エピローグ
永遠の紛争の地
南方諸国、レバノバジギスタン
ブルー隊隠れ家
スマホをテーブルの上に置くと、剣くんは天を仰ぎ奥歯を噛み締めてどこか遠くを見つめていた。
それを見て、さっきまで暴れていた啓ちゃんも私の腕の中で動きを止める。
「ただ、ただあいつと一緒に飛びたかっただけなのにな」
彼は笑っているが泣いている。
「翼くん、なんだって?」
私は不安がっている啓ちゃんの手をギュッと握る。
「あいつは来ない・・・・・・」
「・・・・・・でもなんで、守りたい人ができたって!」
「白崎が死ぬ事で守れる命もある、それが言いたいんだろ。多分ね」
「死ぬ・・・・・・?」
静かに語る剣くんに私はそれ以上何も言えず、部屋に沈黙が続く。
「なんで、なんで俺はあの時一緒に逃げてこなかったんだ・・・・・・。なんで俺は一人で逃げてきたんだ・・・・・・」
自分を責め、ただ泣き続ける剣くんを慰めることも出来ない私は内唇を噛み続ける。私は泣いちゃダメだと思ったから。
「助けに行かないんですか?剣くんらしくありません」
この子はホント、肝心な時に空気が読めないんだから・・・・・・。
「もう遅いんだよっ!」
ドンッと机を叩き、剣くんの怒鳴り声にビックっとした啓ちゃんは私に抱きつく。
「考えてみろ、俺は兄さんから白崎の携帯番号を聞いた、ってことはローレニアのスパイはあいつの居場所を把握している・・・・・・。俺も盗聴されてるかもしれないから変なことは言いたくなかったが、時間がなかった・・・・・・」
確かにこの間ローレニアを去る時に、剣くんはお兄さんに翼くんの携帯番号を教えて貰っているのは知っていた。だけど、それなら翼くんもそれに気がついてるに違いない。
「翼くんだって凄腕のスパイなんでしょ?その気になればどうにだって・・・・・・」
私の意見に剣くんは首を横に振る。
「白崎翼はもう死んでる・・・・・・」
「そんな・・・・・・」
私は信じたくなかった。
※
西クリンシュ基地から一キロほど離れたとあるホテル。
サイレンサーで消音された銃声がこの部屋だけに響く。
「あっちゃーー、即死しなかったかな?サイレンサー付きは慣れてないんだよねぇ」
まあいい、長居は無用だ、ボクはあと片付けを始める。
毎日毎日不用心に平日はほぼ同じ時間に同じ場所に現れて、あいつ自分が元スパイだって忘れてたのかな?
僕が張り込んでる間に結婚なんかしちゃってさ、何がしたいのか訳が分からないよ。
ローレニア史上最強のスパイというの名を欲しいままにしてきたのに、廃れたもんだ。もっとこう、追って逃げてっていうのを期待してたのに、面白くない。
しかしもう終わったこと、銃を分解しアタッシュケースに収め撤収だ。
「まあこれもボクのツルギを虜にした罰だ、せいぜい苦しんで死ねばいいさ」
よしっ、こんなもんかな?忘れ物なしっ!
仕上げに銃の発射ガスを分解するローレニア暗部特製の、特殊な液体を辺り全体にスプレーして終わりだ。
最後に双眼鏡でアイツの姿を確認するとその周りはすごい血溜まりだ、あれは助からないだろう。いや、もう死んでるかな?
「じゃあねぇ、シロ〜」
もうボクはただの旅行者、何事も無かったようにロービーに降りてチェックアウトを済ませて、ホテル前に待機させていた仲間の黒塗りSUVの後部座席に乗り込む。
《あ、サヤ兄さん?作戦終了、今から帰るねぇ》
座席に備え付けてある衛星電話を使って、雇い主でありエレメントであり従兄であるサヤ陛下に直接報告する。
《随分時間が掛かったな、そんなに警戒されてたのか?》
んー、1ヶ月ちょっと?暗殺なんてそんなもんじゃない?焦ったところでいい結果なんてない。
でも、一応警戒して途中経過とか全く報告しなかったし、そりゃ作戦がちゃんと進んでるか気にはなるか。取り越し苦労だったけど。
《え?全然。シロが呑気にしてたからボクも呑気にしてた》
《お前なぁ、そういうとこだぞ》
呆れられちゃってるけど、ボクって元々そんなんだしー。サヤ兄さんも理解している、はず!
