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ムガスコ・カダリ(昔話)

「アイツ、子供の頃は身体が弱くてねぇ。昔は結構大変だったのよ」


日没まで間もない頃、カワラケ地獄の荒涼とした風景を歩いていた時、不意にそんなことを言われた。


「オーリン先輩が、ですか?」

「そうそう。今では生意気に身長も追い越されちゃったけど、疲れればすぐに熱を出す子でねぇ。父っちゃや母っちゃを心配させてたんだよ」


トキは苦笑顔でオーリンの知られざる過去を語り始めた。


「小さい頃は血色も悪くて、かけっこでは当然ビリで、ケンカになれば一方的にボッコボコ。まぁそんなに意地悪な奴は周りにいなかったんだけどさ、子供のやることよね。だからアイツがたんこぶ作って泣きながら家に帰ってきた後、やったヤツに仕返しに行くのは必ず姉である私の役目だった。アレでも小さい頃は可愛かったのよ、姉ちゃん姉ちゃんってさ、常に私の後をついて歩く子でね――」


トキは昔を懐かしむかのように笑った。

アオモリ一の暴力女、トキ・ジョナゴールド。その誕生には、弟であるオーリンの存在が少なからず関係しているということらしい。

それにしても、あの意地っ張りのオーリンが、昔はそんなに素直に姉を慕っていたとは。彼という男を多少なりとも知っている人間ならにわかには信じられないことのように思えた。


「私は四つ年上だからね。四年早くスキルを発現させた。私のスキルは嫌われ者の死霊術師。当然避けられるし、色々目もつけられるようになってね。ムカつくからどいつもこいつもぶちのめすことにした。何しろ今までの経験があったから簡単なもんだったわ。死霊術師としてそこそこ力も使えたしね。そのうちにハグレ者どうしでつるむようになって、髪もこんなにして」


ほら、とトキは染めきれていない自分の金髪を指で摘んだ。

この妙な頭はその時の、人を滅多矢鱈に威圧していたと時代の名残なのか。

ようやくひとつ納得が行ったところで、ハァ、とトキは莫大な疲れを滲ませて嘆息した。


「気がつけばお山の大将よ。ツガル一帯を支配する卍鴉連合のヘッドになってた。姉御姉御って持ち上げられて、街を歩けばみんな会釈するか道を譲るか。なまじ顔が利くから無銭飲食なんかし放題。あの時代はそれなりに楽しかったけど――今思うと、あのときの私はなんであんなにイライラしてたのかなって思うよ」


トキは再び自分を笑った。妙に寂しげな笑いに、レジーナはこの美しい人がそこまで荒れていたという事実が信じられなかった。

普通にしていれば、否、この人に死霊術師というスキルが発現しなければ、きっとこの人はそんな風に振る舞わなくてもよかったはずだ。

この世の人々は発現したスキルによって人生が変わってしまう人も多いが、この人もその中の一人だったのだろうか。


「こんなんじゃダメだって、自分でもわかってた。父っちゃや母っちゃは事情がわかってるから何も言わなかったけれど、きっと心配してたと思う。オーリンは私を見る度に怯えてたわね。そして案の定、私は調子に乗ってケンカを売る相手を間違った。――それが私の師匠であるシャーマンキングとの出会いだった」


シャーマンキングとはアオモリの霊場・オソレザンを支配する偉大な死霊術師の名であるはずで、凄まじく恐ろしい人だとは聞いていた。

そんな人にまでケンカを売るとは、確かに当時のトキは確実に何かを見失っていたに違いない。


ふと、そこでトキは意味深に言葉を区切った。


「それで、どうなったと思う?」

「ど、どうなったんです?」


トキはニカッと歯を剥き出しにしてレジーナを見た。

なんだ? と思った途端、トキは右手で前歯を二本、ポキリと外してみせた。

えっ、差し歯――!? と仰天すると、トキはその反応に満足したように笑い、差し歯を元に戻した。


「いや、初めてだよ。人にあんなに殴られたのは。やり返すどころかあの人に触れることさえ出来なかった。死霊術どころか根本的に実力が違った。立ち上がれないぐらい、もういいよってぐらいボコボコにされてね。前歯なんて全部いかれた。それなりにあったプライドも、自分のケンカの腕も、何もかも否定されるぐらい徹底的にやられた。なんだこれ、私殺されるのかな、って真剣に思ったさ。でもあの人は私を殺さなかった。それどころか――私に向かって笑ったんだよ」


