#60
この話は短いものです。
思いの丈を打ち明けた雫は、表情を次第に赤く染めるとすぐに背を向ける。
「き、今日はそれだけお伝えしておきたいと思ったので……私はこれで失礼します!」
「おいっ!……行っちまったよ」
女子生徒の中でも上位に食い込むほどの走力で、この場から駆け出していく雫を、俺はただ口を開けたまま見ているだけしかできなかった。
彼女が公園から立ち去ると、無意識のうちに溜息が零れた。
彼女の告白について、そして今後の彼女との接し方など。
悩みの種が、短い間に倍以上に増えたことで気分が下がるのを感じた。
「……俺も今日は帰るわ」
そう綺羅坂と優斗に伝えると、彼女が走り去った方向へ歩き出す。
家が向かいだと帰る道も同じなので、この状況の中、二人きりで歩くのを彼女は嫌ったのかもしれない。
優斗にも詳しく話を聞いておきたいのは山々だが、今は家に帰って一人になりたい気分だ。
雫の告白の言葉が、頭の中で何度も繰り返し再生される中、俺は一人暗くなった住宅街を歩いた。
そんな俺を、綺羅坂と優斗は何も言わず見送っていた。
仲の悪い二人を置いて帰ってしまったことは、明日にでも学校で謝っておこう。
「あなたも面倒なことをするのね」
「何のことかな?それにしても君は何も言わなくてよかったのかい?」
二人しかいなくなった公園で、二人は目を合わせることなく話を始める。
「何のことかしら?」
「……まあいいさ、でも俺は諦めない、今は無理でも未来では神崎さんに振り向いてもらえるかもしれないからね」
「……諦めが悪いのね」
綺羅坂は冷ややかな視線を向ける。
話では遊園地に行った際にフラれ、そして数分前には間接的にフラれているのになんとあきらめの悪い人だ。
それでも、ただ一つだけ彼と似通った点があるとすれば……
「……私は自分のお気に入りにはたとえ家族であろうと触られたくないのよ」
この醜いまでの独占欲だろうか……?
そう言って立ち去る綺羅坂。
その背に向け、優斗は小さく呟いた。
「怖い人だ……湊も凄い人に気に入られたな……」
苦笑いを浮かべて、優斗は自分以外無人になった公園から立ち去ったのだった。
次話は雫の休日を書こうと思っています。




