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アザー・スカイ ー死神と戦うエースー  作者: 嶺司
ジル・スレイヤ
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第5話 表と裏

翌朝。


恐れていたことが普通に起こってしまった。


「ななななな、なんでスレイヤ大尉が私の家にいるんですか!!」


ボブボブと枕で叩き起され壮絶な起床を迎える。


「いてて!バカ!俺の家だよ!」

「へ?」


顔を真っ赤にし目を点にして辺りを見回すアレイ、普段では想像できないとんでもないアホ面をしている。酒が抜け切ってないのか?かなり飲んでたしな。


「ホントだ・・・・・・、なんで大尉の家!?」


それはそれで騒ぎ出す始末、静かにしろ!このアパートには兵隊しかいないんだ、騒ぎになるだろ!


「覚えてないのか?」

「全く!」


ふふんとデカい胸を張る彼女、こら威張るな。


すると自分の着ている服がシャツ一枚な事に気が付き、テーブルに置いてある自分が着ていたはずの服を見つけると、胸と股を両手でシュバッと隠す。


「えっち!変態!セクハラ!」

「ばっ!お前が勝手に脱いだんだろ!」


酷い言われようだ、また枕で殴られる。


「一回落ち着いて思い出せ!」


枕を奪って攻撃の手段を無くす。

んー?と唸り首を左右に傾げて布団を肩まで被り考え出す彼女、それで思い出せるのか?

そして更に顔を赤くする。お、良かった思い出したか。


「わ、私、大尉のこと・・・・・・、ジルって呼んでました?」

「ああ、嬉しそうにな」

「ええぇっ!」


ワタワタと慌てる彼女、だんだん普段の姿に戻りつつあるが飲んでる姿もあれはあれで面白い、後が面倒だけどな。


「す、すみません、私・・・・・・」


さっきまでの勢いはどこに行ったのか、俯き気味になってしまう。


「まあいい、可愛かったから許す」

「え?」


二回も言ってやらねーよ。


「で、どうすんだ?そろそろ出勤の時間だが・・・・・・、その服で基地に行く気か?」


バーで着ていた時の服を広げてどうしよう、と呆然とするアレイ。


「大尉がお持ち帰りするのが悪いんです!」

「お前の家知らねーし寝てただろーがよ!」

「てか、何もしてないですよね!?」

「するかっバカ!」


また勢いが戻ってきた、静かにしろって、なんなんだ?全く。別に少々遅れてもいくらでも誤魔化せるが。


「もー!せっかくオシャレしたのに全然覚えてないとか最悪!!」

「え?」

「なんでもないです!」

「べふっ!」


キーっ!と頭を掻きまくり、今度はクッションを投げられ顔面に直撃する、朝から騒がしくてやってられん。


「一回帰ります!」

「ああ、適当に誤魔化しとくから」

「お願いします!」


いそいそと俺のシャツから着替えようとする彼女。


「・・・・・・おっと、悪い悪い」


何も考えずにその様子を見ているとギロッと睨まれ、慌てて反対側を向く。いやー、全くの無意識だったぜ。

しかし、着替え終わってその姿を見ると朝っぱらにそれはちょっと笑ってしまう。


「笑わないでください!」

「いや悪い悪い、可愛いよ」


口を両手で塞ぐもついついにやけてしまう。


「もー、変なこと言わないでくださいよ!」


また顔を赤くするアレイ、別にいじってる訳では無いが面白い奴だ。

そして「じゃ、お願いします!」と言い残して風のように俺の部屋を出ていき、嵐のような朝は突然静けさを取り戻した。


「さて、メシメシ」


そして俺はパンとソーセージを焼いて、軽く朝食を済ませた。



西クリンシュ空軍基地。


いやー、朝から大変だった。

午前の訓練までしばらく時間があるので、待機室で缶コーヒー片手にくつろぎアレイの出勤を待っていると。


「昨日はどうだったの?」


俺の椅子の背もたれに両肘を着いて、悪そうにニヤリと俺の顔の上で笑いながらレノイが話しかけてきた、そいえばこいつに助けを求めたんだったな。いつの間に待機室に入ってきたのか。


「どうもこうも、大変だったぜ」

「ふーん、結局お持ち帰りしたの?」

「お持ち帰りとか言うな、仕方なく泊めてやっただけだ」

「ふーーーーん」


なんだその顔は、疑ってるな?