かなわんなぁ、というようにトキは苦笑した。


「頭は冷えたか。このままじゃお前は一生このままだ。殴って痛いと泣かせるか、殴られて痛いと泣くか、それだけで人生が終わってしまうぞ。お前が常日頃見ている、何かを嘆き恨んで人に害を為す悪霊は未来のお前自身だ。そんな人生を歩みたいか。嫌なら私と一緒に来ないか。お前の才能は今のでよくわかった。私の下で修行してみなさい……ってさ」


トキは顔を上げ、地平線の向こうへ沈んでいこうとする太陽を見た。

自分の人生を照らしたその言葉が、まるであの太陽そのものであったかのように。


「こいつデケェ、って思ったね。生まれて初めて本気で敵わないと思った相手だし、私相手に本気のトーンで真剣に説教してくれてね。それより、この嫌われものの才能を褒められたのが一番嬉しかった。惚れたね、あの一言には。抱かれてもいいって思ったもの。あの人女だけどさ」


トキはゲラゲラと下品に笑った。

シャーマンキングは女性なんだ……と妙な発見に驚いているレジーナの横で、トキは目を輝かせて西の空を見た。


「それ以降、私はスッパリ足を洗うことにした。ツガル卍鴉連合のヘッドは後輩に譲って、悪い連中との関係は切って、整理できるものはとことん整理した。私は家を出てオソレザンのシャーマンキングのところへ修行に行くことにした。頭冷やして人生を考えるべきだってね。それから三年、私はあの人にゴリゴリにシゴかれた。でも、悪くない日常だったよ。人をぶん殴っていいツラしてた時より何倍も心が穏やかだった――でも」


トキはそこで言葉を区切った。


「半年ぐらい経ったときだったわね――オーリンがね、シャーマンキングの下で修行したいって言い出してさ」


それは――聞いたことがある。

結局オーリンはシャーマンキングの想像を絶するシゴキに耐えかね、命からがら逃げ出した……というあのくだりであろう。


「ああ、それは本人から聞きました。なんでも、一週間でも生き残れたのが不思議だとか……」

「そりゃそうだよ。アレは私があの人に頼んだんだ。なんとか気張って弟を追い出してくれ、ってね」


えっ? とレジーナが意外な真相に驚くと、トキは苦笑した。


「無茶苦茶言ったもの。今日一日、一回でも息吸ったら腹筋十万回な、とか、今日中にあの岩山をチョップで叩き割ってこいや、とかね。シャーマンの修行とは全然関係ない無茶振りばっかりやらせてね。やらせてる本人だってできるわけないことをやらせまくって追い出したんだよ」


あれは見てて面白かったわね、などと言ってトキは笑った。

今日一日呼吸したら腹筋十万回……なるほどそれは修行というより単なる無茶振りだ。命からがらの逃走劇には、トキとシャーマンキングの案じた一計があったのだ。


しかし、トキは何故そんなことを――?

視線で問うと、トキは情けないように笑った。


「オーリンはね、自分に死霊術師の才能がないことを知ってる癖にオソレザンに来た。死霊術師になりたかったわけじゃないんだ。オーリンのヤツ、私を心配してたんだよ」

「心配、してたんですか?」

「そう。心配してたの。多分ね」


全く己のことながら情けない、というように、トキは頭を掻いた。


「突然ボコボコにされて帰ってきた次の日には、カタギに戻る、オソレザンに行って修行する、でしょ? 事情を知らないなりに、私がシャーマンキングに連れ去られたとでも思ってたんでしょ。アイツは父っちゃと母っちゃにも無断で家を飛び出して、歩いて歩いて歩き通してオソレザンに来た。嘘バレバレの顔と声で死霊術師になりたいんです、なんて言って」


そういうことか。

レジーナは意外に姉思いであるらしいオーリンの顔を思い浮かべた。


「んで追い出された。いくらなんでもアイツをこれ以上私につき合わせるわけにはいかなかったからね。挫折したアイツは今度は冒険者になるっていって王都に出ていって、一度もアオモリに戻って来なかった――」


