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アザー・スカイ ー死神と戦うエースー  作者: 嶺司
ジル・スレイヤ
18/46

第18話 神隠し

10月17日2100時。


当直任務に戻った俺たちスカイレイン隊と、その後方にフレイヤ隊の二隊でライスヤードの偵察及び巡回をしていた。


所属不明のゲリラ部隊が出現するようになったとか、面倒この上ない。


《今のところトリークとローレニアも来る気配はないが、地上の警戒も怠るな》

《スカイレイン2、ウィルコ》

《スカイレイン3、ウィルコ》


ライスヤードには人は住んでいないことは無い、集落がいくつかあり自治警察のような組織もあるにはあるが全ての地区をまかなえている訳では無いし、可搬式誘導弾とか撃たれないとも言いきれない。


先日、大した被害はなかったものの突発的な陸上戦闘もあったらしいしな。


しかし今は夜だ、地表に数箇所の街明かりが見える他は何も見えん。


《フレイヤ1からスカイレイン1、赤外線カメラ異常なし》

《スカイレイン1、ウィルコ》


だから攻撃機のフレイヤ1の機体に赤外線カメラを内蔵したポッドを取り付けて偵察を行っていた、大概の物はこれで見えるだろう。


《なんにもないと逆に怖いですね》

《まあな》


以前なら今頃イエローラインが国境警備に来ていてもおかしくない、今日は非番なのかな?メイセンの言うように静かすぎて逆に緊張する。


《ーーこちらムーンアイ、レーダー探知なしーー》


AWACSスターアイの交代機、今日はムーンアイという早期警戒機が空域を見張ってくれている。まあ何度も言うようにステルス機が来られたら見つけきれないんだが、その時はフレイヤ1の赤外線カメラで多少はどうにかなるだろう。


何も無い事に越したことはない、もう少し付近を偵察したら帰るかなと考えていると。


ピカッ!


《うぉ!なんだ!?》

《わっ!》

《っ!!》


バイザー越しでも視界が真っ白になるほどキャノピーの外が光に包まれ、その数秒後にドゴーーーーン、と爆発音かなんなのか、とてつもなくデカい轟音が空に響き機体がガタガタと揺れた。


《ビックリした・・・・・・、雷ですかね?》

《いや、雷雲なんてない・・・・・・。各機状況を知らせろ》


今の揺れは異常だ、雷だったとしてもそんな雨雲は近くに存在しないし、離陸前のブリーフィングでも高層雲はあるが高気圧に覆われて晴れベースと言っていた。それだとミサイル攻撃かとも思うが捕捉されたようでもなかったし、なんせ光て遅れて音が聞こえていた。なんなのか全く分からない。


《スカイレイン2、異常なし!》

《スカイレイン3、異常ありません》


俺たちスカイレイン隊は特に異常はない。


《フレイヤ各機、どうだ?》


フレイヤ1のエスイン大尉が報告をまとめてくれる。


《フレイヤ2、異常なしです》


・・・・・・。


《おい、フレイヤ3、どうした?》


・・・・・・。


フレイヤ3の応答がない、さっきので無線でも壊れたか?


《マンダン、どうした応答しろ》


何やら様子がおかしい。

状況確認のため俺たちは一度旋回すると。


《マンダンがいません!》

《は!?さっきまでいただろ!どういうことだ!?》


俺たちの最後尾に着いてきていたはずのフレイヤ3ことマンダンの姿が忽然と消えていた。

訳分からない状況に混乱するエスイン大尉にレンジャー中尉。何かに撃墜されたとかならまだしも消えるとかわけがわからん、一体全体何が起こったというんだ?


《ーーこちらムーンアイ、こちらでもフレイヤ3とのリンクが切れた、パイロットがそちらの方向で何か光ったと言っているがどうなっている?ーー》


となるとただ単にはぐれただけでは無さそうだ、地表を見ても墜落したような痕跡は見られない。


《俺も知りたいよ!一旦散開、各機距離を取れ》


状況が全く分からない今、とりあえず固まっていては危ないと判断し各機離れるように指示を出すが。


ピカッ!


また空が真っ白に光り、遅れて来る轟音と共に機体が激しく揺れる。


《あぁくそっ、なんなんだよ!各機状況を知らせろ!》


だんだん腹が立ってきた、攻撃か自然現象なのかも全く分からないし僚機が一機消えているんだ、各機の無事を確認するのに焦る。


《スカイレイン2、大丈夫です!》

《スカイレイン3、問題なし》


暗闇で姿はハッキリ見えないが、とりあえず俺の僚機は無事だが。


《フレイヤ2、異常なし》


・・・・・・。


フレイヤ2の報告に返事をする人がいない。


《隊長??》

《フレイヤ1、どうした?》


まさか・・・・・・。


《隊長・・・・・・?、隊長!!》


叫び出すフレイヤ2。


《落ち着けレンジャー!》

《隊長がいません!》


なんなんだよクソ野郎が!