《いいじゃんいいじゃん、終わったことだしさぁー。終わりよければ全てヨシッてね。あ、ホテルとかの請求書、ガードナーに送っとくねー》
しれっと平日の朝以外ほとんど遊んでいた、いったいいくらになってるかな、怖くてボクは請求書は見れなかった。遊びすぎちゃった、テヘペロ。
《ああ、わかった》
あ、気になることがひとつあったんだった。
《エレメントの女は殺らなくて良かったの?》
どうせシロを殺るならついでにとも思っていたけど、従兄さんに止められていた。まあ、目の前で大切な人が死んだら自殺とかしそうだけどさ、一応理由を聞いとこうかな。
《必要ない》
《なんでー?あんな周りのヤツが死にまくって死なないような奴が何もしないとは思わないけど?》
《お前も女を撃ち殺したくはないだろ?》
《えー、別にー》
僕は殺せと言われれば誰でも殺す、そんなこと気にするような従兄さんではないし、何を考えているのだろう?
《いつかツルギがどうにかするさ》
《ツルギが?》
《ああ》
これ以上聞いても教えてくれそうにないか。まあ従兄さんの事だ何か考えがあるのだろう、変な詮索はやめておこう。
《気をつけて帰ってこいよ》
《はーーーい》
電話を切ろうとした時、ふと思った。
サヤ従兄さんがボクのこと心配するなんて珍しいな。
まあ、そんな日もあるか!へへへと笑って電話を切って瞬間。
「止めて!!」
気がつくのが遅かった。
光と轟音と爆風を伴って目の前が突然爆発し、ボクの視界は光りに包まれる。
「クソッ・・・・・・、シロの、野郎・・・・・・」
身体中に今まで経験したことの無いような激痛が走り、そこからはよく覚えていない。
※
1ヶ月前、カフェ・スカイ
「ニグルム〜、電話だよ〜」
「誰からですかー?」
家の裏で洗濯物を取り込んでいたらお姉ちゃんに呼ばれた。
僕に電話なんて誰だろう?カゴをそのままにお店の中に走る。
「学校の先生」
「なんだろう?」
「私が洗濯物取り込んどくね」
「あ、ありがとうございます!」
カフェのカウンター奥にある保留になっている電話の受話器を取ると、お姉ちゃんは洗濯物を取り込みにお店兼自宅の裏側に行ってしまい、僕だけになる。
《はい、ニグルムです》
《おお、本当にいた!ニグルム元気?》
え?この声は?
《お兄ちゃん!?どうやってここを!?》
《もう、お兄ちゃんはやめてって》
あまりの突然のことにそう呼んでしまった。孤児だった僕をスパイ養成所で育ててくれた先輩、いや、師匠のシロさんに間違いなかった。当たりを見回してコソコソとしてしまう。
《ツルギから居場所は聞いてたから、あとはタイミングだったんだけど、なかなか暇がなくてさ!》
聞いてたって、ツルギはグレイニアに行ったっきり音沙汰無しだ、どうやって僕がここにいるって・・・・・・、もしかして!
《ソラ・・・・・・、ツルギと一緒なの!?》
沈黙してしまうお兄ちゃん。そっか・・・・・・。
《一緒にはいない、ごめんね》
《そう・・・・・・、ううん、大丈夫》
そりゃそうだよね。
《そうだ、何か頼み事?》
昔からよく音信不通になっていたお兄ちゃん、彼から連絡がるなら大概何かの頼み事だ。ツルギを逃がす時もそうだったし、過去にもいろいろある。めっちゃ大変な仕事で、責任重大なことが多いのがたまに傷だけど。
《察しが良くて助かるよ!さすが僕の一番弟子!》
《いやー》
ちょっと照れてしまう。が、その内容は責任重大だった。
《・・・・・・ヒナが僕の命を狙ってる、やり返して欲しい》
ヒナってあの第二王子で今は王家直轄部隊にいるあのヒナ?結構凄腕って聞いたことあるけど。それよりもやり返しってって・・・・・・。
《やり返しってってどういうこと?シロなら簡単に逃げれ・・・・・・》
《ハハハ、ホント、察しが良くて助かるよ!》
笑い事じゃない、なんで笑ってるんだよ、僕は全然笑えないよ・・・・・・。
受話器を持つ手が震える。
《死ぬ気、なの?》
《うん、僕が生きてると僕が困るんだ。でも、ただ殺られるだけじゃ面白くない、だからニグルムにね、協力して欲しくて。他に頼める人が居ないんーー》
《いやだ!いやだっ!!》
僕は彼が言い切る前に大声で拒絶した。
しかし、お兄ちゃんは続ける。
《僕はツルギの代わりに死ぬはずだった、でも色んな人のおかげてここまで生きることが出来た、好きな人もできた。もう、いいんだ》
何も良くない何も良くない何も良くない!