トキはそこで寂しく笑った。


「小さい頃から変わらないわ、ホント。甘ったれで、痩せっぽちで、ヒョロくて、内弁慶で、その癖にじょっぱりで――」

「あ、じょっぱりは知ってます。ものすごく強情ですよね、あの人」

「そうなの。弱い癖にね」


トキとレジーナは顔を見合わせて笑った。

ひとしきり笑ってから、トキは顔を上げた。


「わかってんのよ、アイツが七年もアオモリに帰らなかったわけ。いつまでも私に甘えてちゃダメだって思ったんでしょ。自分で何もかも出来るようにならなきゃ、強くならなきゃ、ってね。それで地元に友達を残してそれっきり――」


トキは少しだけ眉間に皺を寄せた。


「全く、アイツには悪いことしたわ。地元の友達を裏切らせるようなことをしたのは、実は私が荒れてたからなのかもしれない。いいや、きっとそうよ。私がああでなければ、アイツはまだアオモリにいられたのかもしれないわね」


しばらく、沈黙が落ちた。

既に太陽はその下端を地平線に触れさせている頃合いだった。

ふうっ、とトキは何かを吹き散らすかのように嘆息した。


「でも、そんなに後悔したもんじゃないかもしれないって安心もしたわ。何しろ、あんたたちがアイツの側にいてくれてたからね」


トキはレジーナを見つめた。


「一人はアイツの言葉が完璧に通訳できる人で、もう一人はなんでなのかズンダー大公家のお姫様。ちょっとビックリしたけど、色々事情があってそうなった……そうでしょう?」

「え!? イロハのこと知ってたんですか!?」

「知ってたんじゃない、訊いたの」

「訊いたって誰に?」

「左肩の後ろにいるあの子のお母さんに」


ニヤ、とトキは笑った。

とにかく死霊術師という人々に対しては、常人はなんらの隠し事も出来はしないらしかった。


「まぁまた失神されたら敵わないから言わなかったけどね。あのズーズー弁が取れないのは不安だけど、まぁあなたがいるから大丈夫だってわかったし。それに……」


トキはそこでレジーナを見つめた。

えっ? とその視線に少し戸惑うと、トキは意味深な口調で言った。


「それにまぁ、オーリン自身もなかなかあなたのことを気に入ってるっぽいしね」


その一言に――レジーナはぽかんとしてしまった。

ぽかんとしてしまってから、静かに顔が熱くなり始めるのがわかった。


「オーリン先輩が、私を……ですか?」

「そりゃそうだよぉ。アイツが女の子とあんなに普通に話してるのあんまり見たことないし。よっぽど心を許してるんだなって。そしてあなたもまんざらじゃない、そうなんでしょう?」

「よっ、よしてくださいよ……!」


レジーナは慌てて首を振った。


「そんなまさかオーリン先輩が私みたいな馬の骨を気に入ったりなんか……! あの人とはただのパーティメンバーですって! そんな私、あの人とどうこうとかまだ全然考えてないし……!」


