第17話 各隊長
それから3日後。
アレイは自らの下宿を引き払い、俺の下宿に一緒に住むこととなった。
女の子だからそれなりに荷物も多く、俺も少しは断捨離したがさすがに1Kの家には入り切らず、近くのレンタル倉庫を借りてあまり使わなそうな物はそこに収めていた。引っ越せばいいんだがいい所がなくてな、おいおい探すと言った感じになっている。
だが、もはや例えではなくただの同棲だ、ラメイトさんには言うべきなのか?上司だし戦闘機隊の隊長だしな、言わなくてもいつかバレそうだし早めに言っておいた方がいいか、飛行隊長には?どう説明すればいい?誰がなんと言っても付き合ってない、と言っても信じて貰えないだろう、飛ばされたりしちゃうのかな?恋愛禁止などとは言われたことは無いが、考えただけでもいろいろと恐ろしい。
「ルイ、行くぞ」
「はーい」
そして、半ば強引にアレイのことを名前で呼ぶ羽目になっていた。
これってやっぱり付き合ってるよな?確認した方がいいのか?
しかし、変に傷付けられても困るしな、しばらく様子を見よう。てか、俺の言い分は?
二人で部屋を出てさも同然の如く、人目を憚ることも無く一緒に出勤する。
仲のいい先輩と後輩、そう見られたら幸いだ。
●
西クリンシュ基地、待機室。
「おはよう」
「おはようございます」
基地内でのクールモードになったアレイと共に待機室に入る。
いつもガルとシャトールが座っているはずの席には誰もいない、三日経ったがこの現実はまだ受けいれ難かった。
「おはよう、二人で一緒に来るなんて珍しい」
ラメイトさんのお迎えだ、んー、なんて言おうか。えっとーなー、と頭を掻いて悩んでいると。
「途中でたまたま会いまして」
アレイが先に適答を答えてくれた、隠す方向で行くのかな?悪いことをしている気がしてちょっと心配になる。
「あらそう。スレイヤは20分後に多目的室に来てちょうだい」
「え?なんで?」
もうバレてるんじゃないか?俺としたことが冷や汗をかいてしまう。
「ちょっといろいろあるの」
アストロン隊が撃墜されたこととか以後の方針とかそんなとこかな、あまり気は乗らないが。
「了解」
了承していつもの席に座り、途中の自販機で買ったいつもの缶コーヒーを開ける。
「おはようございます」
お、続いてメイセンがやってきた、みんなに挨拶しながら俺を見つけるとこっちにやってきていつもの隣の席に座る。
「今日はどんな感じですか?」
「ああ、ちょっとしたらラメイトさんと話し合いがある、それが終わったら何しようか。今日は特に予定がないんだよな」
「了解です、決まったら教えてください」
「ああ、適当に時間を潰しててくれ」
話し合いもいつまで掛かるか分からんしな、何かやるとしても昼からだろう。
そして俺はコーヒーを飲み終わり、少し早いがラメイトさんに呼ばれている多目的室に向かった。
●
多目的室。
あー、他にも呼んでるなら呼んでるって言って欲しい。
ここにはラメイトさんと俺の他にも、ホーク隊隊長のアヤカルト大尉、フレイヤ隊隊長のエスイン大尉、クロー隊隊長ライトイヤー大尉、アトック隊隊長シュリン大尉が次々と入ってきた。
戦闘機隊、攻撃機隊の一番機が勢揃いだ。
ホーク隊隊長グリッジ・アヤカルト大尉は俺の一つ下で一期下。
まだ若いニル・トマーソン中尉と、アレイの同期のロッゾ・ジーキル少尉を僚機に持つ。性格は戦闘機隊の中で一番おっとりしてるかな、俺とラメイトさんが濃いってのもてると思うが。
