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【青いブルース】  作者: トーギィ
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1話『絶望の奴隷』

初投稿の素人です。誤字・表現等、お見苦しいかも知れません。

個人差もあると思いますが、1話10分程度で読めるかと思います。

暇潰し程度にお付き合い頂ければ嬉しいです。


プロローグ『3国と災厄の竜』


魔族・獣族・人族、3種族が国を創り暮らす世界。

空に浮かぶ月が1ヶ月に1度満月になる。

満月になると、どこかの国の空に

渦状の異界門が現れ『災厄の竜』を

1体放つ。

20メートル程の巨体から炎や衝撃波を放つ竜は、倒されるまで破壊の限りを尽くす。

満月になると各国は災厄との戦闘に備え、現れたら自国の戦術で討伐する。

そうして災厄と幾度も戦い、多くの

犠牲者を出しながら

この世界は守られてきた。




1話『絶望の奴隷』



逃走した1人の奴隷が警備隊を振り切り、高さ30mはあろうかという城の『見張り塔』から飛び降りようとしている。

生気の抜けた青い目、汚く延びた黒い髪、元の色が白とは思えない程に茶色く汚れた奴隷服。

二十歳に満たないその少年が、人生を終わらせようとしている。



「おい!あれを見ろ!」

「塔から誰か飛び降りるぞ!」

「いや~!やめて!」

「早まるな!」


こんな奴隷人生……もう終わりだ。

俺はシスターの元に行く……。



ヒュマ帝国。人族の王が治める人族の国。

先代国王は、災厄時には軍隊に城の守りを専念させ我が身を守り、国民の声などには聞く耳を持たない独裁家だった。

世襲により王に就いた現在の国王に代わってからは独裁性がより強くなった。

国民には多額の重税が課せられ、貧困生活に苦しむ。

まともな生活をしているのは城に住む従者たちと3人の貴族だけ。


国は警備隊を持ち、城や街や国境に配備し、国に反旗を翻す者や許可なく国境を越える者を処刑する。


窃盗や殺人を犯した犯罪者は警備隊に捕まり、奴隷として貴族に売られる。

男は貴族から重労働を強いられ、女は貴族の収入源に性奴隷となる。

奴隷が逃走して捕まると処刑される。


貴族は軍隊を持ち、災厄や他国と戦う力を持つ。

国は国民から絞り取った財を貴族に支払い防衛させている。



東の郊外に教会があり、シスターが俺たち孤児と暮らしていた。

孤児は、行き場を無くした奴隷の子や、性奴隷の少女が望まず産んだ子達だ。


孤児の俺達は、産まれた時から負け組だった。

奴隷の子供というだけで罪の国だ。



子供たちの未来を打開したいと異国からやって来た『シスター・マイ』は、ベールより長い青髪の美しい女性。

俺たち奴隷予定者の孤児に文字、算数、道徳を教えてくれた。

幸せだった……。15歳までは。




「ねぇシスター、3国旅行記を読んでもいい?」


「ブルーくん、君は本当に本が好きね。」


「だってシスターが文字の読み方教えてくれたから読まないと勿体ないじゃん!」



【3国旅行記】

『魔族』

頭部に10センチ程の角が2本あるのが特徴。

魔法で暮らす信仰心の高い種族。

薬や聖水を作り出す事ができる。

災厄との戦いには、魔法騎士団が迎え撃つ。


『獣族』

獣のような耳と尾。

食欲旺盛で、狩りや農業が得意な種族。

力と早さを兼ね備えた強靭な体で戦闘を好む。


『人族』

知能と文明が高く、武器や道具などの作成を得意とする。

武器や飛道具を使用した集団戦術で災厄と戦う。


【ウィズ王国】

大陸の『北』にある魔族の国。

各国の教会を統べる大聖堂と魔法学校がある。

厳格で娯楽も無く街中が静かな国。

過去の戦争で人族に滅びる寸前まで追い込まれる。

現在国交は閉鎖的な国で魔族以外は獣族が少し暮らしている程度。

人族は入国ができない。


【レオン王国】

大陸の『東』にある獣族の国。

街の中心にあるコロシアムがシンボル。

毎月武道大会が開催される程に戦いを好む獣族の国。

武道大会には世界各国から強者が集まる。

戦闘民族だが争いは少なく他種族にも寛容。

傭兵師団があり、各国の要請に赴く。


【ヒュマ帝国】

大陸の『西』にある人族の国。

警備隊が国の治安を守り、軍隊が災厄から国を守る。

犯罪を犯した国民は奴隷として一生を過ごす。

過去にウィズ王国と戦争し、兵器で災厄に荷担してウィズ王国を壊滅寸前にした歴史がある。

現在は停戦中。




3国旅行記は、ある旅人が書いた割と新しい文献だ。

