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平凡な俺と非凡な彼ら   作者: 灰原 悠
第四話 先輩と後輩

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#24


「ちょ、ちょっ待ってくださいよ!?」


 俺が進む方向とは反対方向に力を入れ、動くのを拒む火野君はただでさえ声が大きいのに、それ以上に大きな声を出しているので周りを歩く生徒達の視線はこちらに釘付けになる。


「おいこら、デカい声出すんじゃねえよ危険人物」


「危険人物って俺のことですか!?」


 反応もいちいち大きく、これ以上は周りへの迷惑になりかねない。

 交番へ連れて行くのは一旦諦め、なぜ妹に対して崇拝などしているのか聞きだすことを優先して行うことにした。


「よし分かった、警察に君を突き出すのは一時中断だ、だからデカい声を出すな」


「け、警察に行こうとしていたんですか……あ、危なかった」


 その場にうずくまり、火野君は安堵の息を吐く。

 俺は、その横で壁に寄りかかり、火野君が持っていた写真をしっかりと確認する。


 やはり写真に写っているのは楓で、よく見ると端のほうに俺の姿も写っていた。

 ……いかにも俺を外して撮っているように見えるのは気のせいだろうか。


「……これ連休の時か」


 俺と楓の服装からして、この間の連休の時に二人で買い物した時の写真のようだった。


「はい、連休明けに買わせていただきました!」


 一枚だけかと思っていたが、火野君はカバンの中から何枚もの写真を取り出す。

 どの写真にも楓が中央に写っていて、何枚かは俺の姿も写りこんでいる。

 私服が多いことから、どれも買い物をしている時に撮られたのだろう。


「まず買うな」


 次々と彼から写真を取り上げると、全てカバンの中にしまい込む。

 その際に折れないように、しっかりと教科書の間に挟むことを忘れない。


「……なんで楓のこと崇拝しているなんて言ってたんだ?」


 写真を取られたことで、少し不服そうにしている火野君は、俺の質問に再び背筋を伸ばした綺麗な姿勢で話し始めた。


「俺、昔から印象が悪いって言われてたんです……子供には目を合わせれば泣かれてしまうし、同級生には避けられるし」


 うん……確かに子供は泣きそうだな。


 彼は普通にしているつもりなのだろうが、目が合っている人には睨まれているように見える。

 俺も彼からこの話を聞かなければ「怒ってる?」なんて聞いてしまいそうだ。


「その髪の毛は?」


 俺は赤みのある髪の毛を指差して質問をした。


「あ、これは染めたんです、うちの学校頭髪に関しては厳しくないですし、少しでもクラスメイトに興味を持ってもらおうかと思って」


「いや……逆効果だろ」


 俺の言葉に、火野君はあからさまに表情を暗くする。

 結果がどうなったかは聞かなくても、彼が期待した結果にならなかったのが想像できた。


「中学でも友達は少なかったですし、高校ではたくさんの人と友達になりたいって思ってたんですけど……歩いているだけで不良に絡まれて、おばあちゃんの荷物を持ってあげただけで盗んだって次の日噂になっていて」


 とんでもない後輩君だ。

 人は見た目で相手の印象がほとんど決まるというが、彼がいい例だろう。


 話してみれば、特に変わったところのない優しい一年生だ。

 

「大変な思いをしたのはよく分かった……だが、なんで楓の写真を持っていることに繋がるんだ?」


 彼も話が脱線したと思ったのか「あ、すいません」と一言謝る。

 別に謝らなくてもいいのだが、俺としては妹となんの関係があるのかを早く知りたい。


「それはですね、先月に買い物をしていた時に万引きと間違われたんです」


「ほうほう」


「本当は中学生が万引きをしていて、バレた中学生が店の前で俺に脅されてやったって嘘をつきまして」


 その言葉だけで何となく分かった。

 きっと、その店の店長は火野君の容姿を見て中学生の話しを鵜呑みにして、彼を犯人と決めつけたのだろう。


「そんな時だったんです……楓様が店の店長にこう言ってくれたんです……」


「様をつけるな……」


『この人は何もしていませんよ、私が見ていましたから』


 楓はそう告げたらしい。

 楓のその言葉によって、火野君は万引き犯ではないと証明され解放されたらしい。


 問題が解決した後に火野君が楓に聞いたところ、途中から前を歩いていたのに気が付いていたらしい。


 進む方向も一緒だから同じ店に買い物かな、なんて思っていたら店に入ってすぐに万引き犯に疑われていたから、ただ事実を伝えたと。



「俺、今まで犯人だと疑われたときに、何もしていないって知っていた人も周りにいたけど助けてくれた人がいなくて」


 そして俯いていた顔を勢いよく上げる火野君の顔は、怒っているように見えていた顔から何かを崇めるヤバい目をした少年に変わっていた。





「だから、俺の前に突然現れた可憐な少女……いえ、きっとあれは女神が楓様の姿をしているのです!だから俺は楓様を崇拝しているのです!」 

 

「違うから、俺の妹だから、普通の人だから」



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