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アザー・スカイ ー死神と戦うエースー  作者: 嶺司
ルイ・アレイ
34/46

第34話 裏切り者

《ウィンドブレイク1から各機、作戦は分かってるわね?》


作戦空域に着く前に作戦を確認する。


《グローウェル隊、承知してます》

《分かってます》


グローウェル隊とメドラウトはすぐに返事をする、私もわかっているけど気が引けていた。


《スカイレイン、・・・・・・アレイちゃん、仕方ないの切り替えて》

《スカイレイン、ウィルコ》


作戦というのは、ウィンドブレイク隊、グローウェル隊が囮となって敵機を引き付け、ステルス機の私たちが一撃離脱で敵を攻撃するというもの。


まさかこんな作戦になるとは思ってもいなかった。

しかし、これが一番妥当な作戦でもあった、ラメイト大尉が言うように切り替えるしかない。


《スカイレイン及びメドラウトは作戦準備のため離脱します》

《ウィンドブレイク1、ウィルコ。頼んだわよ》


私たちが近くにいては意味が無い、機体を捻り旋回させF-16の編隊から遠ざかり見つからないように高度を上げる。


《味方が殺られる前に対処すればいい、あまり気にしないで》

《簡単に言わないでっ》

《ごめん・・・・・・》


それで何人死んだと思っているんだ、少しイラッとしてしまい、初めてツバサくんに怒鳴ってはいないがキツめに言ってしまった。


落ち着け私、こんなんじゃ守れる味方も守れない、ふーっと一回深呼吸をした。


そして。


《来たわよ、イエローライン!ウィンドブレイク隊、交戦!》

《隊長の仇だぁ!グローウェル隊、交戦!》


私たちのやや下方で戦闘が始まり敵からミサイルが発射され白黄色に燃えるフレアが空を舞っている。


そろそろ行こう、真横を飛ぶツバサくんにバンクで合図をすると機体を上下反転させ急降下、斜めすぐ後ろにピッタリ彼は着いてきて、ウィンドブレイクたちと戦闘を繰り広げるイエローラインに襲いかかる。


あいつらはウイジクランにはF-16しかいないと思ってるはず、不意をつけば必ず!


一番機を正面に捉えた、一瞬しかない攻撃タイミングを図り。


《フォックス3!》


私はアクティブホーミングミサイルを一発放ち、後ろのツバサくんは機銃を放って敵機の上から下に一気に飛び抜けるが爆発音はせず、機首を持ち上げ頭上に一番機を確認すと空にキラキラとしたものが舞っている、間一髪チャフで交わした様だった。


《くそっ、もう一度!》


ハイGターンでものすごいGを体に感じ、脚に血液が溜まっていくのがわかる。そして、再びイエローラインを捉えようとすると、敵と混線した。


〈あのマークは!?〉


この男とも女とも分からない声、イエローラインの一番機の声だ、混線までして何をそんなに驚いているんだ?


〈白崎!なんで、お前っ!?〉


シロサキ??

一番機の言葉を疑問に思いながらもイエローラインを追う。


《それはこっちのセリフだ!なんでローレニアに戻ってるんだよ!》


ツバサくん??

何で、敵と話してるの?


〈俺にもいろいろ事情があるんだ、それなのに行くとこ行くと敵になりやがって!!〉

《そんなの知らないっ。僕は、僕は君を止める!剣は殺しすぎだ!》


あのツバサくんが感情むき出しに怒っている、どういうことなの?あのイエローラインと知り合いなのか?


頭が混乱する中、一番機に追撃を仕掛けるも私の事を嘲笑うかのように難なく躱されてしまい、三番機のカバーを受けるが、以前の私ではい、ヒラヒラと舞い敵の追撃を躱してみせる。


〈仕方ねぇだろ!〉

《仕方なくない!必ず止める!》


止める、止める、止める。止めるなんて生ぬるい。


《殺すっ》

〈くっ!!〉

《なっ!アレイ!》


ドドンッ!!


油断していたのか再度追撃し放った私のミサイルはまっすぐ一番機に突っ込んでいき、奴は躱しきれずに至近距離でミサイルが爆発、直撃はしなかったのか奴はまだ飛んでいる。


《くそっ》


もう一度攻撃したいがミサイルは残り一発、それに二、三番機の猛烈な攻撃を受けたまらず退避、その隙に一番機には逃げられ、あっという間に二、三番機にも逃げられてしまった。


