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名探偵ポアロマン  作者: アドムマン
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第1章 ポアロマン誕生

 月曜19:00~20:00。

 この時間帯の恐山には生前、名探偵と呼ばれていた者の霊が大量に集まるという。

 一人の青年がいた。彼の名は松山信樹。彼は夜の闇に包まれつつある恐山に大声で呼びかけた。


「名探偵の霊よ!俺に力を貸してくれ!!」


 一閃!


 信樹は大きく体を反らして、その光を避ける。

 光の元は鋭く妖しい日本刀だった。

 鈍く光る刀身に持ち主の顔が映る。

 持っている刀のように鋭い目だ。三歳児でも分かる。間違いなく人殺しだ。


「でかくなったな、ゴミ……」


 殺し屋が刀を鞘に納めながらつぶやく。


「リッパーマン……!両親の仇!!」


 信樹の叫びが夜の恐山に響き渡る。


 それは三年前の真昼の事だった……

 家族全員で歌謡曲『隅田川』を歌いながら仲良く歩く4人の家族がいた。

 政治家の父の松山信樹、デザイナーの母の松山信子、中学生の妹の松山信美。

 そして、今ここにいる青年、田中信樹であった。

 彼らは本当に仲の良かった家族で会った。すべての家族の見本であった。

 だが……



 一閃!


 父の首がすっ飛んだ。母の首もすっ飛んだ。妹は目を切り裂かれた。

 信樹は重症だが命に別状はなかった。だが、身体は動かなかった。


「ゴミだけ生き残ったか…俺はゴミは処理させる側だ、あばよ」


「うおおおおおおおおおおおおおおおっ!!」


 家族を失った青年の慟哭だけが、真昼の血だまりに響き渡るのだった……


 そして今、青年は仇をとるために特訓に特訓を重ねた。もうあの慟哭は繰り返さない。

 家族の仇、リッパーマンを討て!!

 だが、慌ててはいけない…

 リッパーマンの型は居合。

 考えなく向かっていけば、瞬時に信樹の首は両親のようにすっ飛ぶであろう。

 信樹は両腕を広げた構えをいつまでも崩さない。

 怒りを抑え、心を無にする…できるはずだ、三年の特訓を乗り越えた信樹なら!


「にらめっこが得意なようだな。じゃあ、こちらからいかせてもらおう…」


 

 一閃!

  


 信樹は光を受け止めた。刀を両手で受け止めた。

 真剣白羽どり…これがリッパーマン攻略の最善手!

 受け止められた居合の剣はもはや死に剣である。


「リッパーマン覚悟、死ねぇっ!!」


 信樹の怒りを帯びた一撃によりリッパーマンの内臓は粉砕された……






 はずだった……




 穴、穴、穴、穴、穴。

 信樹の体に穴が開く。

 何故だ?

 ガトリングだ。

 刀を離したリッパーマンの腕には、巨大なガトリング砲が握られていた。


「卑怯だぞーっ!!」

 叫んだ信樹の体の穴という穴から、血が噴き出し肉片が弾ける。


「人殺しに卑怯なんて言葉はないんだよーっ!!」

 冷徹な正論を言いながら、リッパーマンはガトリング砲を連射する。

 弾ける弾ける。弾丸のリンチにより、信樹の体がミンチになった。

 三分後には、最早ハンバーグの具にするのも難しいくらい、信樹の体は打ち砕かれてしまった。


「必殺『霊魂散華』…もはやお前の魂は完全に打ち砕かれた…」

 優れた人殺しは常人では信じられない殺人スキルを身に着けることができるという。

 過去300人を殺したといわれるリッパーマンにとって殺人スキルを習得するなどお茶の子さいさいであった。


「これで恐山のイタコでもお前を復活させることはできないだろう………ゴミと呼んだことは撤回してやるよ、兄ちゃん。だが、これであばよだ。」


 目標を完全粉砕したリッパーマンはその場を立ち去った……

 この物語はこれで終わってしまうのであろうか!

 勧善懲悪は所詮、物語だけのほうそくなのであろうか!

 否!現実でもフィクションでも正義は常に勝者である!

 今!まさに敗れた信樹の前に正義の手が差し伸べられようとしていた!





 赤い赤い赤い空間。

 そう形容するしかない場所に信樹はいた。


「ここはどこだ?魂を砕かれた人間はあの世に行けないのではなかったのか?」


 当たり前の疑問を頭を浮かべながら、あたりを見渡した。

 そこに立つ謎の人物!

 頭にシルクハット、口にちょび髭、腹に脂肪。

 まさにデブ紳士と呼ぶべき男でった。


「お前はだれだ?」

 

「私は名探偵ポワロの霊だ」


 デブ紳士は屹然と答える。


「ポアロ…?ポアロとは創作のキャラクターではなかったのか?」


「ふっふっふっふ…」


 疑問とはアフタヌーンティーのようだ。

 熱く、厳しく、そして温い。


「私は命、そして君には命が欠けている。私達二つが融合すればきっと生き返ることができる。」


「融合?すると君はどうなる?」


「ふっふっふっふ…」


 答案とはトリカブトのようだ。

 甘く、優しく、そして苦い。


 今、二つの魂と命がドッキングしようとしていた!





 夜空に流れる大量の流星…

 その流星の大半が恐山に降り注いだ時、半径3キロメートル以内の物はすべて吹き飛んだ。

 闇を切り裂く光、大音量、そして熱。

 その中心に立つ男…

 これこそが信樹とポアロが融合した男!

 赤と黒のボディ!極彩色に彩られたパーフェクトスーツ!

 誰よりも賢く、誰よりも強く、誰よりも愛しい……

 過去と未来を超えた究極の新ヒーロー!!ポアロマン爆誕!!

 ポアロマンの戦いが今始まる!!

遂に誕生したポアロマン。

だが、悪の組織は着々とポアロマン暗殺計画を企てていた!!

危うし、ポアロマン!!

凶悪なミサイルが君を狙っている!!

走れ、オリエンタル急行号!!

次回、ポアロマン第2章『虐殺のミサイル殺人事件』にご期待ください!

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