必死になって否定すると、トキが意味深な視線でニヤニヤとレジーナを見つめた。

優しかったけれど、何もかも見通すその目に、レジーナは再び思い知った。

ああ、やっぱり。死霊術師の前では隠し事はできないんだ。

いや、これは多分、トキが死霊術師だからではない。

それは女同士だからこそわかるもの――。


真っ赤になって小さくなっているレジーナをひとしきり見つめたトキが、さて、と雰囲気を変える一言を発した。


「そろそろ日も暮れるわね。私も宿に行かなきゃ。悪いけどここでサヨウナラしよっか、レジーナちゃん」


えっ? とレジーナはその言葉に驚いた。


「じゃ、じゃあオーリン先輩に一声かけてから……」

「あー、いいいい」


トキは苦笑顔でひらひらと掌を振った。


「いいよいいよ、アイツとの挨拶はさっきやったよ。もうお互い近況報告は済んだしね。畏まった挨拶なんていらないよ」

「でも――」

「それに、私がそうしたいって思っても、アイツはそうは思わないわよ。妙な里心もつけたくないからさ。あなたからよろしく言っといて。それで十分」


トキはさっき死霊術師たちにそうしたように、ニカッという感じで笑った。


「私たちは姉弟だぜ。水臭い言葉なんかいらねぇよ」


なんだかカッコつけてそう言ったトキは、二本指を立てて額に当て、敬礼とともに歩き出した。

ああ、この人はやっぱりアオモリの人だ。レジーナは妙に感心した。

アオモリの人だから、強情を張って、久しぶりに再会した弟と挨拶しないで別れるつもりなのだ。


すたすたと雪駄の音を響かせて去ってゆくトキに、レジーナは思わず呼びかけた。


「あの、トキさん!」


随分迷った上で、思い切って質問することにした。

はたと、トキが歩みを止めた。


「最後に聞かせてください! あの、さっき言った私の因果がおかしいって、あれはどういう意味だったんですか?」


トキは振り返らないままだった。

レジーナはなおも質問を重ねた。


「私、一度死んでるって……! それもわけがわかりません! 私、色々と普通じゃないんですか? トキさんはなにか私についてわかったんでしょう? 聞かせてください!」


しばらく考えをまとめるように沈黙してから――。

トキは肩越しにレジーナを振り返った。




「そうね――レジーナちゃん。一言で言えば、あなたにはなにか人と違う力があるのかもしれないわ」




はっ、と、思わず息を呑む程に迫力ある言葉と表情だった。

トキの目が、真実、高名な巫女のそれになってレジーナを見通した。


「わかったことだけを言わせてもらうなら、多分、あなたは一度どこかで確実に死んでる。因果の鎖が一度断ち切られ、再び繋がれた痕跡がある――私に視えるのはそれだけよ」

「それって、それって、一体どういう――!?」

「それ以上は私も聞かれても答えられないわね。とにかく、あなたの運命の因果は普通のそれじゃない。いっぺん死んだ人間が生き返るなんて話は死霊術師じゃなくても訊いたことはないでしょ? ありえないことがかつてあなたに一度起きた。起きてはならないことがね」


しばらく、鷹のように鋭い目でレジーナを見つめていたトキは、それから一転、安心させるような微笑みを浮かべた。


「でも、今のあなたは幽霊でも亡霊でもない。それがわかればいいじゃない。今の時点ではそれ以上心配することはないわ」

「でも――!」

「ほら、冒険者がそんな顔するもんじゃないわ。それに、よく考えたら面白いじゃない?」


面白い?

意外な言葉に絶句しながらレジーナはトキを見つめた。


「冒険者は好奇心とお金とを求めて自由に冒険する――ならあなた自身がひとつの謎、未知の神秘そのもの。冒険者なら謎の答えは自分で探し求めるもの、そうでしょう? あなたが神秘であるなら、あなたこそが冒険者であるあなたへの、神様からの贈り物――そういうことよ」


未知――そんな言葉で片付けられるものなのだろうか。

自分は普通ではない、人とは違う……それは本当にいいことなのだろうか。

確かに冒険者は未知とか神秘とかいう言葉が大好きな人種ではある。

だけれど――その神秘が自分自身だったら? 

その時は冒険者として喜ぶべきなのだろうか、それとも一人の人間として恐れるべきなのだろうか。


悩み、俯いてしまったレジーナの頬に、ぴとっ、と何かを押し付けられた。

なんだ? と思って目だけでそれを見ると、入り口のお土産屋で売っていたポーション――血帯びた(ブラッディ)ドリンクだった。


「頑張りなよ、レジーナちゃん。これからアイツと一緒にアオモリを目指すんでしょう? きちんとスタミナないと務まらないぜ」


これはその餞別だ、というようにトキは微笑んだ。


「これからあなたはこのヴリコで、アオモリで、東と北の辺境で、いやもっと長い間、色々な苦労や困難を経験する。そのときに必要なのはスタミナだよ。どんなことがあっても笑って顎を上げ続ける気力と体力、それが重要。困難を前にして一番必要なのは勇気や度胸じゃない。意地よ。じょっぱって行きなさい」