「あんな酒癖の悪い奴と飲むのは初めてだ!酔って寝てる奴に手を出すよーな事なんてしねぇよ!」

「そっ、別にいいんだけど。じゃ、私は機体の整備があるから」


くそっ、いじりに来ただけかよ。ここはパイロットの待機室だ、整備員の来るところじゃないと思いはするも口には出さずシッシッと追い払う。


「どうしたんですか?」


そして、入れ替わるようにメイセンがやってきて俺の隣に座る。


「二言目には俺をいじりやがる」


あー、とメイセンはレノイの後ろ姿を見る。


「そいえば昨日はどうだったんです?アレイまだ来てないみたいですけど」


なんだ?お前もか?と思わず睨んでしまうと「なんでもないです!」とこいつは慌てて視線を逸らす。


「やけ酒、って奴だな」

「あー、いつもクールなのに珍しい」


やっぱりお前もそう思うよな、基地の中では表情に出さず鉄仮面、クールオブクールな奴なのに昨日今日は凄かった。まあ、アレがギャップと言うやつなのか、狙ってやってたらそれはそれで凄い。


「おはようございます」


お、社長出勤でアレイのお出ましだ、待機室のみんなに何事も無かったようにいつも通り無表情で挨拶をしている。


「別に普通ですね」

「おかしい・・・・・・」


すると、てくてくと歩いて来たのは俺の目の前。


「スレイヤ大尉、遅くなってすみません。午前はどのような予定でしょうか?」


いつものアレイ過ぎて逆に怖い、昨日の夜と今朝の姿を知っていたらどっちが本当の彼女なのか分からなくなる。


「あ、ああ、今日は国境沿いに飛行訓練だ、まだ時間あるから休んでていいぞ」

「わかりました」


どうなってんだ?と不思議な顔をして見ていると、アレイは俺の視線に気づいて首を傾げる。


「・・・・・・アレイだよな?」

「はい、何か?」

「いや、なんでもない・・・・・・」


あれー、幻覚でも見てたのか?同一人物とは思えない、こいつ双子なの?二重人格なの?訳がわかんなくなってきた。


「少し、シャトール中尉の所へ行ってきます」

「ああ、構わん」


俺の同期ガルのエレメント、アストロン隊二番機のミリア・シャトールの元へと歩いていく、あいつに何か吹き込まれたのか?怪しい・・・・・・。


椅子に座ったまま少し背伸びして二人が話しているのを遠目に見るが、変な様子は別に無い。


ラメイトさんや、アレイに比べたらシャトールは活発的で明るい女の子みたいな感じで、明るい金髪のショートヘアにパッチリ二重にグリーンの瞳が印象的だ。


なんか吹き込むとしたらあいつしか居そうにないが、そんなこと言ったらレノイだって怪しい。


「どうしました?」


難しい顔をしていたらメイセンに心配される。


「いや、なんでもない」


変な詮索はよしておこう、俺は残っていた缶コーヒーを一気飲みした。



午前の訓練の時間になる、死人が出たのに普段と変わらず訓練、変な感じだ。


訓練内容はただの飛行訓練でここから一旦北に飛んで、国境沿いを南西に沿って飛びライスヤード地区に少し入って戻ってくるだけ。


今回は機銃以外の武装はつけていない、変にフル装備だと訓練中だと言い訳が出来ないからな。


危険なのはライスヤード上空だが他国牽制のためにちょっと入るだけ、ミサイルも無いし何か来そうになったら逃げればいい。


《ーー管制塔からスカイレイン隊、AWACSのスターアイは指定空路を巡回飛行中だ、何かあってもすぐに探知できるだろう。スカイレイン隊は先に指示したとおり国境沿いを訓練飛行せよーー》


《スカイレイン隊了解、滑走路手前まで進出する》


駐機場に出ていた俺たちはエンジン出力を上げて誘導路を通って滑走路に向かう。


前にはこの基地上空でミサイル回避訓練の為に離陸待ちをしていた、F-2のクロー隊二機が先に滑走路に並ぶ。


《ーーこちら管制塔、クロー隊離陸許可、スカイレイン隊は滑走路手前で待機ーー》


《クロー隊、離陸する》


ノズルから赤い炎を吐いてF-2が順次離陸していき、続いて俺達も滑走路に並ぶ。


《ーーこちら管制塔、スカイレイン隊離陸許可、安全になーー》


《スカイレイン隊、了解、離陸する》


そして俺たちも大空に舞い上がった。

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