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アザー・スカイ ー死神と戦うエースー  作者: 嶺司
ジル・スレイヤ
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第22話 ミーティング

結局翌日と言われた強行偵察は中止され。後日、待機室にて基地司令、作戦士官、飛行隊長、全パイロットによるミーティングが行われていた。


10月20日、待機室。


「カルート基地司令が電子戦機1チーム及び、戦闘機隊2チームの派遣を許可してくれた、翌日この基地に到着、作戦調整後に出撃してもらう」


歳の割にはガタイもよく、オールバックに固めあげた髪型が印象的な西クリンシュ基地司令「レイズ少将 」が根回ししてくれたのだろう、使えない飛行隊長より何倍も信用が置ける人だ。


「そして、先日、カルート基地から大回りで無人偵察機を数機派遣したのだが、この映像を見てくれ」


モニターに映し出されるのは無人偵察機が撮影していた映像、かなり遠くに何かが巨大な建築物のようなものが写っているようにも見えるが、画面が一瞬光ったと思えばそこで映像終了。他の機体も防空陣地でもあるのか地対空ミサイル攻撃によって撃墜されていた。


「え、敵地を偵察したんですか?」


思わず聞いてしまう。

実質戦争中だが公には戦争はしていない、そんな国に無人偵察機でも入れようものなら・・・・・・。


「口を慎まんか!」


案の定飛行隊長に怒鳴られてしまう、だが結構重要な事だと思うんだけどな。


「案外防空網が厳しくてな。よって次回の作戦は、偵察の後、この建造物を判別し要すれば破壊する。報復される前に動かんとな」


おいおい、マジかよ。よく分からん敵にこっちから打って出るって言うのか?


「よって次回の作戦は・・・・・・」


あまりの無茶ぶりに信用ガタ落ちの基地司令の隣にいた眼鏡をかけたインテリそうな作戦士官がここぞとばかりに、眼鏡を右手でつまんでクイッと上げて口を開く。


「攻撃隊『クロー隊』『アトック隊』護衛機『スカイレイン隊』『ウィンドブレイク隊』カルート基地第5航空団所属、電子戦機『スペース隊』戦闘機隊『レプタイル隊』『ワイルド隊』以上をもって敵を叩く」


しかしほぼ全機出撃、今はまでにないぐらいの大部隊だ、これは止めれそうにないな。

諦めて、はぁー、とため息をつくと。


「フライトリーダーはラメイト大尉、サブリーダーをスレイヤ大尉とする。AWACSも遠方だが送り込む」


俺はラメイトさんの補佐か、気楽でいいがラメイトさんはどうだろう、ちらっと彼女の横顔を見るも普段と対して変わりはない。


「作戦概要としてはライスヤードからトリークグラードにかけてある谷を縫って侵入、その後低高度を維持し目標地点に向かう。先頭はスカイレイン隊、その後方にスペース隊、レプタイル隊、ワイルド隊、クロー隊、アトック隊、ウィンドブレイク隊と続いてもらう」


なんだ先頭かよ、いくらサブでもこりゃ責任重大だ。


「目標地点に到着次第目標の判別、要すれば攻撃の後帰投だ」


ほぼほぼ攻撃するのは確定なんだろうな、叩くって言っちゃってたし。


「この周辺には多数の対空施設が確認されている、電子戦機の影響下から出るとやられるぞ、以上だ」


衛生画像でいろいろ表示される、さてさて、何人生きて帰れるかな。

特に文句を言うやつも現れずミーティングは終了、偉いさん方は待機室から出ていき俺たちパイロットの話し合いが始まる。


「行けたとしても帰れんぞ・・・・・・」


珍しく悲観的なシュリン大尉、俺だってそう思っているが彼は深刻そうだ。


「なんとかなるさ」


思い詰めても仕方がない、もっと楽観的にしようとしたのだが。


「ありゃ、トリーク製のイージスアショアだ、探知されたら蜂の巣だよ」


モニターに表示されたままの画像を指しそういう。

ミリオタって情報が早くて大変だな、そんなこと分かりもしなかった。


「やれと言われればやるしかない、それが軍人だ。みんな準備を進めろ。ドグ、レンジャー、行くぞ」


さすがライトイヤー大尉、肝が据わってるよ。

僚機の二人を連れて待機室を出ていくクロー隊。


「そう言われたら反論できん、俺らも話し合うか」


シュリン大尉も僚機パイロットとレーダー員を連れて何処かに行ってしまい、残ったのはスカイレイン隊とウィンドブレイク隊。


「さて、ラメイトさん、フライトリーダーはお願いしますね」

「ええ、貴方も先頭よ?大丈夫?」

「こいつらが大丈夫なら大丈夫だ、そうだろ?」


両隣に座るメイセンとアレイの頭を手荒くガシガシと撫でてやると。


「が、頑張ります・・・・・・」


少し不安そうに眉を顰め俯くメイセン。


「問題ありません」


いつもの基地モードで俺を真っ直ぐ見つめる冷静なアレイ。

大丈夫だ何かあっても守ってやる。口には出さないが心の中で言う。


「それにレプタイル隊つったら8機もいる大所帯だ、余程のことがない限り大丈夫だろ」

「お気楽ねぇ、慢心って言うのよ」


気楽に考えないとやってられるかよ、俺はフンッと軽く笑って誤魔化す。


そして、ラメイトさんの僚機、ジーオンとレオナル、マーチスの表情を伺うもやはり固い。まあな、アストロン隊がやられた時、同じ空にいたしその後すぐの実戦だ、不安にもなるだろう。