《もうちょっとだったのにっ!》


くそっくそっと、怒りの感情をむき出しにしてキャノピーを拳で殴った。


《アレイ、なんで!》


私は彼の言葉を無視する。


《帰りましょう・・・・・・》


そして、追撃はせずラメイト大尉の先導の元、基地に帰投した。



西クリンシュ基地


「うぐっ!」


基地に帰り機体から降りると、私はシロサキを格納庫の壁まで追い詰め左手で胸ぐらを掴み、右手で首を絞めあげていた。


「ちょっと、なにしてるの!」

「近寄らないでください!」


慌ててレノイさん達が止めに入ろうとするが、私は周りを睨みつけ誰も近寄らせない。


「ア、アレイ・・・・・・くるし・・・・・・」


苦しそうに眉をしかめて私の名前を呼ぶ。


「気安く名前を呼ばないでっ」

「そんな、つもりじゃ・・・・・・」

「私の質問にだけ答えてください」


彼の言葉は無視、絞めあげた手を緩めることもせず、有無を言わさず私は続ける。


「なんでイエローラインは貴方のこと知ってるのですか?」

「・・・・・・」


彼は私の目を見ているものの、唇を噛み締めて黙ったまま。


「答えてっ!!」


ドンッと壁に叩きつける。


「くっ・・・・・・、友達、なんだ・・・・・・」

「ともだち?」


は?と頬をピクっと釣り上げてさらに首を絞める。


「エル、ゲートに居た時・・・・・・、一緒に、飛んでた・・・・・・」


なるほど、嘘では無さそうだ。


一緒に飛んでいた、ということは仲間だったということか、それなら奴と仲はいいはず。あれだけ怒っていたぐらいだし。


じゃあ。


「貴方が死んだら、イエローラインは悲しむ?」

「え?あ・・・・・・どう、だろう」


どうだろう?


「イエローラインに私の人生はメチャメチャにされた!それなのに、それなのにアイツらが何事もなく生きてるなんて許せない!許さない!・・・・・・それなら先ず、ここで貴方を!」


シロサキの首を絞める手にさらに力が入る。


「・・・・・・離して、アレイ・・・・・・」


ポケットに手を入れた時。


「ぅぐっ!」


誰かに横腹を思いっきり蹴り飛ばされ、地面に滑り倒れ込んでしまう。


「あなた何しようとしたのっ!?」


ラメイト大尉がものすごい喧噪で私のことを睨み、シロサキは地面にヘタッと座り込んで咳き込んでいる。私は彼女に怒鳴り返す。


「彼は、こいつはイエローラインと顔見知りなんですよ!?そんな奴怪しすぎます、いつ裏切るか分からない!ここで始末した方が!」


パチンッ!


ラメイト大尉に胸ぐらを捕まれ、思いっきり頬を叩かれた。


「アレイちゃん、本気で言ってるの?」

「・・・・・・」


優しく低い声で問いかけてくるラメイト大尉に、何も答えることが出来ずに、何故か涙が溢れてくる。


そのうちに彼女は私のポケットを漁り、カッターナイフを取り出すとレノイさんの方へと投げた。


「何でこんなもの持ってるのよ・・・・・・」

「うぅぅぅ・・・・・・」


涙が止まらない、表面上では仲良くしていてもどこかシロサキの事を信用出来ない自分がいた、それで念の為持っていたのだけど、なんで私はこんなことをしてるんだろう。


なんで私はツバサくんを殺そうとしたんだろう。

イエローラインと友達だから?


ツバサくんが死んだらイエローラインが悲しむと思ったから?


でも、今、彼は私たちの仲間だ。


分からない・・・・・・。


「ごめんなさい・・・・・・」


私はラメイト大尉の胸にしがみつき、ひとしきり泣いた。



ジーオンさんが僕の背中を擦ってくれる。


あの目はヤバかった、本当に殺されるかと思った。

何回か咳をして、大きく深呼吸する。


僕を殺そうとしていたアレイはラメイト大尉にしがみついてワンワンと泣いている。


僕が来てからは気丈に振舞っていたし、ラメイト大尉も心配していた、僕も早く打ち解けようとかなり冷ややかな対応をされていたけどなるべく話しかけるようにしていた。だけど意外とまだ不安定だったみたいだ。


「シロサキくん」

「ゴホッゴホッ・・・・・・はい?」


咳払いしてジーオンさんの静かな呼び掛けに首を傾げる。


「アレイのこと、嫌いにならないで・・・・・・」

「・・・・・・」


僕は泣きじゃくっているアレイを再び見る。


さっきの彼女の行動は本心だとしても、なんて言うかな、本当の本心ではないことぐらい分かってる。行き場のない怒りが爆発して、イエローライン一番機に繋がりがあると分かった僕にそのはけ口が来たのだろう。僕は彼女に何が出来るのだろうか。


「ラメイト大尉も、僕もいつまで生きていられるか分からない、だからね」


死ぬ前提で話はしないで欲しい。


「もちろん、嫌いにはなりません」

「良かった」


これ以上誰も死なせない、そうしたらアレイも落ち着くはず。

あのツルギが相手だが僕だってエースだ、できるかは分からないけどそう決意することしか僕には出来ない。


でも、なんで僕。

アレイのことがこんなに心配なのかな。


何故かフフと鼻で笑った。


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