信者に絡まれそうになるほうが厄介だったくらいだ。


 ……何もないはずだが、妙な胸騒ぎがする。


(ま、気のせいなら別にいいんだけど)


 そうしているうちに、マネージャーの衛藤と打ち合わせた配信開始時間が迫っていた。


 ちなみに、動画をライブ配信するなら夜間のほうが圧倒的にリスナーが多く有利だ。

 しかし夜はモンスターが凶暴になりやすく、さらに《《万が一》》があったときのための医療体制も手薄になる時間帯。そのため、国が――ダンジョン庁が実施する試験をクリアし、【ナイトライセンス】と呼ばれる認定を受けなければダンジョンへの入場が許可されない。


 蓮の実力ならば簡単にナイトライセンスを取れるだろう。だが年齢が年齢だ。12歳でダンジョン配信するだけでも特例なのに、ナイトライセンスなんて当然ながら前例がない――ということで、国が受験自体を渋っているのだ。


 だから当面は、昼間の配信ということになる。


 より多くのリスナーを集めるべきなのは配信者の宿命だが、一方で、蓮個人としてはあまり大勢の相手は苦手。その意味では、昼配信に限定されているのは悪くない。


 ちなみに今後、夜にはライブ配信ではなく、編集した動画を投稿しようと衛藤とは話している。



「ここでいいか」


 蓮は適当な広間を見つけて、昨日と同じように配信セットを展開する。せき払いをして、深呼吸をして――

 

「…………ども。蓮です」


 ダンジョン配信を開始した。

 衛藤からはもっとハイテンションを要請されていたのだが、こんな挨拶でも蓮にしては譲歩したほうだ。


 ゆうべの時点から今日の配信時間を告知していたので、平日の昼間にしては大勢のリスナーが集まっていた。


<チャット>

・キターーーーー!

・はじまった!

・ここがやらせの現場ですか?

・アンチとか気にすんな! がんばれ!

・蓮くんおっすおっす

・チャットの流れ早いがww


 配信カメラが自分を追ってくるのはまだ慣れないが、チラチラとそちらを向けるようにはなってきた。


 チャット欄もおおむね好意的な内容が多い。

 だが中には、不穏な内容も目に付いた。


 特に――



◎まずは昨日の件を説明してください。10階層の危険なモンスターを持ち込んだのは、事実ですか? 人気を取るために、女子高生を、『危険な目』に遭わせたのですか? アイビスの配信は、不自然に同接が多いように思います。新人とはいえ貴方も、所属タレントであれば、これらの事柄について、我々リスナーに納得のいく説明を行うべきでは?



 ギフトチャットだ。


 配信サイト【Wave(ウェーブ)】のチャットは、通常は無料で書き込める。しかし一定の金銭を配信者に贈ることで、【ギフトチャット】と呼ばれる、他より目立つ特別なチャットを流すことができるのだ。


 配信者にも他のリスナーの目にも留まりやすく、正しい使い方をすれば何も問題はないのだが――時に、配信者に対して悪辣なコメントを読ませたくて、課金してまでチャットを贈ってくる愉快犯も存在する。


 このチャット主も、その1人だったらしい。



◎答えられないのですか、ならば、やらせを認めるということでよろしいですか? 中学生とはいえ、配信者です。プロである以上は、義務が伴います。分かっているのでしょうか?



・長文こわっ

・わざわざギフト使って粘着かよ

・蓮くん無視でいいよー

・荒しウゼー

・こういうのってブロックできんの?

・通報しました

・ギフトチャットって通報効くんだっけ?

・無視でいいとか…よくないだろ。放置したらチャット欄が荒れるんだから

・おまえが言うことじゃなくね?

・新人なんだから仕方ないだろ


 大半は良心的なリスナーたちだが、こういう手合いが現れると議論が混沌として配信に集中できなくなってしまう――まさに今、そういう状況が起きようとしていた。


《蓮さん任せてください!》


 早速、マネージャーの衛藤からイヤホンに連絡が入る。


《このチャット主、ブロックして追跡して、二度とネットに触れたくなくなるまで、念入りにゴリゴリすり潰しておきますから!》

「……いや、いい」


 配信に乗らないよう、小声で答える。


 正直なところ。

 応援されたり囃し立てられるより、敵対されるほうが気が楽だ。


 このギフトチャットをしてきたリスナーが、暇つぶしだろうと愉快犯だろうと、本気でこちらを恨んでいようとどうでもいい。敵がいるほうが、思考が戦闘モードに入って冷静さを保てる。


「…………説明とかいらなくない?」


 じっとカメラを睨んで言う。


・お!?