「何浮かない顔してんだ、それでもパイロットか?」

「貴方ねぇ・・・・・・」


ラメイトさんには呆れられたが、こいつらは一緒に自分の顔をパンパンと叩いて鋭い目を俺に向けていた。



格納庫。


「レノイいるか?」

「あ、はい、シュルトさん、スレイヤ大尉ですよ!」


格納庫に来て適当な整備員にレノイの所在を聞こうとすると、大声で彼女を呼んび俺の機体のコックピットからひょこっと顔を出すレノイ。機器整備でもしてたのか?

すると彼女に変わってマスコット犬のレニーが猛ダッシュで俺の足元へ駆け寄ってきて体をスリスリしてくる。


「なんだ、今日はえらく積極的だな」


わさわさしているとハァハァ言いながら地面に転がりお腹を見せてくるレニー、可愛いヤツめ。


「何か用?忙しいんだけど」


それに引替え、一応は機体から降りてくれるも面倒そうに首を掻き冷たいレノイ。


「せっかく来てやったのにレノイは冷たいな、なー、レニー」

「ワンッ!」

「なんなのよ、冷やかしなら戻るわよ」


さらに面倒くさそうに眉にシワを寄せる彼女、レンチで殴られそうだからこの辺にしておこう。


「そう怒るな、美人が台無しだぞ」

「貴方がお世辞なんて珍しい、明日は雪でも降るのかしら?」


お前は相変わらず嫌味ったらしいな。まあ、それがいつものレノイだ、こうは言っていても俺の事を心配してくれているし、それは俺だって理解している。


「お世辞じゃねぇよ」

「・・・・・・どうしたの?」


レノイに手招きされ格納庫の中のベンチに隣合って座る。


「明日、トリークグラードに出撃する。敵の防御陣地の偵察攻撃だからな、生きて帰って来れるとも限らん」

「・・・・・・そう」


俺と一緒に真っ直ぐ戦闘機を見つめるレノイ、特に表情は変わらない。


「俺になんかあったらアレイ達を頼む、お前ぐらいしか頼めるやつがいなくてな・・・・・・」

「何言ってるの、イヤに決まってるじゃない」

「え?」


真顔で俺を見てくる、いや、睨んでくるレノイ。


「自分で最後まで面倒みなさいよ、可愛い部下なんでしょ?アレイだって私なんかに面倒見られたくないと思うけど?」


それは重々承知してるんだけどな、俺の足元に丸くくるまっていたレニーも顔を上げて俺を見つめてくる。


「死んだらダメよ」


そう言って彼女は俺の膝上にある手をギュッと握ってきたと思うとすぐに離し立ち上がり。


「じゃ、私は忙しいから」


何事も無かったように手を振って、

俺の機体の整備に戻っていく。死ぬなっつったって既に何人死んでると思ってんだ、あいつのなりの激励なのだと思うがため息しか出ない。


「あ、やっぱりここにいた」


後ろから声がして振り返るとメイセンとアレイがいた、俺の事探してたのか?まあ、何も言わずにここに来たしな。


すると二人を見つけたレニーはメイセンに向かって猛ダッシュ、飛びついたと思うと彼の顔まで駆け上がりその顔を舐めまわしている。


「ちょっ!レニー、やめて!」


あーあーあーどうしたというのか、見かねたアレイがレニーの首根っこを掴んでメイセンの顔からレニーをひっぺ剥がす。


「うぇー」


ヨダレでベタベタなメイセン、可哀想だ。

アレイに捕まって暴れるレニー、地面にそっと下ろして手を離すとまた猛ダッシュで飼い主レノイの元へ走っていく、なんなんだ?


「今日はテンション高いですね」

「ああ、どうしたのかな」


ハンカチで顔を拭き俺の隣に座るメイセン、アレイはその隣に間を開けて座る。


「なんで!」

「汚いです」


どストレートだな、ますますメイセンは可哀想だったが仕方ないだろう、なんだか臭いし。


「もうっ!顔洗ってきます!」


怒ったかな?プンプンと足音大きく格納庫の端にある洗面台に歩いていく。


「もっと言い方あるだろ」


頬を掻きながら注意すると。


「だって、臭かったんですもん」

「え?」

「なんでもないです」


急に家モードになるもんだから二度見して確認するも、クールモードに戻るアレイ。しかし、彼女の横顔はやっちまった、みたいななんか引き攣った顔をしている。

だんだんこいつの本性がわかってきた気がするな。


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