小さい頃は文字が読めず『エムナーとりゅう』や『青いうさぎと赤いうさぎ』などの絵本の絵を見て頭の中で物語を妄想していた。


大きくなって文字を覚えてからは3国旅行記のような『見聞』や『地図』という実録に興味を持った。

俺は地図を飽きずに何度も見ていた。


他国に行った事がない俺は、いつか本の筆者みたく旅をしたいと憧れたものだ。

全ての国に滞在していたシスターに質問攻めをし、よく困らせていた。

それでも嫌な顔をせず、優しい笑顔で答えてくれた。


そんなシスターを皆が大好きで、寝る時はシスターの横を奪い合って喧嘩をしたものだ。


月に1度行われる音楽団の演奏と演舞をシスターと皆で見に行った。

満月に恐ろしい災厄の竜が来たら皆で身を寄せ合った。

少ない食料を皆で分け合った。

貧しくてもこの『家族』達と平和に暮らしたい。

願いは、たったそれだけだった。


毎夜、シスターと皆でお祈りしてから寝た。


『この世から災厄が無くなりますように』




俺があの教会から連れ出されて2年。

俺はドルトンという貴族に囚われていた。

奴隷服を着て汚く臭い劣悪な小屋での集団生活。

工場で毎日罵倒されながら武器や兵器の部品を作り、疲れても夜まで休ませてもらえない。

食事など2日に1度食えたら良い方だ。


1つの街を破壊出来る爆発兵器『ドルトン弾』と殺人兵器『ハンドボム』の作成に明け暮れる。

こんな物を作る金があるなら飯を食わせてほしい。

死ぬまで終わりのない奴隷労働。

ここは、餓死する者や自殺者も多い人生の終着点だ。


月に1度、教会に礼拝しに行ける事がシスターに面会できる唯一の俺の生きる糧だった。


しかし前回の災厄の竜は教会を襲った。

皆の祈りも虚しく、教会は瓦礫の山となった。

もうシスターはいない。

俺と同じ境遇の子供達もいない。

やり場のない怒りと悲しみ。



こうして俺は、たった1つの小さな生きがいすら失った。


じゃあな……クソ帝国。




「この奴隷の少年、生きてるぞ!」

「うそだろ!」

「あんな高い塔から逆さまに落ちたんだぜ!?」


あれ……死ななかったのか?

首が少し痛いけどキズも無いや。

騒ぎになってしまったか……。


「見つけたぞ!逃走者!」


帝国警備隊だ!

殺される……!

丁度いいか……。

殺してくれ……。


警備隊の槍が俺の背中から刺さり胸を貫通し、腹には短剣も刺された。

今度こそ終わりだ……。



……どういう事だ?

多少痛むが俺は生きている。

夢ではないようだ。

いま目を開けると騒ぎが更に大きくなりそうだ。

死んだふりでもしておこう。


俺は馬車で何処かに運ばれているようだ。

荷台から投げ捨てられた。



人の気配がなくなった。

目を開けると辺りは暗くなり、俺は国境の外に捨てられていた。

辺りには墓石が無数にある。

奴隷の墓か……。

俺のように捨てられた奴隷の死体を心ある誰かが埋葬してくれたのだろう。


さて、どうしたもんか……。

槍で貫かれたキズも無くなっている。

奴隷生活で鍛えた体は伊達じゃないってか?

いや、違うだろうな。

それよりも……何なんだ、この解放感は?

死なないうえに、失う物もないからだろうか。

それとも地獄の奴隷生活からの解放感だろうか。


腹に刺されていた短剣を抜いた。

辺りには魔物がいる。

護身用に短剣は持って行こう。


国境の扉が開いて誰かが出て来た!

木の裏に隠れて様子を見た。

白い馬に乗った人が北へ走り去る。

国境の巡回か!?危なかった!



少し歩くと、魔物と遭遇した!

本で見た事があるコボルトだ!

棍棒で殴りかかって来た!

「痛いっ!!」


凄い力!体力差は歴然だ!

獣族は力で魔物を倒し、魔族は魔法で魔物を倒す。

非力な生身の奴隷が短剣1本で勝てるほど魔物は弱くない。

逃げよう!全速力だ!


「はぁ、はぁ、はぁ……巻いたか。」


魔物は本で見たのとは違い、実際に見ると気味が悪いな……。


凄く疲れた。

周りにはまだ魔物がいそうだから木に登って休もう。


腹減ったな……。

もう何日も食ってないからな……。

この体って餓死するのかなぁ……。

星ってこんなに綺麗だったのか……。

色々考えているうちに眠ってしまった……。



木から落ちて目が覚めると、もう昼位になっていた。

近くの丘に登り、辺りを見回してみると大きい村を見つけた。


あそこに行ってみるか。



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