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アザー・スカイ ー死神と戦うエースー  作者: 嶺司
ルイ・アレイ
31/46

第31話 何故

気がつけば私はベッドで横になっていた。


ここは、医務室かな?


以前倒れた時に見た景色と同じだ。

ベイルアウトの衝撃で気絶したのだろう、体も特に痛くないし、よく無事だったな。


良かったのか悪かったのか、生き残っちゃったか。


はぁー・・・・・・。


よく分からない感情の中ため息を吐き、重い体を起こしキョロキョロ辺りを見回すも誰もいない。


すると直ぐに、ガチャっと目の前の扉が開き誰かが入ってきた。


「良かった、気がついたのね」


ラメイト大尉とジーオン中尉だ。


「・・・・・・私ってどれぐらい・・・・・・」


部屋に時計はあるがカレンダーは無い、どれぐらい寝ていたのか確認する。


「三日かしらね、体に異常はないはわ、疲れてたんでしょう」


異常、ね・・・・・・。


「ご迷惑をお掛けしました・・・・・・」

「気にしないで」


私は再び部屋を見渡す。


「あの、メイセンは・・・・・・」

「喉乾いたでしょ、ほらお水」


私の言葉をラメイト大尉は遮り、ベッド横の棚にあった水筒からコップに水を入れて私に差し出してくれる。

その手は震えていた。


「隊長・・・・・・」


真面目なジーオン中尉、彼の反応を見れば一目瞭然だ。しかし、認めたくなった。


「死んじゃいましたか・・・・・・」


いいえ、生きてるわ。そう言って欲しかった。


「えぇ・・・・・・」

「そう・・・・・・ですか・・・・・・」


あの混乱の中、気がついたら空にメイセンの姿はなく、イエローラインが帰っていった後に確認すると地表に墜落していたらしい。


「ごめんなさい・・・・・・」

「なんで大尉が謝るんですか」

「・・・・・・」


私が戦闘より合流を優先していればこんなことにはならなかったのかな、しかしそれはもう後の祭りだ。


「他には?」


あの戦闘でかなり落ちていたはずだ、もう誰が死んだと言われても悲しめない、頭の中ではそう思いだしていた。


ラメイト大尉は一旦ジーオン中尉の顔を確認すると彼は小さく頷く。


「グローウェル隊のジェンダー大尉とサンダー中尉。ウィザード隊のハルトマン中尉・・・・・・」


三人か、思ったより少なかったかな。


「そして、レンジャーと、マーチス・・・・・・」

「え・・・・・・」


マーチスが?リンが?


「ちょっと、冗談はやめてください、死ぬわけないじゃないですか。ほら、ドッキリなんでしょ、私だけ医務室で寝てるからって当てつけなんでしょ?メイセンも本当は生きてるって知ってるんですからねっ」


