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アザー・スカイ ー死神と戦うエースー  作者: 嶺司
ジル・スレイヤ
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第15話 追うな

《ガル!応答しろ!おい!》


俺の無線に反応する奴はいない、ベイルアウトしたようにも見えなかったし、なんせパラシュートその物がが確認できない。


《クソッタレ・・・・・・》


俺は操縦桿を強く握り締め、いつの間にかどこからともなく現れガルを落として、優雅に三機で飛んでいる深青色をしたF-35を睨む。


《よくも、よくも隊長を!》

《シャトール!ダメだ、やつを追うな!》


隊長を失い完全に我を失っているシャトール、俺の制止も全く耳に届かずイエローラインの追撃を始める。

しかし、それこそがイエローラインの望んだ形。


《ウィンドブレイク隊は赤翼の対応、俺はシャトールを助ける!》

《はぁ、みんな死んだわね・・・・・・、やれるだけのことはやりましょう》


既に諦めているラメイトさん、しかし、どうせ死ぬなら精一杯のことはやろうとシャトールについて行けれなかった四番機と合流、息ぴったりに無人機から回避しつつ旋回し赤翼と対峙する。


《トリーク機は全機落ちてるか・・・・・・》


イエローラインの仕業か、既にこの空には俺たちとローレニアしかいない、早くシャトールを連れ戻さないと。


《シャトール!落ち着け、戻れ!》

《シャトールっ!》


しかし彼女に俺の声もアレイの声も全く届かない、ついに敵一番機のケツについて必死のドッグファイトを繰り広げて、援護につこうとする俺らの対応に敵二番機が接近してくる。


《くそっ、どきやがれ!》


訳の分からない動きをするF-35に妨害され、俺の視界から消えたと思うとコックピットに捕捉されたとアラートが鳴り響きたまらず三機で散開。

しかし敵二番機は俺を隊長機だと知ってか執拗に追いかけてる、ミサイルアラートが鳴りだし俺はフレアを使って離脱。


ドバーーン・・・・・・。


ドッグファイトで気を取られていたシャトールが後ろから迫った三番機にケツを取られ被弾。

煙の弧を描いて空中を進むとベイルアウトすることも無く爆発四散した。

まさに、一瞬の出来事だった。


《くそっ、くそっ!》


何も出来なかったことに腹を立てているメイセン。


《ハァハァハァ・・・・・・》


この息遣いはアレイか、限界だな。


《スレイヤどうするの、こっちも限界よ!》


無人機に翻弄され赤翼に後ろを取られているウィンドブレイク隊、あっちも無理、か。


《スカイレイン1からスターアイ、アストロン隊がやられた・・・・・・、ホーク隊は待ってられん、作戦中止、撤退する》


俺も追われているし最早どうにもできん、クソッタレがっ!今にもキャノピーを殴りそうになってグッと堪える。


《なにっ・・・・・・、レーダーでも確認、帰投を許可する・・・・・・》


よし、撤退許可は降りた。


《お前ら撤退だ、俺が足止めする。メイセン、アレイを連れてけ》

《え、あ、でも》

《いけっ!》


前の隊長程上手くいくとも思えんが、これが最善。

迷うメイセンを怒鳴って追い払いアレイと共に離脱させ、ウィンドブレイク隊も一度散開して進路を南にとり全速力で離脱していく。


《さてさて、足掻かせてもらうか》


操縦桿をめいいっぱい引き込んで急上昇、後ろを覗くとイエローラインの二、三番機が俺の後ろにつこうと接近してきていて、その他の周囲を確認すると、一番機は俺の出方を伺っているのか少し離れたところを旋回している。


問題は赤翼だ、味方機を追撃するために旋回し進路を南にとろうとしている。


《させるかよ!》


遠いが赤翼の後ろに引っ付いて飛ぶ無人機を捕捉、アクティブミサイルを発射するもクルクルッと無人機は旋回してさすがに躱される。

無人機であの機動だ、理不尽すぎる。いや、無人機だからこそ、か。

すると赤翼後ろを、文字通りコバンザメのごとく飛ぶ無人機はブワッと散開。


(おっと、まずいな・・・・・・)


ビーーー!