《ーーフレイヤ1とのリンクが切れた、また光ったぞ、何が起こっている?ーー》


なんで突然二人も消えるんだよ!状況が全くわからん、こんなところにいてはまた誰かが消えてしまう。


《緊急離脱、各機高度を下げろ!》

《でも、隊長とマンダンが・・・・・・》

《お前も消えたいのか!?逃げるぞ!》


何が起こっているのかわからん以上長居は危険だ、レンジャーの気持ちもわからんでもないがみんな消えてしまっては話にならん、念の為機体をロールさせ急降下反転、西クリンシュ基地に帰投した。



西クリンシュ基地、駐機場。

無事に、と言っていいのだろうか、俺たちは基地に帰投していた。


「隊長が、マンダンが・・・・・・」


完全に取り乱しているレンジャー、小柄な彼女は俺の服を掴んで涙ながら必死に訴えかけてくるが、俺はどうすることも出来ない。


「俺も何が起こったかわからん、落ち着け、な?」


肩をポンポンと叩いて落ち着かせようと試みるが。


「でも・・・・・・、でも!」


ついには俺の胸元に顔を埋めて、わんわんと泣き出してしまった。

レンジャーのことはアレイに頼みたいが、あいつも拳を握りしめ眉間に皺を寄せて泣きそうな顔をしている、とりあえずレノイに任せよう。


「何があったの!?なんでF-2が一機しか居ないのよ」


直ぐに格納庫からレノイが駆け寄ってきて、俺はレンジャーの背中を擦りながら彼女に任せる。


「全くわからん、気がついたらエスイン大尉とマンダンが消えていた」


俺でも何が起こったか分からないだ、説明なんて出来ん。


「消えたって、どういうことよ・・・・・・」

「消えたもんは消えたんだ!原因なんて知るかよ!」

「そういう隊長も落ち着いてください!」


メイセンにまあまあと宥められる、敵と交戦して撃墜された、それならまだ説明のしようがあるが本当に消えたんだ。


「空が光ったと思ったら消えた、それ以下でもそれ以上でもない」


それ以外に説明できない。

レノイは泣き続けるレンジャーをギュッと抱きしめる。


「ローレニア?」


レノイがボソッと口を開く。


「わからん・・・・・・」


攻撃かどうかも分からないんだ、情報が少なすぎる。

報告をせにゃならんが夜だし大概の上の連中は家に帰っているだろう、電話なんてしようもんならなんて言われるかわかったもんじゃない。


しかし、報告をしなくてグチグチ言われるのもアレか。

飛行隊長に連絡した後にラメイトさんにも連絡しておこう。


「俺は報告をしてくる、レノイは悪いがレンジャーについていてくれ。メイセンはアレイと待機室で待ってろ」

「えぇ、わかったわ」

「わかりました、行くよ、アレイ」


アレイの手を引き待機室に戻るメイセン、レンジャーは落ち着くまでまだしばらくかかるだろう。


ブーーッ。


突然基地放送のブザーが鳴り、みんな足を止める。


《ーーAWACSムーンアイから報告、ローレニア機らしい目標がライスヤード地区に接近中、スカイレイン隊は準備出来次第出撃せよーー》


おいマジか、何がどうなってんだ?

俺は燃料補給中の自分の機体に戻ろうとすると。


「私も、私も行きます!」


レンジャーが俺の袖を引っ張って自分も再びライスヤードに行くと言って聞かない。


しかし、今度はローレニア機がいるんだ、連れていく訳にはいかん。


「ダメだ、攻撃機に出番はない」


もしイエローラインだって見ろ、俺たちだって生きて帰れるかわからん、寄って集って無駄死にする訳にも行かないんだ、あえて少し冷たく言うが。


「私も、私も・・・・・・」


うわ言のように微かな声で言うと力なくペタンと地面に座り込んでしまう、見るに堪えない。

すると彼女を心配したのか、格納庫からレニーが駆け寄ってきて彼女に擦り寄る。


「レノイ、レンジャーをよく見ててくれ。それか、ラメイトさんに早いとこ連絡するんだ。レニー、レンジャーを頼んだぞ」

「ええ、そうしましょう」

「ワンッ!」


座り込むレンジャーの肩を持ち立ち上がり、機体からレニーと一緒に離れて行くレノイ。俺たちも直ぐに出撃だ、降りたばかりのタラップを駆け上がりコックピットに入る前にアレイとメイセンを見る。


「メイセン、大丈夫か」

「・・・・・・頑張ります!」


少し間は空いたが彼は大きく息を吸って答える。


「アレイ!」

「問題ありません」


とは言うものの大丈夫か?最近発作は無いが心配だ。しかし、アレイだけを特別扱いも出来ん、本人が大丈夫だと言っているんだから信用しよう。


「俺の後ろから離れるなよ」

「はい!」

「わかりました」


そして俺は再びコックピットに乗り込んだ。

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