僕は涙が止まらずに過呼吸になる。
《泣かないでよ、僕は元々死んでるんだから》
死んでなんかない、お兄ちゃんは生きてる。まだ彼の人生は途中だ。
《じゃー、よろしく頼むね。ウイジクランのクリンシュって街にいるから》
《待って!》
電話を切られそうになって咄嗟に止める。
詳しい場所ぐらいその気になって調べればすぐ分かる、でも、彼は会ってくれないだろう、だから。
《なに?》
大きく息を吸い、涙を止めて一言。
《大好きだよ、シロお兄ちゃん》
《うん、僕もだよ》
プー、プー、プー・・・・・・。
切られちゃった・・・・・・。
まだ僕行くって言ってないじゃん、行かないといけないじゃん・・・・・・。
受話器を置き涙を腕でゴシゴシと拭いて、ふと振り向くとおじさんがいた。あ、どうしよう、何から説明しようかと目を俯かせ黙っていると、おじさんは何も言わずにミルクコーヒーを差し出してくれる。
「ありがとう、ございます・・・・・・」
貰ったミルクコーヒーを飲もうとグラスを口に近ずけると手が震えて上手く飲めない。
「ふー、終わった終わった、って、お父さん!ニグルム何したの!?」
洗濯物を慌てて座席の上に置いて僕の頭を撫でてくれるお姉ちゃん、別におじさんは何もしてないし、彼女の言葉におじさんは「何もしてないよと」優しく言ってコーヒーを挽いている。
僕は意を決してお姉ちゃんに言う。
「お姉ちゃん、おじさん、お願いがあります」
唇を噛んで彼女をじっと見つめると。
彼女は優しくギュッと抱きしめてくれて、耳元で呟いた。
「じゃあさ、ニグルムの秘密、教えてくれる?」
「・・・・・・」
僕の秘密。どこまで言ったらいいんだろう、信じてくれるのかな?
「貴方、誰なの?」
「それは・・・・・・、分かりました」
それから僕はカウンターにある、ツルギとシロが写る写真を手に取って僕は誰なのか、全てを説明した。
●
ウイジクラン共和国、西の街クリンシュ。
とあるホテル。
ヒナの行動はだいたい調べ尽くした。
彼は基地から約一キロ離れたホテルに1ヶ月ちょっと滞在、午前中はお兄ちゃんの行動を調べているのだろうホテルからは出てこず、午後になるとほとんど街に出て遊んでいた。
本当にお兄ちゃんの命を狙ってるのか?監視してるだけじゃ?そう思いたかったけど、お兄ちゃんがそう言ってるんだ、疑うべきではない。
「シロを殺られる前にターゲットを先に殺ってしまった方が楽なんじゃないか?」
「ううん、相手は王家直轄部隊、それに第二王子、それが出来たとしても後々危険だし。・・・・・・そう頼まれてないから」
「そうか・・・・・・」
今回は僕一人では来ていない、さすがに中学生の僕一人だと怪しすぎるからね、ローレニアスパイ時代にいつもお父さん役をやってもらってた強面髭面の先輩に事情を話して手伝ってもらっていた。
彼はお兄ちゃんとは面識はない、ローレニア史上最強のスパイって肩書きだけ知ってる感じた。
「でも、ごめんね。今回は特に報酬とか無いんだけど、無理に来てもらってさ」
「なぁに、可愛い息子の頼みだ、このぐらいいいってことよ。お前も生きてて安心したしな」
「ありがとっ」
本当の家族ではないんだけどね、子供らしくニコッと笑うと彼は僕の頭を撫でてくれる。
「お、動きがあるぞ」
カメラに写っているお兄ちゃんのアパートの玄関、そこで彼は誰かと電話しているようだった。
特殊な機械でその電波に入り込み内容を聞く。
これは、ツルギと話している?
レバノバジギスタン?
