表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【青いブルース】  作者: トーギィ
5/19

5話『災厄の竜』

大会に優勝したミウと俺はコロシアムを出た。


エドガ村長、メイさん、トーギィ、アイリ。

4人が出迎えてくれた!

村長夫妻は心配してミウに駆け寄る。


トーギィとアイリは眠らされていて、目が覚めると武器屋の物置にいたらしい。

あの不正審判の仕業か。


「村長すみません。沢山の人に能力見られました……」


「仕方が無いだろう。よくミウを守ってくれた。だが、このまま傭兵師団がミウと君を放っておくとは思えん。」


「俺はガルム村民で、村長のお力添えをする事が目的です。捕らわれている家族の為にも。」


「それは嬉しい話だが、どうやら客人が来たぞ。師団長ご一行様だ。」


格の高そうな白い師団服。

先程の5人組だ。

街の人は自然と避ける。


「エドガ殿、お久しゅう御座います!」


5人とも村長に膝を付いている!

村長って何者なんだ!?


「よしてくれザムテス。今の俺は、ただの村長だ。」


2人は談笑している。


「傭兵第1師団長のナタリンと申します。」

女性師団長が俺の前に来た。

メイさんに負けない程の美しい獣族の女性、20代後半くらいだろうか。


ナタリン師団長から報告を受けた。

あの不正審判はネルルの仲間にいた男に買収され、優勝候補の3人をクーガ村で偵察。

トーギィとアイリを眠らせ大会を不参加にさせ、試合ではミウを眠らせた。

神聖な大会を汚した重大刑罰に処される。


ネルル達は試合後の審判への言葉が自供と取られた。

審判を買収した仲間の男は金持ちの御曹司らしい。

学校関係者も観戦していたらしく、ウィズ王国の魔法学校で厳しい処罰が課せられるそうだ。



第2第3第4師団長がミウを取り巻いた。


「エドガ団長のお嬢様でしたか!是非第2師団に!」

「あのハンパねぇ強さはエドガ団長そのままだなw」

「団長の技を使うから俺達は騒いでたんだぜ?w」


「こら!勧誘は後でしょ!災厄対策会議に行くわよ!」


ナタリン師団長の一声で静かになった。

ご一行様はエドガ村長に一礼して城に向かった。

ご一行様……とてつもないオーラで俺はビビった……。

5人全員、村長が第1師団長だった頃の愛弟子だとメイさんが教えてくれた。

村長……凄い人だ。



ミウと俺は大会賞金を全額アイリに渡した。

「ブルーくんまで……。いいの?」


「もちろん!アイリさんの魔法を何回も受けて魔法防御を覚えて、最後の決め手はトーギィさんから伝授された『胴締めスリーパー』ですから。4人の勝利です!」


「うう、2人とも……ありがとなっ!」

トーギィがまた感動して泣いた。


「家が建ったら遊びに行きますね!」


「さあ、明日は満月だ。お開きにして帰ろう!」

そう言った村長がメイさんに支えられ馬車に乗る。

トーギィとアイリはクーガ村へ帰って行った。



長い1週間だった。

村に戻ると、ラルフが自宅裏の物置を片付けて俺が寝泊まり出来るようにしてくれていた!


「あとは自分で稼いで好きに改装してくれ!」


「ラルフありがとう!!」


ラルフと風呂に行き、出来事を話した。


「……そうか。しかしあの汚ねぇ格好して痩せこけた人族が1週間で偉業を成し遂げて帰って来るとはなw」


「なぁ、ラルフ。師団には入らないのか?」


「俺は集団とか規律に縛られるのが嫌いでね。」


「そうか。」


「ブルーも大会優勝者だから師団から目を付けられてるかもな。勧誘される事があったら、自由を取るか国を守るか、よく考えてみな。」


「そうだな。」



いい湯だった。今日はよく眠れそうだ。

おやすみ、シスター。そして希望を残してくれてありがとう。




よく眠れた。

奴隷小屋のように、号令で叩き起こされる事はもう無い。

毎日清々しい朝だ。


まだ知らない人も多いから、酒場で朝食も兼ねて顔を出しておこう。

「おはようございます。」


席は全て相席。1人余所余所しいのは嫌だから、人のいる席に座り会話に混ざった。

……皆良い人で賑やかだな。

奴隷小屋では多人数なのに、みんな死んだような顔して静かだったな。


朝食を摂っていたら村がザワついてきた。


『異界門』だ!!


すぐに村長宅に行った。

異界門は人の多い所に現れる。

レオン王国領の災厄は王国以外の村に出現した事が無いそうだが、なぜか今回はガルム村の上空に出現した!!

