世界はもう始まっていた
前回までのあらすじ〜
何だか自作系ゲームみたいに始まった私こと創造神の冒険譚!
世界を作るはずが謎の幼女『ウンエイ』さんにあらぬ設定盛り込まれてできた世界?に放り出されてしまった!私の運命や如何に?!
や、そもそも何でウンエイさんに設定盛り込まれてるの?実は編集さん?編集さんなの?!
そこは見知らぬ天井で、壁も床も真っ白な世界。何も無い、何一つ無い、それが正しい。正しいはずなのに正しくはない。何故なら壁も床も天井も存在し、白い台座にこの身が丁度収まるサイズの屋形船が存在している。
文字通り死んだ魚の目をした私がギョロリと目を動かせば驚き飛び退く太刀魚のような直立姿勢を見せる男女?の姿。体型はタイのようなブリのような…どこからどう見ても魚である。
冷静を装って近づいて来たのは男の方で、人間のような手足を伸ばしながら歩いて来た。
「おぉ、目を覚ましたぞ」
「お帰りなさいチュウニ。お父さんとお母さんがわかる?」
心配そうに女の方も男の後に続いて近付いて来た。
「神降ろしの祭壇で突然御造りになってしまうだなんて、お母さん心配したんだから」
目覚めていきなりの超展開か?魚の男女は私の両親と言う設定らしい。
「さぁ、これを。この身を食べればきっと身体も再生するはずだ」
そう言って父親が何かのお刺身を1切れ私の口に放り込んだ。見た目は白身魚のようでやや硬く青魚のような臭みもある。美味しそうで不味いと言う誰得なお刺身だ。
飲み込んだ所で私の視界がぐるりとあらぬ回転を見せて飛んだ。
「「チュウニ!」」
所謂幽体離脱と言う物だろう。今まで見上げていた両親を私は見下ろしている。そしてその慌てふためく両親の視線の先には…ってあれが私?!どう見てもタイのお頭付き御造りだ。そう言えば母親がそんなような事を言っていたな…
「……」
物言わぬ御造りが妙な音を立てて軋み始める。ガタガタと局地的な地震に襲われたかのように動く台座。木製の小舟が水も無いのに波に乗るように動き出して落ちた。私の視界もまたぐるりと回転して白い天井を見ていた。
ボーッとする頭を振ってもう1度天を仰げばそこは確かに天井で、もう自分と思われる御造りは無かった。
あぁ、このどうしようもない展開並べ立てて何すれば良いのだろう。世界を創る?なろう系主人公?神だって?蓋を開ければ御造りスタートのどう見ても雑魚系モンスターじゃないか。どーすんのよこれ。
「チュウニ…?本当にチュウニなの?」
「おぉ、おぉ!何と言う奇跡!始祖ウロボロスの再来か!」
えーと、突然何?ついていけないんですけど。何が起きたの?
「時は白紙の時代に遡る」
わー。状況は把握したいけど何か語り始めちゃったよ。そんな昔話風に言われても歴史とか聞いてないんすけど。
「この世界にまだ何も存在していなかった頃…」
でたー。ゲームとかのお約束、主人公無視ですね分かります。口挟む隙間無いわぁ。
「世界に色を付けた存在が居た。その存在こそこの世界の神。しかし神は我が一族にだけこのような醜い姿と苦難の運命を与えたのだ」
あ、自覚あったんだ。醜いとか…
「我らが始祖ウロボロスはそれは美しい人魚であったそうな」
美しい?突然何?人魚?一族てどう見ても魚だよね?!ウロボロスって尾を噛んだ蛇の印象なんだけど?無限ループ的な?
「ウロボロスは生まれた時に自らの尾を噛みちぎり進化したと言われている。神の力を宿していたとも言う」
うわー始祖様すんげぇ。ワナワナプルプル私置いてけぼり〜。できたばかりの世界じゃなかったの?何その昔から存在してますアピールは…もしかしてそのウロボロスさんがラスボス設定あったりする?この世界の方向性まるで見えないんだけど、ウンエイさん私に何させる気?!いやそれより私はウンエイさんがラスボスだと思ってたんだけど?
「ウロボロスは今も生きていると言われているが定かではない。ただ1つ言える事は…」
あれあれぇ〜?何だか父親の目が獲物を狙うハンターのようになっているぞ?母親もとても黒い笑顔を貼り付けてとーっても怖いんですけどー?
「お父さんがこんな話をしている意味、分かるでしょう?私達もね、この呪われた醜い姿とさようならしたいの、わかって頂戴…」
そう言って母親が取り出したのは刺身包丁で…ってどこから出したのそれ!?
突然の展開について行けないがそんな事を言っている場合じゃない!分かる!私にも分かるよ!何が何だかさっぱり分からないけど、今はとにかく逃げないとおろされる!捌かれる!
「ねぇ、どうして逃げるの?」
スパァンと下された包丁が床に落ちていた小舟を真っ二つに割った。
ギャグかと思ったら突然のホラー?!スプラッタとか笑えないんですけどーっ!!!
黒い笑顔にどす黒いオーラを纏った母魚がジリジリと包丁片手ににじり寄ってくる。その隣で荒い息をしながらニタァと笑う父魚…変鯛デスネ。
冗談言ってる場合じゃなくて逃げないととにかくマズイ。コロコロと床を転がりながら母親の凶刃を避けるが立ち上がれない!足を見ると私の腹から下は魚だった。文字通り人魚だ。
水中なら早そうだが生憎と水など無く、足の速さは二足歩行している両親に分がある。あぁこの足がせめて人間の足ならぁーっ!!
内心叫ぶと下半身がぬるっと変化し、人の足になった。これでどこからどう見ても人間だ!鱗びっしりだけど!
驚いたのは両親で、その変化に一瞬動きが止まった。私はその隙に両親から飛び退き脱兎の如く逃げ出した。
あぁまさか旅立ちの瞬間が親に殺されかけて逃げるとか、無いわぁ。そもそもなろう系だよね?チート性能は?ピンチを救うヒーローは?!世界が皆んな敵みたいな世界嫌だぁぁあああ!!!
ありがちな滑り出しと訳のわからん展開で既に破綻している気がします…
世界を壊されないように頑張らなきゃいけないのに私が壊したくなってきましたよ全く。もう少し頑張ろう…