いったいどういう・・・・・・。
あ、そうか・・・・・・。
そうだよね・・・・・・。
サヨナラ、か・・・・・・。
話は終わったようには聞こえなかったが電話が切られた。
僕は俯いてしまい、先輩に背中をさすられるが、落ち込んでいる場合じゃない。
「やるなら今日だ、急ごう!」
「うぉ、マジかよ!」
根拠はないが直感がそう言っている、急いで荷造りを始める。
ヒナはお兄ちゃんを狙撃するつもりだ。そして、それが終わったら逃げそうな道の予想はあらかたついている、あとはそこに先回りをするだけだ。
「僕の、勘違いだったらいいんだけどね・・・・・・」
急いで撤収の準備を進めた。
○
車に乗ってヒナが逃げてくるのを待つ。
99%の確率でやつはここの道を通る、僕に偽装なんて通用しない、通った瞬間ドカンだ。
狙撃ポイントもだいたい目星をつけていたし、三箇所のカメラ映像が前座席の後ろにつけられたモニターに映し出される。
逃走経路にもカメラを設置済みだ。
一箇所目、家を出てすぐの道は何も起こらず。
しばらく経って二箇所目の花屋の前もセーフ。
そして本命の三箇所目、基地の中の慰霊碑前。
何も起こらない事を祈っていたけど。
お兄ちゃんは倒れた。
僕は泣かない、お兄ちゃんに託された任務を全うするまで。
ターゲットがホテルから出てきて車両に乗り込む、予想通り。
その車両は大通りをそのまま進むことなく、すぐに脇道に入る、予想通り。
そしてまた違う大通り、この通りに出てきた、予想通り。
お兄ちゃん直伝の考察力を舐めてもらっては困る。
「来たぞ、ドンピシャか、毎回恐れ入るよ」
「うん」
僕はスイッチを握りしめる。
「シロを、シロを・・・・・・」
ターゲットの乗っている車両は何かに気づいたのか、急ブレーキをかけるがもう遅い。
「お兄ちゃんを返せよっ!!!!」
カチッ
ドゴーーーンッ・・・・・・!!
地面が爆発し目標車両は爆発横転、ターゲットの死亡なんか確認してる暇はないし、生死はどうでもいい、殺せとは言われてないから・・・・・・。
「よしっ、逃げるぞ!」
「うん・・・・・・うん・・・・・・」
涙で前が見えないがすごいスピードで逃げているのが分かる、爆発に混乱して逃げていると思わせればそれでいい。あとは空港のチャーター機に乗って家に帰るだけだ。
「お兄ちゃん・・・・・・」
本当に死んだのかと疑いたかった、あのヒナが外すとは思っていなかったが、カメラで見えた出血量では助からないだろう。
「サヨナラ・・・・・・」
お姉ちゃんから焼き増ししてもらった写真に移写る彼を、見つめることしか出来なかった。
※
ローレニア王国、サヤツィオ王宮。
《ヒナが重症?どういうことだ!?》
ガードナーからの緊急電話でそれを聞いて急いで執務室のテレビをつけると。
『繰り返します、ウイジクラン共和国西の街クリンシュにて爆発事故が起こり走行中の車両一両が巻き込まれ大破、三名が死傷しました。また、これに関係するのか今のところ不明ではありますが、空軍兵士一名が狙撃され意識不明の重体です。地元警察と軍はテロの可能性が高いとして厳戒態勢をーー』
「あのバカ、しくじったか・・・・・・」
リモコンを机の上に置いてゆっくり椅子に座る。
《現在確認中ですが連絡が取れる状況に無く・・・・・・》
《わかった、そっちはそっちで続けろ》
《御意》
受話器をポイッと投げて元の場所に戻す。
ヒナの野郎、心配した途端これだ。シロが簡単に死ぬわけないだろうに、手を抜きやがって。
まあそう言うヒナも直轄部隊の隊員だ、簡単には死なない、ガードナーに任せておこう。
しかし、せっかく助かった命、まさか無駄にするとはな。あいつの考えていることは最後まで分からなかった。
はぁー、とため息を吐いて窓の外を見つめると。
バーーン!と執務室の扉が勢いよく開いた、結構重たいと思うんだが。
「なぁ、シール。もっとおしとやかにと言ってるだろ」
スカイブルーのロングヘアをなびかせ、飛行服のままいつにもなくズカズカと中に入ってくる第三王女。
何をそんなに怒っているんだか。
「どうした、そんな顔して、何かよーーっ!」
パチンッ!