くっ、赤翼に気を取られて後ろのイエローラインを意識していなかった。

コックピットにミサイルアラートが鳴り響きたまらず離脱を試みるも、真後ろには二発のミサイルが白い煙を吐きながら俺に近づいてくる。


《こんなところで、死ぬ訳にはいかないんだよ!ガルとシャトールの仇だ!》


フレアを発射しコークスクリューでミサイルを回避、すぐさま体勢を立て直し、力一杯のハイGターンで右に旋回、頭の血が足元に降りて意識が遠くなりそうになるが、その前に後ろに迫っていたイエローラインの真横を捉える、が。


《マジ、か・・・・・・》


コックピットが一瞬暗くなったので上を見上げると、太陽に被るように1番機が至近距離で機首を俺に向けていた。


《まだだっ!》


俺は諦めん、二、三番機に向かって、撃ったら勝手に目標に向かって飛んでっいてくれる赤外線ホーミングミサイルを二発放って左に急旋回、離脱を試みるも一番機がピッタリ俺の後ろに付き、苦し紛れに撃ったミサイルもフレアで簡単に躱わせれている。


こんなん無理ゲーだ。


有人機四機、無人機三機をたった一人で相手している、よくやったよ、自分で自分を褒める。

ここまで時間を稼げば大丈夫かな、F-35は俺たちF-16より足は遅い。あの赤翼は知らんがな、見た感じ速そうだ。


俺は一か八か一気に急降下、無理やり速度を上げて進路を南にとって離脱を試みる。


すると後ろをピッタリくっついていたイエローラインの一番機はいつの間にか俺の後ろからいなくなり、一瞬で見失ってしまい。


上空を飛んでいた赤翼も反転、無人機を引き連れて北へと戻っていく。


〈流れ星、覚えておくよ〉


この男とも女とも分からない声はイエローラインの一番機だ、別にお前に部隊マークを覚えられても嬉しくともなんともない。


《クソッタレが・・・・・・》


口は悪いが、その言葉しか出てこなかった。



先に逃がしたスカイレイン2、スカイレイン3、ウィンドブレイク隊にやや遅れて西クリンシュ基地に帰投。


駐機場に到着すると、ふー、っとため息をついた。


シャトールもそうだが、入隊同期で今まで隊は違えど一緒に飛んできたガルが死んだのはさすがに堪える。


嘘だと言ってくれるなら言って欲しかった。


いつまでもここにいても仕方ない、キャノピーを開けるとタラップが横付けされ、レノイが上がってきてヘルメットを受け取ってくれる。


「お疲れ様・・・・・・」

「ああ」


いつもより言葉少なく交わしてスタスタとタラップを降りると。


ガバッ。


アレイがもの凄い勢いで俺の胸に飛び込んで来て、ギューッと俺の事を抱きしめる。


「すまんな、心配かけた」

「本当ですよ・・・・・・」


薬が効いているのか過呼吸にはなっていないようで良かった、それに一安心しつつ彼女の背中をポンポンと叩く。


「スレイヤ、ごめん、私・・・・・・」


何やら責任を感じているのか、ラメイトさんが俯き気味に話しかけてくる、朝イチで自分は上司だと言いつつも空戦では俺が逃がしたからな、責任を感じても仕方ないか。


「なに、気にするな。ガルとシャトールは残念だったが・・・・・・」


場は静まり返ってしまい、俺にしがみついたままのアレイはまた一際ギュッとしがみつく。泣いてはないようだが、意外と強い子だ。


するとパタンとラメイトさんが力なく地面に座り込んでしまい、僚機の三人が慌てて手を差し出すが、彼女はそれを跳ね除ける。


「私は戦闘機隊の隊長なの・・・・・・、守れなかった・・・・・・」


涙を流し地面を濡らすラメイトさん、ジーオンが背中をさすってるが落ち着く様子はない。


なんて声をかけたらいいのかな、辛いは辛いが意外と冷静な自分が少し怖かった。もはや戦争、仕方ないと言えば仕方ないのだが、そんな一言で終わらせていいものなのか?


「みんなの分も生きろ、そうすれば報われる」


それをラメイトさんの肩を叩いて言うと、彼女は伏せてしまい地面を叩きながら泣いてしまった。


「ジーオン、ラメイトさんを任せたぞ」

「はい・・・・・・」


俯きながらも彼女の背中をひたすら擦る。


「メイセン、アレイと一緒に待機室にいろ、俺は報告に行ってくる」

「はい」


なかなか俺から離れようとしないアレイの腕をメイセンが「行くよ」と引っ張るがビクともしない、不安でどうかしてしまいそうなのか?


俺はアレイの両肩を持って少し前かがみになり彼女の目を真っ直ぐ見る、彼女も眉間にシワを寄せて不安そうな顔をしているが俺の目をちゃんと見てくれる。


「俺はどこにも行かない、大丈夫だからメイセンと待機室で待っててくれ」


コクリと頷くアレイ、足取りは重いがメイセンと一緒に待機室へと歩いていく。


「無事でよかったわ」

「何もよくねぇよ、ガルとシャトールは死んで、俺は生きてるのが不思議なぐらい、ラメイトさんは混乱してるし、なんて報告すればいいんだよ・・・・・・」

「・・・・・・私も行くわね」

「ああ、飛行隊長を殴りそうになったら止めてくれ」


そして俺はレノイと共に報告のため飛行隊長室へと向かった。


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