フレイヤ隊隊長ゴース・エスイン大尉は30歳、ラメイトさんよりも年上だが入隊が遅い。背丈は高く、日焼けなのか地黒なのは分からないが肌は褐色でスポーツ刈りが似合う。僚機は女性のリン・レンジャーと、男のアダス・マンダン、二人ともラメイトさんの二番機、ジーオンの同期だ。
クロー隊隊長のルーク・ライトイヤー大尉は31歳、ラメイトさんの二期上で攻撃機隊の隊長、いつもどっしり構えていてあまり話したことは無い、俺が言うのもなんだが絡みづらい人だ。僚機はツリット・ドク中尉、こいつもジーオンの同期だ。
アトック隊長隊長のマツ・シュリン大尉は28歳、ラメイトさんの同期でF-4に乗っているせいか歳の割に古臭い、そしていわゆるミリオタとでも言うのだろうか、ここら辺の軍事のことにはやけに詳し人だ。僚機は、タノ・ウィーバー中尉、またこいつもジーオンの同期、ユルト・ムラーニ少尉はレオナルやマーチスの同期だ。レーダー員は後々紹介するとしよう。
「各隊長集めて話ってなんだ?」
初めに口を開いたのはライトイヤー大尉、適当に円を描いて並べた椅子、彼の対面に座るラメイトさんに聞く。
「戦争になるわ」
「あ?」
「え?」
もはや局地的戦闘ではなくなるということか?もうちょっと話を聞かないとラメイトさんは何が言いたいのか分からない。
「トリークグラードがライスヤード国境沿いに対空砲台を設置したらしいわ、これに対応するために空軍も重い腰を上げて陸軍と合同で高射部隊をライスヤードに展開するらしいの。それじゃあローレニアも黙ってないだろうからね、そういうこと」
なるほどね。
「てこたぁ、やっとF-2の出番か。お前ら戦闘機隊ばかりに任せるのも申し訳なかったところだ」
攻撃機は出番がほぼない、エスイン大尉は腕がなる様子だが。
「何人死んでると思ってるのよ、あなたも死にたいの?」
「おいおい、そうカリカリするな」
エスイン大尉もそんなつもりじゃなかったろうに、俺の隊長や部下を合わせて八人も失ってるんだ、情緒不安定になってもおかしくないか、少し苛立っているラメイトさんをライトイヤー大尉が宥める。
「ホーク隊のトマーソンやジキールもまだ若いし、スレイヤのスカイレイン隊も私のウィンドブレイク隊も経験が少なすぎるわ、どうしろって言うのよ」
彼女は頭を抱える、そんな深刻にならなくても、と言ってやりたいが戦闘機隊隊長として彼女なりにいろいろ考えてくれているのだろう、変にフォローするのはやめておこう。
「1回落ち着け」
そう、俺がなにかしなくてもライトイヤー大尉が無難に対応してくれるし。
「で、スレイヤ、イエローラインと赤翼、一戦混じえてどうだった?」
いや、どうって・・・・・・。
「ウイジクランの全エースを集めても勝てるかどうか」
冗談でもなんでもなく俺は本気だ、その例えが妥当だと思う。
しかも前回来たのは赤翼が一機に無人機が三機、赤翼って五機ぐらいいるらしいし、全部一気にこられたら瞬殺だ。
「そうか、生きて帰ってきてくれてよかった、アストロン隊は残念だが、生きているやつで乗り越えるしかない」
ライトイヤー大尉の言うことは正しい。
「そいや、ラメイト大尉、言っちゃなんだが補充の話はないのか?」
エスイン大尉が続ける、それは俺も気になっていた、なんたってここは一応最前線だ、パイロットが多いに越したことはない。
「今のところないわ」
マジか、戦闘機隊三隊で回すしかないか。
「F-4ならF-2よりも空戦はできるだろう、なんかあったら言ってくれ」
と言うのはシュリン大尉、今は戦闘機隊でも攻撃機対でもなく臨機応変、任務飛行隊的な役割で古い機体だかパワーは桁違い、人が足りない時は頼ることにしよう。