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アザー・スカイ ー死神と戦うエースー  作者: 嶺司
ルイ・アレイ
37/46

第37話 ブレイク

夜21時。


《ーー全機交戦許可、基地を守れ!!ーー》


目の前に広がる無数の黒い影。それが滑走路脇にある探照灯によって照らされ姿を表す。


《ホーク隊交戦!》


およそ100機もの無人機。


《スネーク隊交戦》

《ウィザード隊交戦、スネーク隊を援護する》

《グローウェル隊交戦する》


空を覆いつくさんほどの敵機が西クリンシュ基地に今まさに襲いかかろうとしていた。

地対空ミサイルで迎撃しても減った気がしないし、いつ地対地ミサイルが飛来するかも分からないから、全て撃ち尽くす訳にもいかない。


《・・・・・・ウィンドブレイク隊、交戦》


度重なる戦闘でみんな満身創痍。

だけど、泣き言なんて言ってられない。

死んだ人のためにも生きて、この戦いに勝たなければならない。


《メドラウト交戦!》


私の全てを奪ったイエローラインを殺さなければならない。


《スカイレイン、交戦》


まずはハエのようにたかる無人機の迎撃。

私は操縦桿を握りしめる。



空には爆発音が響き黒煙が漂い、陸軍の対空機関砲による激しい対空砲火が続きえい光弾による光線が空に弧を描いている。


《アレイ!カバー!》

《今行ってる!》

《隊長、後方に三機!》

《えぇ、しつこいわね!》

《全く減った気がせんぞ!》

《っと、危ねぇ。陸軍にちゃんと狙えって言ってくれ!》


襲来当初より減ったとは思うがそれでもまだまだ無数の無人機を対処し、何とか連携を保ちつつも制空権は失いかけていた。


それに夜ということもあり、私たちは赤外線カメラがあるからまだいいが、他のF-16Uは苦戦していた。


いくら陸軍の機関砲で弾幕を展開しても限度がある、基地にもそれなりの被害が出ていて、所々から煙が上がっていた。


《弾がいくらあっても足りないわよ・・・・・・》


F-16Uは最大10発の空対空ミサイルが積める、それが10機いるから100発、全て当たれば足りるがそんな上手いこと行くはずもない。私のYF-23は翼下には搭載できずウェポンベイに6発しか積めないし、機銃弾も無限ではない。


《ーーカルートから六機がこっちに向かっている、持ちこたえろーー》


そうは言っても最短で10分以上はかかるし、たった六機か。いないよりマシだが持ちこたえれるだろうか。


《各機、一撃離脱、無理はしないでよっ》


ラメイト大尉の言う通り、無理に追撃を仕掛けると多数の無人機に後ろを取られてしまう。一撃離脱、一機一機確実に仕留めていきたいがなかなかそんな時間が無い。


《ーー地上作業員の避難は終わったが負傷者が出ている、これ以上敵機を近寄らせるな!ーー》


言うのは簡単だ、今死に物狂いでやっている。


《今やってるだろ!》


ホーク隊のアヤカルト大尉が珍しく罵声を飛ばしている、それだけいっぱいいっぱいなんだ。


《クソッタレ、今ここで死んだ方が楽なんだろうなっ!》


みんな心の中ではそう思っている、私だってそうだが実行する人はいない。そう思いたい、そう願っていた。


《無駄口叩かないで敵を落として》

《もう五機は落としたっての!》


私も自動的に捕捉される敵機を判別し機銃の雨を浴びさせ、一機一機確実に仕留めていく、何機落としたかは数えてないが敵は無人機だ、動きは単調だし遠慮なしにやれる。


《メドラウト、一旦離脱して立て直す》

《スカイレインも離脱する》


無茶苦茶に飛び回っていても何が何だか分からなくなってくる、少しは敵も減っただろうし二人で少し離れて状況を見直す。


《まだ行けるか・・・、アレイ残弾は?》

《機銃が少しにミサイルが四発》


まだ全然戦える。

しかし、無闇に戦っても消耗するだけだ、もっと効率的にするには・・・・・・。


《私が囮になるわ》


ラメイト大尉が下からスっと上がってきて私の目の前を飛んでいる。


無人機の特性ぐらい私も理解していた。


最短距離にいる敵機を追いかけ攻撃する、たったそれだけ、無人機同士の連携もクソもない。


《・・・・・・必ず、守ります・・・・・・》


もはや私のわがままで拒んでばかりは居られない、それに時間もない。


《えぇ、任せたわ》


ウィンドブレイク1が機体を180度反転させ、アフターバーナーを使い高速で無人機の群れに突っ込んでいく。

私とツバサくんで少し離れてそれを追いかける。


《隊長!無茶ですよ!》


ジーオンが状況を理解してラメイト大尉の行動を止めようと叫ぶが既に遅い。


《誰かがやらないといけないのっ!》


およそ10機の無人機を引き連れて急上昇していくウィンドブレイク1、私はその後ろにピッタリくっつきラメイト大尉を射線に入れない様にして機銃の引き金を引く。


ババババババッ・・・・・・!


目の前で無人機がいとも簡単にバラバラになっヒラヒラと粉々になった部品が落ちていく、私はそれをクルクルと回って避けるが。


《あれ?・・・・・・っ!》


引き金を引いてるのに反応しない。


弾切れだ。


まだ敵は六機いる、早くしないと間に合わない!

すぐさま無人機をロックしてミサイルを全弾無人機に放つが二発足りない。


《どいて!!》


真後ろにいるツバサくんが叫び、私は機体を捻り離脱急降下。


《間に合えっ!!》


ツバサくんがミサイルを放ったと同時に、私のは放ったミサイルは無人機に全弾命中、あと二機がウィンドブレイク1に迫っていた。


《くそっ!》

《隊長っ!》


一機の無人機がミサイルを放った、それの直後にツバサくんが放ったミサイルが無人機に命中し粉々になって落ちていくが、放たれたミサイルをどうにもすることができない。


パ、パ、パッ!


フレアを放ち、強烈に光る火の玉が宙を漂うがミサイルは見向きもしない。


《っ!!カメラ誘導かっ、避けきれない!!》


ツバサくんが叫ぶ。


《ぬぁぁぁぁっ!!》


するとどこからともなく現れたウィンドブレイク2が、クルッと回ってミサイルとウィンドブレイク1の間に入り。


《ジーオン!!》


バァン!!


暗闇の空に赤黒い炎が浮かび上がった。

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