表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
首飛びかけたら側室になった悪役令嬢見習い  作者: ぱつぷぇ
好感度を一定に保つ方法
5/15

前言はいつでも撤回できるようにしましょう。






 自分で行った自分による自分のための部屋紹介も終わった。呆気なく暇になった私は早めに湯浴みを済ませ、ベッドでひたすらごろごろしていた。


 あー……ソルジア来ないかな、もしくは面白い他国の王子が私を攫いに来てくれないかな。


 だるいわあ、寝っ転がるのも億劫、息をするのも億劫、死ぬ気は無いけど。無いから今の私は字の通り生き霊だ。



「ひーまーだーなー。誰かと遊んでやってもいいんだけどなー……ソルジアとかソルジアとかソルジア・プンラト君でも来ないかなー」



 あの国にいた頃は常に私のそばにいてくれた。優しくて頼りなくて、でも精一杯守ってくれた……今思えば両親より両親してた。


 でもこの国の側室になった以上、忌み嫌われる悪女という印象を抱く人もいるのではないだろうか。また敵だらけの生活。


 せめて本一冊くらい置いてくれればいいものを。買いに行けばいいのかな、そうか、お出かけ行こう!



「この時のためのお金だよね」


「……リスア、いるか?」


「王子ですか? ソルジアかと思った」



 ベッドから降りてドアを開けると、相変わらず無表情なクロノ王子。ランヴィさんならどこか行きましたよ。



「ランヴィ様なら部屋に戻られたかと」


「やはり来たか」


「あれ? 知ってたんですか?」


「いや……さっき初めて知ったんだが。色々と」



 少し疲れた顔をしている。そんなに急いで来る所でもないでしょう。


 それにしても、色々と、とは何だろう。ランヴィさん、特に変わった様子ではなさそうだったしなあ。



「色々ってなんですか?」


「ランヴィがここに来る前、話をしていたんだ」


「へえ、普通に仲睦まじそうで」


「問題はここからだ。その時、少しだけ側室の……お前の話をしていた」



 ふうん。あの人私のこと、あまりよく思ってなさそうだったしなあ。オチが読めた気がする。嫉妬でしょ、嫉妬落ちで面倒くさい奴になったんでしょ。



「何か色々言われました。クロノ様に触らないで下さい!! って。別に人のもの取るほどイカれてないんですけどねぇ」


「一応止めたんだが聞かなくてな。さしずめ、化けの皮が剥がれかけていると言った所か」


「一日で破局ですかい」


「そんなこと出来るわけない。おちゃらけたお前に言っていいか分からないが、あれは元々仕組まれていたんだ」



 ……は、本当? だとしたら私結局死ぬ運命にあったってこと? 何それ詰み。


 王子はきまりが悪そうに話を続ける。可哀想に、まあリスアさんの方が可哀想ですけど、だって国を挙げて殺されかけてんだもん。



「幼少の頃から『どの国の王女と結婚するか』を教えられる。そして、その相手が世で一番だと刷り込まれる」


「素晴らしい教育ですね、一途になれるなんて」



 棒読みの賞賛である。何その地獄教育、たまたま相手が美人さんだったからよかったけど、性格最悪の私みたいな奴だったらグレてたぜ?



「……で、お前の話を出した途端に空気が変わった。「なんで他の人の話をするんですか」と言われたんだ」


「側室なんか作らなきゃ良かったと。私は生き永らえるので大賛成ですけどね」


「それでお前に殴り込みだ」


「お熱いことで。私引きこもってるんで責任とか知りませんからね」



 と言うと、王子は少し残念そうな顔をした。何、引きこもっていいっつったのそっちでしょ。私女が女を嫌うやつとか面倒くさくてごめんなんだけど。


 でも悪女になってみたいんだよね。悪女って何でも出来そうな感じするもん、美人で最強でお姉様って感じするもん。



「残念だが、側室とは言え俺の妻という扱いだ。よって、食事も共に取らなければならない」


「じゃあ直談判してその決まり破って来ましょうか? 一時間貰えれば出来ると思いますよ?」


「いい。助け舟はあった方がいいからな。それに、俺は刷り込まれただけであって、実際ランヴィのことが好きかどうか分からないから」


「何回も関わればいいじゃないですか。可愛いし、さっきの件を除けば優しそうだから大丈夫ですよ。少なくとも失態だらけの私より」



 貴方のこと「コイツ」呼ばわりしたんですよ? そんな奴が助け舟になると思います? それとも貴方は信頼の神なの?


 するとクロノ王子はフッと笑って、「どうだろうな」とだけ言った。何がどうなんですかね、お馬鹿な私には一生かけても解けませんわ。



「お前の言う通り、とりあえず相手のことをよく知ろうと思う。……もしもまた何かあったら、ここに来ていいか?」


「ええ、どうぞどうぞ。いつでも何回でも来て下さい。あ、ランヴィ様が怒らない程度にですよ?」


「分かっている。……じゃあ、また」



 そう言って王子は扉を閉めた。またと言っていたけれど、私からしたらそのまたが無い方が嬉しいんだな。


 ――次来てもいいように、茶と菓子くらいは買っておこうかな。ソルジアを頼りに。そういや結局、ソルジアはどこなの?

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