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平凡な俺と非凡な彼ら   作者: 灰原 悠
第七話 本音と本音

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#51


 放課後の穏やかな雰囲気で包まれた生徒会室が、一瞬だが静寂に包まれた。

 その理由は、会長の見せた表情。


 会長とはなんだかんだ付き合いが長い小泉や三浦が、少し驚いていたように表情を変えていたことから、会長が人前で暗い顔を見せること自体珍しいのだろう。


 もしかしたら、初めてのことなのかもしれない。


 俺と火野君からしたら「会長もこんな顔するのか」程度だが、それでも普段の会長からしたら様子がおかしいのは分かった。


 そんな俺達の視線に気が付いた会長は、誤魔化すかのように自分の机の上を片付ける。


「さあ、今日の活動はここまでにしようか」


「……そうですね、私も須藤先生に報告書を提出してきます」


 会長の言葉を聞き三浦が席を立つと、今日の報告書を担当教員である須藤先生に提出するために生徒会室から出ていく。

 小泉と火野君もそれぞれ自分の片付けを始める中、俺は今日の会議内容を簡単に記事にまとめておく。


 あまり綺麗とは言えない字だが、それでも誰でも読める程度の綺麗さで素早く手を動かす。

 

「悩んでいる理由ね……」


 そう言われると、俺が今こうして悩んでいるのもお節介なのでは?なんて思えてくる。

 

 確かに疑問は多く残るが、言い方を悪く言えば俺は他人だ。

 これ以上、口を挟むことではないのかもしれない。

 


 いつの間にか止まっていた手を動かし、俺は最後の一文を書き記した。





 三浦が戻ってきたことで、本日の活動が終わり生徒会室を後にすると、目の前の長い廊下に一人の生徒が佇んでいた。


 その生徒、綺羅坂怜を窓から射し込む夕日が照らして、どこか幻想的な空間を作り上げていた。


「あら、予想より早かったわね」


「ここで待ってたのか?」


 ぞろぞろと歩く足う音に気が付いた綺羅坂がこちらに振り返る。

 手には文庫本が握られていることから、いつものように読書でもして待っていたのだろう。


 この後で、一緒に優斗に会う予定だったが、俺はてっきり帰宅してから集合でもするものだと思っていた。

 

「おや?怜じゃないか」


 隣の会長が意外そうに声を上げると、一人だけ前に出て綺羅坂に近づいていく。

 

「こんにちは茜さん、真良君みたいな生徒を生徒会に加入させるだなんて聞いた時は驚いたわ」


「まあ色々とあってな、それよりも君は真良を待っていたのか?」


「ええ、この後に彼と用事があってね」


 この一言で、俺の周りに立っていた面々から驚愕の声が漏れる。

 特に小泉と火野君は、信じられないと言わんばかりに目を開いてこちらをじっと見つめる。


「そんなこともあるのね……」


「おい三浦……なんだその目は」


「いえ、人の好みは分からないものだなって」


 三浦も興味深そうにこちらに目を向ける。


 いや、彼女のほうが特別なのだよ?

 つまらなさそうに生きている人が理想の男性だからね?



「す、すごいね真良君!綺羅坂さんと仲が良いだなんて」


「う、嘘だ……先輩に友達もいて、あの有名な綺羅坂先輩とも仲良くしているだなんて……あの真良先輩なのに!」


「おい……火野君は二度と楓の顔を拝めなくしてもらいたいのか?」


 こいつらも彼女の容姿に騙されていたのか……。

 あらためて、綺羅坂が周りにどれほど注目されているのか確認したところで、俺は視線を会長と綺羅坂の元に戻す。


「放課後に予定があるとは、もしかしてデートの約束でもしていたのかな?」


「放課後にデートだなんて魅力的ね、でも残念ながら今回は違うの」


 聞いた側が誤解しそうな言い方はしないでもらいたい。

 これでは、俺と綺羅坂が頻繁に放課後どこかへ出かけているみたいではないか。


 その証拠に会長も少し面食らったようにしていた。


「羽目を外し過ぎぬようにな、それと真良をあまり連れまわさないように」


「分かっているわ」 


 いつもは俺達より大人びて見える綺羅坂だが、会長相手になると彼女も年相応なのだと感じる。

 というか、二人が知り合いだったとは知らなかった。


 前に生徒会の書類を見せた時には、会長と知り合いだなんて言っていなかった気がするが。


 二人が話を終えると、未だこちらを見て固まっている小泉を三浦が、火野君を会長が無理やり引っ張っていく形でこの場を立ち去った。


「じゃあ行くか」


「そうね、彼から連絡は来たのかしら?」


「そういえば見てなかったな……」


 カバンの中からスマホを取り出すと、連絡が入っているかを確認する。

 そこには、優斗から一件連絡が入っており『五時に湊の家の近くの公園』とだけ書かれていた。


「俺の家の近くの公園だとよ、五時だから余裕で間に合うな」


「車も用意できるけど?」


「いや、歩いていくよ」


 おそらく黒井さんだろうが、車で送ってもらうのも気が引ける。

 距離も大してないのでのんびり歩いていこう。


 俺は綺羅坂と並びながら、すっかり生徒がいなくなった廊下に足音を響かせながら進んでいく。




次回から場面が変わります。

会長を出したかったので、二話ですが出させていただきました。

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