左頬にヒリヒリと痛みが走った。
何事だとシールを見ると、パチンともう一度叩かれ再び彼女を見るなり、人を殺しそうな目をして胸ぐらを捕まれさらにゴンッと拳で殴られた。口の中から鉄のような味がする。
「私は、私はこんなことを頼んでない!!」
俺は呆れたように、はーっとため息を吐くと血が垂れているであろう口元を腕で拭く。
いや、お前が言ったんだ。
シロに後悔しろと。
「そんなつもりで言ったんじゃない・・・・・・」
顔を両手で覆って膝から崩れるシール。
「どの道いつかは殺すつもりだった。あいつは・・・・・・、シロは大人しくしてれば放っておいたのに俺の戦争を毎回邪魔してくるっ。いい機会だった、そう思ってくれ」
シールが俺の事を獲物を狩る前のフクロウのように睨んでくる。
「ツルギが許さないわよ・・・・・・」
全く、なんの脅しにもなってない。
「元からツルギには嫌われてる、許してもらおうとも思わん」
「最低・・・・・・」
俺はパンパンと両手を叩いて使用人を呼び出し、泣き崩れているシールを部屋から出した。
俺のやり方なんて今に知ったことでは無いだろうに、ツルギに似たのかツルギが似たのか、お人好しな奴だ。
執務室のふかふかの椅子に座り直し、俺は手を組む。
「核を使われることは予想外だったが、まあ予定通りだ、仕切り直しといこう」
まだ、俺の計画は道半ばだ。
※
『ウイジクランで起こった爆破テロ及び狙撃事件についての続報です。爆発の被害にあったのはお忍びでトリークグラードへの視察へ向かう途中だったローレニア第二王子のヒナ・コバル・スール王子ということが判明、重傷ではありますが命に別状はないとの情報です。また、狙撃された人物はウイジクラン空軍傭兵パイロット、ツバサ・シロサキ中尉と軍から発表がありましたが怪我の程度は不明です。なお現在クリンシュ地区には厳戒態勢が引かれ公共機関は全て停止、道路も封鎖されております・・・・・・』
スマホの動画投稿サイトのライブニュースから聞こえる続報。
あのヒナが重傷か・・・・・・。
最後に一方的にやられるのは面白くないからって白崎がやったんだろうけど、あいつも一応俺の幼馴染だ、心配はする。
が。
白崎の野郎・・・・・・。
「「剣くん・・・・・・」」
二人が心配そうな顔をして俺の顔を覗く。
「俺は・・・・・・」
どうしたらいいんだ・・・・・・。
『まもなく今回のテロについてローレニア国王、サヤ・アルシュール・ローレ陛下の会見が始まるようです』
『第二王子が重傷となると何かしらの報復宣言があるかもしれませんね』
アナウンサーとご意見番の会話、自分たちは関係ないからと報復という言葉を簡単に使っている。そして画面が会見場に切り替わり、赤地に黄色い二等辺三角形が栄えその下に黒線二本がある国旗を背に、兄さんが映った。
そうだ、全部この人のせいだ・・・・・・。
「俺はサヤを、許さない」
スマホの画面を切った。
※
殺す殺す殺す。
全員殺してやる。
全部あいつのせいだ、あいつがいなければこんなことにはならなかった。
だけど、どんな強敵を蹂躙するもあいつらは現れない。
あの人のために、みんなのために必死に戦い続ける私のことを嘲笑うかのように。
だったらいっその事ああすればいいんだ。
私はエルゲート領端島に向かった。
ブルー・スカイ シリーズ第三部
アザー・スカイー死神と戦うエースー
~完~
初めましての人は初めまして、お久しぶりの方はお久しぶりです。
嶺司です。
今回のブルー・スカイシリーズ第三部「アザー・スカイー死神と戦うエースー」を読んでくださりありがとうございます。こんな末端なろう作家の小説でも、読んでくれる人は読んでくれるんだなと感謝感激です。
今回、「ブルー・スカイ」「グレイ・スカイ」に続いての作品ですが、いかがだったでしょうか?
剣たちの違う空を飛ぶ人達の物語も書いてみたくて書き始めたのが最初。本当は20話ぐらいで終わらすつもりだったなんて口が裂けても言えません。
剣たち強すぎるんですよね、バッタバッタ死んでくし物語の広がりが!このままでは全滅してしまう!
そんな時に登場したのが剣の永遠のライバル「シロ」こと白崎翼です。
それに本当は翼が登場して、読者が「白崎生きとったんかワレ!」って感じになってる時に終わらすつもりだったなんて、これも言えません。
それに思いもよらぬエチエチ回、アレイの虜にして翼を戦わざるえない状況に陥れる!みたいなことを表現したくて書いたんですけどどうでしたかね?
おかげで薄い本の需要が出来そうって言われましたけど(笑)
まあ、本人死んじゃったしどうなんですかね。
これも次作に繋げるためなんです!許してください!
そして、次回作。
暇があれば地道に書いておりますがしばらく時間がかかりそうです。
言えることはキャッキャ感を出しつつ「ブルー・スカイ」「グレイ・スカイ」より幸福感?は無く、「アザー・スカイ」より死なないって感じですかね。グレイ・スカイみたいに長くはならないと思います(多分)
全体的に重めな内容になると思いますが、どうかご期待頂ければと思います。
それでは、また次回作でお会い出来れば嬉しいです!
この小説を読んでくれた皆様に、重ねて御礼申し上げます。
ありがとうございました!
嶺司
七月某日。




