秋だから想う
──空が高い。
こんな気持ちの良い秋晴れの日は思い出す。
私は本が好きだ。
といっても、多分それは普通より少しだけというレベル。特別に詳しくもないし、好きな作家さんの本を集めに書店を回っていたのは若い頃だけ。
小説投稿サイトを知ってからは、初めて触れる世界に楽しみを覚え、色々と読むようになった。
昔から好きなのは推理小説。今は面白そうなら、取り敢えず何でも読む。
けれど──。
どうしても、未だに読めないジャンルがある。
ホラーと終末期医療を題材とした物。ファンタジーなら、ある程度残酷描写も読めるのに。
ホラーは、ただ怖いから。スプラッタなんて、ご飯が食べられなくなってしまう。本も、テレビも、映画も無理。
終末期医療については、とても大切で考えなければならない問題。身内にしろ、自分にしろ、話し合いをしておかなければならない。
いずれ、選択をせまられる時がくるから。
私の場合。
話し合っていても、主治医に薬の量を増やすか聞かれたら躊躇してしまったのだ。痛みや肺の苦しさを和らげるには増やすしかないと理解はできていた。
でも、それを増やしたら、もう母の意識が戻らないと知っていたから。
あの一年は、お別れが多すぎた。
こんな秋の日は思い出す。
誰しも……。仕事も趣味も、いつか必ず終わる時がくるのだと母は言った。
だったら、好きな事を精一杯やって毎日楽しく生きてやろう。
そんな風に、秋空を見ると想うのだ。