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オッリョオオオア!(あら、久しぶり!)

ふわっ――と、身体が重力から解き放たれたような浮遊感の後。

一瞬でも重力を忘れていた身体に、ずん、と重みが戻ったような気がした。

足の裏に地面の感触が触れた途端、物凄い気持ち悪さが食道を這い登ってきて、レジーナは思わず地面にしゃがみこんだ。


「うぇ……き、気持ち悪い……!」

「おい、大丈夫(けね)が。ホレホレ、ちゃんと立って深呼吸ばせ。そせば楽になるびょん」


そう言われて、二、三回深呼吸すると、ようやく気持ちが落ち着いてきた。

レジーナはまだぐらぐらするこめかみを叩きつつオーリンを見た。


「せ、先輩、まさか瞬間移動まで会得してるなんて……それもアオモリでは当たり前なんですか?」

「ん? まぁそんだべな。……それより見ろでば。まんづ酷い(しんでぇ)な、こいづは……」


オーリンに促され、レジーナは目の前の光景を見た。

さっきの冒険者たちがフェンリルを見たという北の村は、見るも無残な有様だった。

家屋は引き裂かれ、人気のない街には引きちぎられた木っ端や石塊が散乱し、石畳さえも引っ剥がされている。


「これは……!」


思わずレジーナも息を呑んだ。

もともとこの北の村は北方に通じる街道沿いの宿場町で、王都を訪れる人々の憩いの場所だった。

もちろん宿場町ということで衛兵の数も少なくはなく、百戦錬磨の冒険者たちが逗留している場合も多い。

そんな街が、これほど一方的に破壊されるとは――レジーナが呆然とその光景を見ていると、天地を揺るがすような咆哮が街の奥の方から轟いた。

思わずうわっと耳を塞ぐと、メリメリ……という音とともに、整然と並んだ向こうの家屋の一棟がいとも簡単に引き倒されていった。


あっちだ(あっつだ)! ついで来っ!」


オーリンが駆け出し、レジーナもその後を追う。


しばらく駆けると、村の広場らしい場所に出た。

瀟洒な石造りの噴水が名所であった広場は、今や噴水など跡形もなく砕かれて踏み潰され、惨たらしく黒土に塗れていた。


「こ、これは酷い……!」

「おい、余所見すてんでねぇど! 来たでぁ!」


オーリンの切羽詰まったような一喝に、レジーナは前を向いた。

同時に、ズシン、という足音が聞こえてきて、レジーナは息を呑んだ。


「は――?」


メリメリ、バリバリ……と、家屋が棟ごと引き裂かれる音とともに土埃が巻き上がり、その中から、にゅう、と立ち上がった物がある。


白いフサフサの、動物の尾のような長細い物体。

あれは――まさか尻尾か? それだけで人の背丈ほどもあるように見えるが――。

レジーナの目がその巨大さを測りかねた瞬間、「それ」は唸り声とともに現れた。


レジーナの背筋に、冷たいものが走った。


なんだ、これは。

これがフェンリルなのか?

これは――あまりにも、あまりにも巨大すぎる――!


そのフェンリルは、大型の個体などという生易しいものではなかった。

それ自体が一つの山であるような体躯に、オオカミのそれというよりは恐竜のような牙が並んだ桃色の口腔。

グルルル……とその喉が唸り声を上げる度に、周囲の空気がぶるぶると振動するのがわかる。

まるで妖しい満月のような右目が色濃い殺気を湛えて光る――それは隻眼の、超特大のフェンリルだった。


血の気が引いた頭が、先程とは違う理由でくらくらした。

思わず、やってきたフェンリルを唖然呆然と見上げた、そのとき。

満月が如くに輝くフェンリルの目が――足元にいたオーリンとレジーナに落とされた。


途端に全身の毛を逆立て、威嚇の唸り声を上げたフェンリルに――レジーナは一瞬だけ冷静さを取り戻した。


レジーナはオーリンの背中をどついた。


「おっ、オーリン先輩! こっ、これは無理です! 逃げましょう!」


レジーナは思わず知らず「逃げる」と口にした。

大きいと言ってもせいぜい牛程度を想定していたレジーナにとって、目の前に現れた隻眼のフェンリルの巨大さは完全に想定外だった。

咬まれるどころか、踏みつけられただけでタダではすまなさそうな巨大な獣――敵うわけがない、とレジーナの頭の中の警報が鳴り響いた。


「せっ、先輩聞いてます!? 逃げましょう! この大きさはいくらなんでも無理ですよ! 先輩!」


レジーナが何度どついても、そのフェンリルを驚愕の目線で見上げたまま、オーリンはピクリとも動かない。

いけない、これはあまりの衝撃に完全に腰が抜けてる――! 

レジーナは半ば半狂乱でオーリンのローブを引っ張った。


「先輩! 何ポケーッとしてるんですか! こんなの相手するなんて、衛兵どころか大砲が要りますよ! 逃げてこの事を急いで報告しないと……あああああ!!」


半ば半泣きの声でオーリンを引っ張っていた、その時。


オーリンがレジーナを無視し、一歩、フェンリルに近づいた。


え――? 逃げ出すどころか歩み寄ったオーリンの行動に、レジーナも一瞬、恐怖を忘れた。

オーリンはそのまま、一歩、また一歩……とフェンリルに近寄ると、唇を震わせ、そして、信じられないものを見たというように、呻いた。




「その左目の傷ば……! まさがお前(おめ)、ワサオ……ワサオでねぇんだが……!」




こごまで読んでもらって本当に迷惑ですた。


「おもしぇ」

「続きば気になる」

「まっとまっと読ましぇ」


そう思らさっていただげるんだば、下方の星コ(★★★★★)がら評価お願いするでばす。

まんつよろすぐお願いするす。



【VS】

今回のサブタイトル、わんつかおがすぃんでねぇがど思らさったふともえだど思うども、

アオモリでば突然の再会のときば、余計な言葉ば喋べねで「おっりょおおおあ!!」だけで通じるらしいす。

嘘がホントがはおらさはわがんねす。

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『じょっぱれアオモリの星』第1巻、2022年12/28(水)、
角川スニーカー文庫様より全国発売です!
よろしくお願い致します!
― 新着の感想 ―
[良い点] へんりるだって言ってるのに 脳内は超巨大わさおのイメージで塗りつぶされています… 毛皮に埋まりたい。 [一言] おもっしぇ!!
[良い点] ワサオ転生!? [気になる点] わいは~ [一言] もっしぇ!
[良い点] 自分、津軽衆ですがおっりょおああああ!で伝わりますwwwタイトルでクッソ笑ったっすwww
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