じょっぱる――なんだか、この姉弟を象徴するような言葉だと思った。

思わずポーションを受け取ると、トキは満足したように微笑んだ。


「じゃあオーリンによろしくね。あばよ」


なんだか景気のいい挨拶とともに、トキは軽やかに去っていってしまう。

そのスッとした背中を、レジーナはいつまでも目で追いかけた。


アオモリ一の暴力女、すべてを見通す死霊術師、人の苦しみを癒す慈母、高名なる流浪の巫女――。

目まぐるしく変化し、とても一言では表せない人となりに、その圧倒的な人生経験を滲ませた女性。

一緒に過ごした時間は半日にも満たないのに、なんだか数年間も付き合いを深めていた気すらした。

そう思うとなんだか別れ難くて、レジーナは思わず「トキさん!」と再び呼びかけてしまっていた。


トキが足を止めた。

レジーナは大声で訊ねた。


「私たち――またどこかで会えますか?」


トキが振り返って、にやり、と口の端だけで笑った。


「この辺境を旅してれば、またいつか――ね?」


トキがそう言った途端だった。

この世に消え残っていた太陽の残光が、遂に山陰に消えた。


途端に、トキの背後にゆらりと影が立ち昇り、渦を巻いて――やがてこちらを見つめる一人の男性の姿になった。

はっ、と息を呑むと、渋い口ひげを蓄えた彫りの深い男性が、まるで寄り添うようにトキの背後に立ち、涼やかな笑みをレジーナに向けていた。


この人が、この亡霊が、トキの旦那である男性なのだろう。

なかなか彫りの深いイケメン――その紹介に間違いはないな、と思ったレジーナは、思わず笑ってしまった。


「イケメンですね。口ひげが渋くてカッコいいです」

「だろ? うまくやったわよ、私もね」


あんたも上手くやんなさいよ――。

そう言ったトキはもう振り返ることなく、カワラケ地獄の出口へ向かって歩いていった。


レジーナはしばらく、嵐のように到来し、嵐のように去っていったトキの印象を目の中に追った。

なんだかよくわからないけど凄い人だった――レジーナが思わず笑ってしまった、その途端だった。


「れ、レジーナ……! 今のは……!」


震える声が発し、レジーナは声のした方を見た。

どれだけバヴァヘラが気に入ったのだろうか、両手に氷菓子を持ったイロハが、カタカタと震えながらトキを見ていた。


「み、見てしまった……見てしまった……! あ、あんなにハッキリ視えるものなのか、幽霊って……!」

「何を震えてっけなエロハ。あれは()の兄貴だど。あんまり怖がってくれんなってさ」


オーリンが苦笑しても、イロハの震えは止まらなかった。

顔色を失ってぶるぶる震動するイロハの頭を玩具のようにぐりぐり撫でてから、オーリンはカワラケ地獄を去ってゆくトキの背中を遠くに見つめた。


「姉ぢゃん、何が喋ってらったが?」

「いいえ何も。それにしてもお互い別れの挨拶もしないなんて、先輩もトキさんもじょっぱりですねぇ」

「なもだね。あの姉ど()を一緒にすんな。()はあったな乱暴な(きかねぇ)強情っ張りでねぇど」

「本当にそうですかね? そっくりだったように思いますけどね」


思わずニヤニヤと笑うと、オーリンは不貞腐れたように頭を掻いた。

全く、実際は意外なほどに姉ちゃん子である癖に、この姉弟はどうも素直ではない。

よく見ればそっくりといえる笑い方の癖や照れ方も、なんだか今は微笑ましかった。


「さて、ここが百鬼夜行さなる前に俺たち(わだ)も宿ば取るべさ。エロハにひっくり返られればまいねがらな――」


はい! と元気に返事をして、レジーナはオーリンとイロハに歩み寄る一歩を踏み出した。

ちゃぷん、と、手の中に握った血帯びた(ブラッディ)ドリンクが小さな水音を立てた。




「たげおもしぇ」

「続きば気になる」

「まっとまっと読まへ」


そう思らさっていただげるんだば、下方の星コ(★★★★★)がら評価お願いするでばす。

まんつよろすぐお願いするす。



【VS】

最近、更新が滞っており申し訳ございません……!

原稿作業に加え、忌々しいことに仕事が忙しく、

なかなか更新作業がはかどりませんでした。


これからは今作の書籍化作業もやってきますので、

どうにも思うような更新スピードが保てなくなるかも知れません。

何卒にご了承くださいませ。

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『じょっぱれアオモリの星』第1巻、2022年12/28(水)、
角川スニーカー文庫様より全国発売です!
よろしくお願い致します!
― 新着の感想 ―
なんやかんや言って認めてあげてるオーリンさん、いい男やなあ〜
[良い点] 毎度沁みる話だぜ
[良い点] トキ姐さんかっけぇっす
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