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プロセルピナ編2

現在ツヴェーデンは暫定評議会によって統治されていた。

暫定評議会議長は民主的に選ばれた。現議長はアルブレヒトだった。

魔女事件がツヴェーデンの政治に与えた打撃は大きかった。なにせ各省庁の長官クラスまで粛清されたからだ。共和国議会議員は一人残らず全員殺された。とにかく人材がいなかった。特に軍が受けたダメージは大きかった。アルブレヒトは軍に集中的な再編を行った。魔女事件で政府が特に打撃を受けたのが、軍隊、魔法省、警察だった。そのため犯罪の検挙率が大幅に低下した。かつ犯罪率の上昇を招いた。

そしてこの暫定評議会は魔女事件からの復興と回復を目指していた。

そのまっただなかに、モンスターによる虐殺事件が発生した。アルブレヒトは頭を痛めた。

どうしてかくもこのような事件が起こるのか。せっかく政府の再建が進んできたというのに。

アルブレヒトは善良な男だった。今回モンスターを撃退した人物を探させた。

それはテンペルの騎士だったようだ。アルブレヒトはテンペルに感謝を伝えた。

アルブレヒトは対モンスター専門特殊部隊を設立させた。



マグノリアはまたしても軍の施設に現れた。闇の槍で次々と研究員たちを殺害していく。

研究員たちは逃げまどった。

この施設ではモンスターの研究が行われていた。軍の一部がこの研究に携わっていた。このことがマグノリアを引き付けた原因だった。マグノリアの前に、アルブレヒトが設立した特殊部隊が現れた。

「こいつか、軍のメンツをつぶしてくれたのは」

「ぶっ殺してやる!」

しかし特殊部隊はマグノリアの絶対恐怖に敗北、全員死亡した。

特殊部隊員の死体を見るとマグノリアはニイっと笑った。



「特殊部隊が全滅した!?」

アルブレヒトは議長室で報告を受け取った。同時に軍の一部がモンスターの研究をひそかに行っていたことも知った。それを知ったアルブレヒトは激怒した。即刻研究の全面破棄を命じた。

怒りが通り過ぎたアルブレヒトには無力感が残った。

軍隊の兵士でさえ倒せないとはどうすればいいのか。しかし希望がないわけでもない。

モンスターを退けた若者がいたではないか。それでも彼は政府の、行政の人間ではない。



セリオンとアリオンは庭で剣術の訓練をしていた。アリオンがセリオンに剣を打ち込んでいく。

セリオンはそれを軽くさばいていく。とちゅうとちゅうにアリオンの鋭い一撃が見える。

「アリオン、腕を上げたな」

「俺だっていつまでも子供ってわけじゃないんだ! 俺も戦えるさ!」

アリオンは魔女事件の際、部隊の後方に配置された。どうやらそれがおもしろくなかったらしい。セリオンはスルトの判断自体は正しかったと思っていたが。

「!? 何か来た!?」

「? どうしたんだよ、セリオン?」

セリオンは気配を感じた方向へ走った。すると地面からマグノリアが現れた。

「なんだ、こいつ!?」

「アリオン、危険だ! 下がれ!」

セリオンはマグノリアの前で大剣を構えた。

「北デマッテイル」

マグノリアがしゃべった。

「北で待っている?」

「北ノクレーター」

「北のクレーター?」

そう言い残すとマグノリアは地中に姿を消した。



セリオンはマグノリアの招きに乗ることにした。

「北に行く」

セリオンはエスカローネに告げた。

「気をつけてね」

「ああ」

セリオンはエスカローネを抱きしめた。結婚してからは幸せだった。

セリオンはエスカローネと結婚できてうれしかった。

愛するべき、愛している、愛しい人と結ばれたのだから。

セリオンはアンシャルにも北へ行くと告げた。

「途中クローナ Krona の町で休むといい。それに情報収集もな」

挨拶をすませるとセリオンは北へ出発した。北で何が起こっているのだろうか。セリオンはアンシャルに言われた通り、クローナの町にやってきた。

まずクローナで宿を取った。セリオンはクレーターについて、宿屋の主人と話をした。

どうやらここから北西に行ったところにクレーターがあるらしかった。

次の日、セリオンはクレーターがあると言われた場所を目指した。本当にクレーターなどあるのだろうか、セリオンはそう思った。実際に行ってみるとクレーターらしきものを見つけた。

「これか」

クレーターの中心には大穴があいていた。どうやら先に進めるらしい。

「あそこの中へ入れそうだな」

セリオンは大穴の中に入った。中は意外と広々とした空間になっていた。地下へと進んでいく。

途中まで来ると何かが噴き出していた。

「これは……星のエネルギーか」

下からは星のエネルギーが噴き出ていた。なんとか足場になりそうなところを探す。ここには浮遊している足場があった。セリオンは慎重に足場を見つけて進んでいく。

途中、やや大きめの地面に渡った。すると上からマグノリアが落ちてきた。

「また会ったな。今度こそ倒す」

マグノリアはテレキネシスで等身大の岩をセリオンに飛ばしてきた。セリオンは巧みにかわす。

大きな岩が投げつけられた。セリオンは蒼気を纏うと、岩石を一刀両断にした。割れた岩石は下方へと転がっていった。

セリオンは蒼気でマグノリアを斬りつけた。マグノリアに衝撃が襲う。

マグノリアは口から闇の光線を放った。セリオンは蒼気を叩きつけ、闇の光線を斬り裂いた。

マグノリアから一メートルほどの球が放たれた。セリオンはそれをジャンプでかわし、蒼気の刃でマグノリアを上から斬りつけた。さらにマグノリアの口に蒼気の突きを叩きこんだ。致命的な一撃だった。

マグノリアは倒れ、地底深くへと落ちていった。

「これで終わりか?」

セリオンは底を眺めた。まだまだ先があるようだ。それにセリオンにはマグノリアを倒しても終わった感じがしなかった。地底の中央から何か気配を感じる。

まだ、何かいる!