王国からの援軍は急いでも30分かかる!

村が危ない!!


村長が指示を出す!


「子供達と老人を村の外へ避難させろ!

ハンター達は竜が現れたら円のように囲め!

竜の攻撃は尻尾と口から吐く炎だ!

竜の動きは遅い!しっかり見てから攻撃せよ!

竜の弱点は腹と目だ!」


単純明解かつ的確な指示だ。

さすが元師団長!


『ゴゴゴゴゴ……』

渦から産まれるかのように竜が頭から出て来る!



「来るぞ!!」

カンカンカンカン!!


「祭りじゃぁぁ!!」


竜の着地の振動が激しい!

ラルフとミウが俺の隣に来てくれた!心強い!


「離れろ!距離をとれ!」

村長の指示で竜を囲んでいる全員が下がる!


『ギャァァァム!!』

目が1つの竜が、おぞましい咆哮を放つ!


全員無傷!


「まだ動くな!炎を吐いた後の隙を待て!」


竜が炎を吐いた!全員身をかわす!


「突撃ぃ!!」


「うおおお!」

一斉に攻撃する!

剣、斧、槍、弓が次々と竜の巨体に刺さっていく!


……俺だけダメージを与えていない!

これが『種族差』ってやつか。

くそっ!!


「まだ1割だ!一旦下がれ!」


竜が尻尾をぶん回す!!


ミウは下がる時は俺の後ろに隠れ、攻撃の時は猛突進する。

これは守りに重点を置いた方が良さそうだ。


「突撃ぃ!」

村長の指示どおりに全員が行動している!

よく鍛えられている!


このヒットアンドアウェイ作戦を数回繰り返し、竜の体力を大幅に削る!

竜の動きがかなり鈍くなった!


「油断するな!全員下がって防御!……来るぞ!」


竜の巨体が光り、1回目とは比べ物にならない激しい咆哮を放つ!!

『グウオオオオン!!』


「うおぉぉぉぉ!!!」

俺は大の字でミウの前で咆哮を受け止めた!!

ふっ飛ばされたがミウを守れた!


他の人も全員ふっ飛ばされる!

立っているのはミウと、何故か回避しているラルフだけだ!


「サンキュー、ブルー!後は任せな!」


「ガルム流技……無双!」

ミウが竜の腹を何度も切り裂く!


『グギャァァァ!』

竜がうつ伏せに倒れた!


俺の目の前にいたラルフが『フッ』と消えた!

次の瞬間、ラルフが竜の前に現れ目を槍で刺している!

『ギキャァァァ!』


ラルフが叫ぶ!

「ミウ!!決めろ!!」


「ガルム流技……竜兜割り!」


ミウの渾身の技が竜の頭を串刺しにした!!


『ギャァァァ………』


災厄の竜を撃破した!!


竜の屍はスーっと消え、オーブや宝石が沢山残った。


「うおおお!」

「よっしゃー!」

「勝ったぞ!」


村人は全員喜び、抱き合ったりハイタッチしている。


恒例の戦利品の山分けが始まった。


ドルトン弾が無かった頃の帝国は、ハンドボムを持った兵が数百人がかりで、死者を多数出しながら何とか災厄の竜を倒していた。


しかし、この村は30人程度のハンターだけで10分足らずで竜を倒した。

埋めようの無い種族差だ……。


怪我人は少なく、死者も無し、村の被害も最小限。

災厄を何度か経験しているベテランハンターもいるそうだ。

そして村長の最高の指揮。

集団戦闘初心者の俺でも解り易かった。


この村は強い……!


何事もなかったかのように、村長とメイさんはテラスで紅茶を飲んでる。



村に3台の師団馬車が到着した。

30人程の黒い平師団服の団員が馬車から降り整列した。

ザムテス師団長官とナタリン第1師団長だ。

2人が村長の前で膝を付く。


「エドガ殿、お見事で御座います!」


「ザムテス、ここでは堅苦しい事は無しだ。」


「はい、では。」


メイさんが席を外し、村長、ラルフ、ザムテス、ナタリンの4人で

テーブルを囲んだ。


「今回は、援護が遅れた事を御詫びします。」


「よしてくれ。この村の戦力は、師団1つに退けを取らないぜ?俺を誰だと思ってる。」


「はっはっは!そうですな!そこは我々が1番解っておりますぞ!」


「ザムテス。第1師団を連れて来たのは建前で、本題は援護ではないだろう。何だ?」


「オホン、ではナタリン。」


「はい長官。」



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