ドキドキなシーン
「じゃあエル、何しよっか?」
お兄様から声がかかる。
うーん、何がいいかなぁ〜。
そもそも子どもらしいものってなんだろ?
おままごとかなぁ、でもやっぱり、この年で...いや、やっぱり本を読んでもらおう。それが一番自然で、私の精神的にもいいはずだからね。
「お兄様、本を読んで欲しいのです!」
「ん?いいよ、どんな本なのかな?」
首を少し傾げながら聞いてくるお兄様、可愛い!やっぱり攻略対象はみんな美形で、これから会えると思うと、元あのゲームの大ファンだった身としては、興奮するよね!
「えぇと......これです!」
どれも日本語で書いてあるから読めるんだけど、魔方陣とかの書かれているやつとかは分からないから、それを出してみる。
「えぇーと、『魔方陣の作り方』ね。でもこれはまだエルには早いと思うんだけどなぁ....。」
「お兄様!私、お兄様と勉強ができるレベルまで追いつきたいのです!」
「ふふ、なんでかなぁ?」
「お兄様と、長く入れる時間を増やしたいからです!」
そう言うと、お兄様は元々大きな目を更に広げ、驚愕していた。
え?いやでもこれ、私基本的にこんな風に言ってるんだけどな。
「あの、お兄様、ダメですか?」
念には念をいれて、再度呼びかけておく。
そうするとお兄様は一拍置いて、
「勿論いいよ。」
と、ヒロインでも見ることができないような、可愛く、とろけるような満遍の笑みを浮かべた。
その笑顔に今度は私が言葉を詰まらせて、下を向いて「ありがとうございます...」とだけ言った。
お兄様...その笑顔は反則ですよ!
そんなことを考えているうちに、何かセットし終えたお兄様は、私を呼んだ。
「エル、こっちに来て。」
私はなんの疑いもなくそちらに向かった。
そうしたらなんと...なんと......
お兄様の膝の上に座らせてもらったのです。
いや、お兄様は5歳、こっちは3歳。普通に微笑ましい絵面ではあるから、ドキドキなシーンではない。.......傍観者ならばな!
見ている側は、確かに「微笑ましい」くらいの感情しか浮かばないだろうけど、当事者からしたら、将来イケメンが確定してる人の膝に乗るのは、年齢問わずドキドキするものなんですよ。
しかもお兄様はショタ枠。なので背も小さいので年齢も10歳から14くらいに見える。
だからそんな意外と面影が残ってる人の膝に乗るのは緊張するといいますか、ゲームでも凄い可愛くて、お気に入りキャラの1人でもあったし。
まぁそんなことをいいながらも、膝に乗って本を読んでもらってる。
横...間近からみるお兄様はやっぱり可愛い。最高のお兄様すぎる。これが将来不思議系のポワワんになるなんて思えない。
いや、神童って意味なのか?
だったらあながち間違ってないけどさ。
まぁそんなところは今気にしてもしょうがないので、今はお兄様を存分に堪能しようと、お兄様の胸にグリグリと顔を擦り付けていたら、いつのまにか眠ってしまった。
エルが眠るのを確認した後、兄...アールはゆっくりと息を吐き、妹の頭を優しくなでた。
「エル、やっと薄いベールがなくなったんだね。」
満足気な表情の彼は、自分の妹を眺めてもう一度、深いうっとりするようなため息をもらした。