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平凡な俺と非凡な彼ら   作者: 灰原 悠
第八話 母の帰宅

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番外編 休みでない休日

本編の更新ではなく申し訳ありません。

すぐに本編の更新ができるようにします。

 本編更新が遅くなり申し訳ありません。

 本日は短編のみの投稿になります。


 番外編として、軽く見ていただければ幸いです。











 休日の早朝、いつものようにソファーで寝転がりながらテレビを見ていると、楓がトコトコと小走りで近寄りこう言ってきた。



「兄さん、今日は少し遠くまで買い物に行きませんか?」


「……遠く?晩御飯の買い物だけじゃなかったか?」


「はい、まあ他にも買いたいものがありまして……」


 何かを誤魔化すように、楓の声が段々と小さくなる。

 それに違和感を感じながら、楓の頼みならと承諾すると真良家の休日の朝食が始まった。



 二時間ほど経ち、昼前になった頃、玄関で楓の準備が終わるのを待っているとインターホンが鳴り響く。



「兄さーん!出てもらえますか?」


「はいよ」


 リビングのモニターで来訪者が誰かを確認することなく『新聞の勧誘くらいだろう』なんて軽い考えで玄関の戸を開けると、すぐにその行動を後悔することになった。


「おはよう真良君」


「おはようございます湊君!」


「……お疲れさまでした」


 

 太陽に反射して輝く二人の黒髪の少女。

 一人は、漫画であればキラキラと輝いているだろう満面の笑みを浮かべ。

 もう一人は、女性にしては少し高めの身長に冷たい瞳で微笑を浮かべそこへ佇んでいた。


 雫と綺羅坂だ。

 さも、約束していたかのように俺が家を出る直前にやってきた二人は、俺が閉めようとした戸をガッシリと掴み離さない。


 反対に二人の力に押し負け、強引に玄関が開かれる。


「ひどいですよ湊君!いくら綺羅坂さんだとしても顔を見てすぐに玄関を閉めるだなんて!」


「そうよ真良君。神崎さんの顔を見て気分が悪くなったとしても少しくらいは顔を見せてあげないと可哀そうでしょ?」


 

 来て早々に口喧嘩かよ……

 いや、その前にすでに始めていたらしい。


 二人は見えていないと思っているかもしれないが、お互いに足を踏みあっているのが見えていた。

 だって、時々固いところが当たったのが「ゴスッ」って鈍い音が鳴っているのだもの。


「……何を子供みたいなことやってんだ」


 それを見て、二人を追い出すことを諦め、玄関に招き入れると二人は一度だけ互いに睨み合いをした後に家の中に入る。

 

「いらっしゃい雫さん!綺羅坂さん!」


 

 後ろから服を着替えた楓が駆け寄ると、嬉しそうに二人へ声をかける。

 それに彼女たちも各々返事を返すと、会話らしい会話はそれだけで三人は何も言うことなく家の外に出て行ってしまった。



「え、なに?四人で買い物行くの?」


 嫌だよそんなの。

 絶対出先でこの人たち喧嘩するんだもん。


 今日は優斗という女性キラーの仲裁役もいないし、自ずと俺しか止める人いなくなるだろう。



「大丈夫よ、今日は私たち喧嘩しないって約束したの」


「そうです、今日は湊君にお手数をかけないと決めてますので」


「その割には今の今まで俺の前で口喧嘩していたよね?」



 何のことやらと、不自然に視線を逸らす二人に冷たい視線を向ける。

 二人の言うことは信じてはいけない。


 いや、普段なら信じても平気なのだが、この二人が揃ったときは大体良いことがない。


 未だ足取りの重い俺を、楓が無理やり引っ張り出すと四人横並びに住宅街を歩く。


「……どうせ服でも買いに行くんだろ?俺いらないだろう」


「湊君の好みを聞きたいんです!」


「そうよ、あなたがいないなら彼女がいるのに私が来るはずがないでしょう?」



 さっきまでの喧嘩しないとは一体……


 すでに慣れたものなのか、楓は一歩引いたところで楽しそうに俺たちの掛け合いを眺めている。

 助けを求めても、首を横に振ってダメだと断られた。



「さ、行きましょう真良君」


「あっ!綺羅坂さん離れてください!行きましょう湊君」


 右手を綺羅坂が、左手を雫が抱きかかえるように腕を取り歩く。


 周りのちびっ子や同年代、仕事へ向かうであろう会社員からの、特に男性からの視線がこれでもかと集まる。


「……離れろよ」


「嫌よ」

「嫌です」



「に、人気者ですね兄さん」


 腰に楓が手を回し、これで正面以外を美少女三人に抱きかかえられという、男にとっては夢のような状況が完成する。


 しかし、俺の心臓は別の意味で激しく鼓動していた。


「離れなさいよ……」


「あなたこそ離れなさいよ」


「お二人とも、いくら何でも兄さんにべたべたし過ぎですよ?」


「…………」


 何この修羅場?

 さっきまで傍観していた楓も、これはさすがに許容範囲外なのか笑顔ではあるが、どこか怒気を感じさせる声を発している。


 兄が好きなのは嬉しいが、少し痛いのは気のせいだろうか?



「痛い……いや、マジで痛いから離してくれ」


 三人が無言でにらみ合いをしている中、次第に力が入っているのか両腕と腰回りに徐々に痛みが出てくる。


 俺の願いも叶わず、次第に強くなる彼女たちに思わずある言葉を口にしていた。



「分かった!どこへでも行くからとりあえず離してくれ……」


「そう、ならいいわ」


「では、行きましょうか」


「電車に間に合わないと大変ですからね」



 何事もなかったかのように、俺の体から手を離した三人。

 それを見て、一連の行動が演技だったことに気が付いた。



「タチ悪いな……お前ら」


 楓まで二人に加担してこのようなことをするとは。

 やはり雫と綺羅坂の影響だろうか?


 



 溜息しか出てない俺に三人は笑顔で



「さ、行くわよ」

「早くいきましょう湊君!」

「置いていきますよ兄さん?」


 楽しそうに声を弾ませていた。

 今日はいつもより、何倍も疲れることになるんだろう。


 こうして、休日が休日でない一日が始まった。













「って夢を見たんだ」


「そりゃ夢だ……絶対にそんなこと起きねえよ」


 学校で顔を合わせた途端に、俺のもとへやってきた優斗から妙にリアルな話をされた。

 いくら何でも、そんなアニメのようなことはなかろう。


 


 ……念のため数日の間は、たとえ楓からのお願いであっても家の外から出ないようにしよう。



「湊君今週末は空いてますか?」


「真良君、週末時間あるかしら?」


「無い」



 俺は絶対に家から出ない。

 出ないったら出ない。









 


 

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