・蓮くんおこ?

・どした!?

・目がすわっとる

・殺気出てますよ


「勝手にモンスターが出てきて、勝手に女が襲われて、助けただけだし」


 変に『軽快なトークをしよう』なんて考えているときよりも、言葉がスラスラと出てくる。


・『女』ww

・いいぞいいぞ


「――ていうか、動画見てた? 戦闘見てホンモノか偽物かも見抜けない程度で、アンチコメントとか恥ずかしくないの?」


・レスバきちゃ

・言うねぇ

・おいおい蓮くんさんを怒らせたぞ、どーすんだアンチコメ

・炎上には気をつけてね?ww


 すると一拍遅れて、例のごとくギフトチャットが書き込まれた。



◎説明責任は、其方そちらにあります。貴方は、この配信においては『株式会社アイビス』を代表して、そこに、立っているはずです。社会経験がないので、分からないのでしょうが、企業では、それが、普通のことなのです。



・社会経験マウントww

・草

・いや本当に社会人かも怪しいぞ

・これ毎回投げ銭してるん?富豪かよww


「――で? 動画見た? もしかして、動画も見ずにまとめサイトの情報だけで批判してない?」


・今日はスラスラしゃべるじゃん

・声が落ちつき過ぎてて草なんだ

・今日なんの配信だっけ?w


《いいですよ蓮さん、アンチコメ対策の基本からは外れていますが、チャット欄には統一感が戻ってきました》


 しかし、ギフトチャットは中々あきらめない。



◎義務教育で、目上の人を敬えと、教えられませんでしたか? ご家族から、躾られませんでしたか? 親の顔を見てみたい、という慣用句があります。私は、貴方に対して、いま、そのような想いを抱いています。



・すごい早口で言ってそう

・中学生にムキになる大人の鑑()


 蓮は、ギフトチャットを冷めた目で読み込んでから口を開く。


「親? ダンジョンに呑まれて死んだよ。僕の8歳の誕生日に」


・え

・あっ

・あー……

・蓮くん…マジか…

・あかん

・静岡か?

・4年前だからそうだろうね


 ダンジョンは、あるとき突然発生する。前兆がないことがほとんどだ。それが人里離れた山の中ならまだいい。人が多く住む街中で発生すれば、大惨事になる。


 ダンジョン配信を国が推し進めるのは、ダンジョン発生が原因で廃れてしまいそうな地域を盛り立てるためでもあると――蓮は、そう財団の人間から聞かされていた。


 配信を楽しんでいるリスナーの多くも、その点は理解しているはずだ。蓮の独白に、同情的な感想が多く寄せられるが――またもや、くだんのギフトチャットが、今度こそリスナー全員をドン引かせるコメントを寄越した。



◎親が居ないので、そのように育ったのですね。やはり、虚言癖など、深刻です。私のように、きちんとした家庭で、きちんとした社会経験を積まなければ、まともな大人には、成れないということです。



・うわコイツ最悪

・はいライン越え

・でた社会経験マウント

・運営さんBANして!

・蓮くんだいじょぶ?


 しかし蓮の心は、コメント欄が心配するほど乱れてはいない。家族がいないのは事実だし、その後はろくな人生を歩んできてないのも事実だ。『虚言癖』に関しては的外れだが、こういうタイプの人間にまで理解してもらおうとは思わない。


 ただ――明確に『敵意』は感じた。相手が敵であるならば、たとえなんと言われても動揺することなんてない。


「親なしの僕より、そんなふうに攻撃的で野蛮になれるんだね。『きちんとした育ち方』したアンタのほうがダンジョン配信向いてると思うよ。アンタもやれば?」


・引かないなぁ蓮くん!

・煽ってるww

・あーあ蓮くんさんに喧嘩売っちゃった

・キレてるけど冷静だ

・動じてないね


 ――と、そのとき。

 


《スタンピード警報!》

《スタンピード警報!》

《スタンピード警報!》



 イヤホンから、強烈なアラート音が鳴り響いた。



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