セリオンは地底の中央に、深淵の中心に向かった。

セリオンは広い地面に着地した。そこには新しいモンスターがいた。女性の上半身に丸い下半身、触手を持ち、浮遊していた。

冥界の女王プロセルピナ Proserpina である。

セリオンは大剣を構えた。周囲からは青い星のエネルギーが噴き出していく。

「プロセルピナか。来る!」

プロセルピナは触手を鋭く変えると、セリオンを突き刺してきた。

セリオンは回避した。

プロセルピナはもう一つの触手でセリオンを打ち付けてきた。セリオンは大剣で防いだ。

セリオンはプロセルピナに反撃した。下から斬り上げる。プロセルピナは下がってかわした。

プロセルピナは魔力を集中させた。魔法力が爆発し、広がる。セリオンはダメージを受けた。

「くっ!?」

プロセルピナは両手から魔法の光線を放った。セリオンは大剣でおさまえた。

「はあああああああ!」

セリオンは押された。光線が圧力を上げてくる。

「負けるか!」

セリオンは踏ん張った。セリオンは大剣で光線を打ち破った。

プロセルピナは魔法の雨を起こした。上方から降り注がれる。セリオンは走ってかわした。

そこにプロセルピナが急接近し、触手でセリオンを打ち付けた。

「うっ!?」

セリオンは弾き飛ばされた。すぐに起き上がる。

プロセルピナが触手をナイフ状に変えて、薙ぎ払ってきた。

セリオンはそれをかわして、プロセルピナに一撃を叩きこんだ。プロセルピナは後ろに退いた。

プロセルピナは魔法の球を撃った。球はばらばらにはじけ飛んだ。

セリオンは蒼気を放出した。蒼気で弾けた球をやりすごした。

プロセルピナは触手を鞭状に変えると、セリオンを離れたところから一方的に攻撃した。

「くっ!? リーチが長いな!」

セリオンは触手のリーチの長さに苦戦した。プロセルピナは一方的に攻撃してくる。

しかしセリオンは隙を見つけた。

セリオンはプロセルピナの隙を突き、「雷鳴剣らいめいけん」を放った。

雷電がプロセルピナに打ち付ける。これはプロセルピナに大きなダメージを与えた。

プロセルピナは両手で極光を撃ってきた。セリオンは蒼気を全開してそれに耐えた。

プロセルピナが手詰まりになった。

セリオンはプロセルピナに接近し、蒼気の刃でその上半身を貫いた。プロセルピナから紫の血が流れた。

プロセルピナは深淵へと落下していった。

その時、周囲から噴き出る星のエネルギーが増した。セリオンが今までいた地面もエネルギーの放流で持ち上げられた。

「上昇していく!?」

星のエネルギーは火山の噴火のように爆発し、吹き上げていった。



セリオンは大穴へとなんとか脱出した。上昇する足場をたよりにつたってきた。

大穴から星のエネルギーが噴出した。外は夜だった。星のエネルギーは上空高くまで湧き出ていた。



セリオンは聖堂に帰還した。

エスカローネが待っていた。

「エスカローネ!」

「セリオン!」

エスカローネはセリオンに跳びついた。そんな彼女をセリオンは抱きしめた。セリオンはエスカローネのにおいやぬくもりを感じた。

「おかえりなさい」

「ああ、ただいま」

「よく帰ってきたな、青き狼・セリオン!」

セリオンはエスカローネを離して、アンシャルと抱擁をかわした。

「おかえり、セリオン。私はまた心配していたのよ」

「母さん、ごめん」

セリオンとディオドラが抱きしめあった。

「でも、あなたはそういう存在なのかもしれないわね」

「そういう存在って?」

「戦うことがあなたの存在意義なのね、きっと。あなたはこれからも戦っていくのよ。でもその戦いはと血なまぐさいものじゃないわ。もっとほかにあるはずよ。あなたは戦って何かを勝ち取ったり、守ったりするんだわ。さあ、エスカローネちゃんのところに行きなさい。セリオン、彼女はあなたが守るべき人でしょう?」

「うん、ありがとう」

セリオンはエスカローネのもとに来た。

「セリオンはこれからも戦い続けるのね。セリオンは戦う人、そして愛する人だから。戦うことと愛すること、それがセリオンなのよ。だから私はセリオンのことを待っていられるわ。セリオンは私のところに帰ってきてくれるって信じているから」

エスカローネはセリオンと手を握った。セリオンはうれしかった。

自分には愛する人が、守るべき人がいる。

それだけではない。テンペルには多くの兄弟姉妹がいる。

セリオンはエスカローネの手をもっと強く握った。

「さあ、行こうか」

「ええ」

セリオンは戦う、これからも、生きている限り。そして愛する、他者を、兄弟姉妹を、なによりエスカローネを。



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― 新着の感想 ―
[良い点] マグノリアが最強の敵かと思っていましたら、 大ボスプロセルピナの登場に手に汗握る展開になりましたね。 今回もエスカローネの下へ帰れて良かったです
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