ハハハとメイセンのようにぎこちなく笑うが、ラメイト大尉とジーオン中尉は俯いたまま私を見てくれない。


「・・・・・・」


言葉が出てこなかった。

なんで私を置いてみんな死んでいくのか。


「一人に、させてください・・・・・・」

「でも・・・・・・」

「出ていって!!」


私は二人を追い出す。


戦闘が激化して概ね二ヶ月。

五人いて、私の大好きだった五つの流れ星を垂直尾翼に描いたスカイレイン隊はとうとう私一人になってしまった。


なんで私だけ生き残ってるんだろう。


あの時諦めていれば、ベイルアウトしなかったら、今こんなに悲しむ必要は無かった。


でもなんで、ジルはあんな悲しい顔をしたんだろうか、天国で会えたかもしれないのに。


「くそっ!くそっ!」


ベッドマットを思いっきり殴りつけるがイライラは収まらず、サイドテーブルにある水筒を床に投げつけ、カランカランとどこかへ転がっていく。


「殺してやるっ!絶対にっ!私が、この手で!!」


許しはしない、絶対に。


私たちの心の痛みをアイツらにも味わってさせてやる。

失ったはずの感情をむき出しにして暴れる。


殺す、殺す、殺す、殺す。


この手で、アイツらを終わりにしてやる。

そして私は、ラメイト大尉に止められるまでひとしきり暴れ回った。



西クリンシュ基地に現在残っている飛行隊は次の通り。


「スカイレイン隊」

ルイ・アレイ少尉


「ウィンドブレイク隊」

ヤナイ・ラメイト大尉

ケイラ・ジーオン中尉


「ホーク隊」

グリッチ・アヤカルト大尉

ニル・トマーソン中尉

ロッゾ・ジーキル少尉


「スネーク隊」

ナルギ・オリオン大尉

ローグ・レスティン中尉


「ウィザード隊」

ウィル・チルニク大尉


「グローウェル隊」

カイエン・サルエリ中尉

マハト・ダイシール中尉


以上だ。



私の機体は撃墜され、補充機の準備に時間を要していた。


飛行隊長室


「嫌です」

「まだ何も言っていないだろ・・・・・・」


私は強襲の被害から辛うじて逃れられていた庁舎の飛行隊長室に呼ばれていた。


話としたらどうせどこかの隊編入命令ぐらいだ、そんなの以前にも増して断固拒否だ。


飛行隊長は眉間に手をやり少し悩んだようにしている。


「まだ空は飛べるか?」


あの飛行隊長が私の何を心配しているのか、明日は雨でも降るんじゃないだろうか。


「イエローラインを殺すまで飛びます」


「そうか・・・・・・。スカイレイン隊への人員補充を要請中だ。しかし、やられたい放題でな他への補充もままならん状態だ」


ほう、私が出ていかないなら誰かを補充してくれるのか、あの嫌味ったらしかった飛行隊長もちょっとは変わったようだ。


「いりません、どうせみんな死にますので」

「お前な・・・・・・、そういう訳にもいかんのだ」


私の言葉にさらに困り顔をする飛行隊長、彼が困ったところで私が知ったことではない。


しかし、そういう訳にもいかないとはどう言うことなのだろう。それについて少し考えるが、私には分からない。


「傭兵でもいいか?」

「誰でもいいです」


いいと言うまで帰してくれそうにないし、とりあえず適当に返事をした。


「・・・・・・わかった」


だが、誰が来ようとどうでもいい、どうせすぐに死ぬ。それはその補充に来た傭兵かもしれないし、私が刺し違えてでも死ぬかもしれない。


「まっその件は終わりだ、補充機は明後日には到着予定だ、それまで少し休め」

「失礼します」


私は足早に飛行隊長室を後にした。



大小合わせて八棟あった格納庫はミサイル攻撃により四棟が倒壊し、簡単な整備作業は駐機場で行われていた。

そこに私の機体は無い。


私はその駐機場の端に出されていた木製のベンチに座り、ただボーっとする。


中途半端な戦力が来たとしてもすぐに殺られてしまう。

金目当ての傭兵なら尚更だ、金を積みまくってそれなりの腕のパイロットを捕まえたとしてもイエローラインに勝てるかどうか、もし勝てるようなそんなエース級パイロットがいたら他の国から引く手数多だ。


こんな、負け戦をしているウイジクランになんて好き好んで来ないだろう。


「隣、座るわよ?」


後ろから声がしてチラッと見るとレノイさんの姿があった、私は目線も合わせず小さく頷くだけ。


「補充機なんだけど、機番号とエンブレムは同じでいい?」


また同じように小さく頷くと「わかったわ」とレノイさんも小さく頷く、そして少しの沈黙が続いた。


「そうそう、その補充機なんだけどねF-16Uじゃないのよ、少し時間もあるからこれを読んでおいてくれない?」


F-16じゃない?それじゃF-4とか?古いのは嫌だな、と思っていると、レノイさんがカバンから取り出したのは分厚い本、というかガイドブック?


何の本だ?と思いつつそれを受け取ると、表題にはF-16とは全く違いどちらかと言うとF-22のようだかそれとも違う見慣れぬ機体の写真と名前が書いてあった。


『YF-23』


試験機?

私は無言のままレノイさんを見つめる。


「トルメキニスとウイジクラン共同開発の機体よ、いろいろ癖がある噂だけど貴女なら大丈夫だと思うわ」


何が大丈夫だというのか、私は全然大丈夫じゃない。


「私も整備頑張るから、貴女も・・・・・・、何でもないわ。それ、読んでおいてね」


何かを言いかけるが途中で止めて、彼女は私の背中をポンポンと叩くと整備場の方へと歩いていった。


私はペラペラとガイドブックをめくって適当に読む。

はぁ、分厚いなぁ・・・・・・。


ここだと読みにくい、搭乗員待機室でちゃんと読むことにした。


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