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平凡な俺と非凡な彼ら   作者: 灰原 悠
第二十六話 桜の学び舎

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216/355

#201

桜祭編開幕です。


 桜は舞うことなく、夏の終わりを知らせるように木々の葉は紅色に染まり始める。

 体を包む熱気は心地よい風を吹き、そして冷たい冷気へと変わる。


 桜の学び舎にはその前に一番熱いイベントが待っていた。

 日々の勉学から解放された運動の祭典、そして学生達の個性が溢れ出る学園全体での祭典が。


 生徒の意識から生徒会選挙のことは過ぎ去った過去として認識されて、目前に迫った最大級の行事に意識は移る。

 生徒会も同様に、これから一番の多忙な時期を迎えることになる。


 

 勉学、部活動、恋愛、青春、将来……学生達の前にある様々な期待や不安などを大いに変化させる可能性のある季節。

 桜の学び舎は、祭りの学び舎へと短い時間の変化を迎えた。


 その変化を生み出すのも学生である。

 己で考え、提案して行動に起こす。

 生徒の自主性という名の放任的な学園で、それを統制することは言葉以上に困難なことだ。


 そのための準備を怠ると、最大の祭典は最大の汚点へと変わる。

 問われるは組織の上に立つ人間の統率力と生徒からの信頼、そして柔軟な対応に思考である。



 訪れるであろう困難は多くある。

 予想外の人物の台頭、それに伴うトラブル。


 想定できる範囲での問題解消に向けた方法は自分達でも用意しなくてはならないだろう。

 頼るばかりの後輩では、あの人は安心して去ることが出来ない。



 生徒会室へと向かう足取りの間で思い出すのは、生徒会に加入する際に言われた言葉だった。

 冷静に、そして客観的に判断が出来る……その期待に俺が今まで答えてこれた自信は無い。


 

 これが最初で最後なのだ。

 同じ場所で同じ目的のために行動が出来るこの桜祭という短い期間しかない。


 あの人に認められるには。

 憧れも、恋心もなく、ただ純粋に周りからの理想を体現している人に、認められたい。


 友人と対立して勝負をした時に心境は似ているかもしれない。

 たぶん、自分自身が納得したいだけなのだろう。


 私情で呼ばれた場所が生徒会であったわけではなく、真良湊を認めて呼ばれたのが生徒会なのだと。

 自問自答で終わっていた疑問を、最後に言葉にしてもらいたいだけなのかもしれない。



 実行委員会は一見頼りになるが、予想外の展開にめっぽう弱い後輩が率いるはずだ。

 言葉にして伝えては無いが、頼りになる友が彼女を支えてくれる。


 心配をする方が杞憂に終わるかもしれない。

 だから、自分自身の役職に専念することが出来る。


 生徒会長補佐として、最後の仕事を支えることだ。

 校内の一角にある部屋の前でやる気を入れ直すように深く息を零してから、重苦しい鉄の扉に手を掛けた。


 微笑み迎え入れた先輩の姿を見て思う。

 あの微笑みを浮かべている人は、今何を考えているのだろうか。

 

 目の前に迫った一大行事に対する不安か、それとも期待か……

 そんな疑問を胸に、今日も生徒会としての一日が始まる。



 


 次代を担う生徒を選び、そしてバトンを手渡す前に俺達は知ることになる。

 歴代最高と謳われた先輩の姿を。


 これまで、自分とは違う世界に住む人間だと目を背けてきた彼女の存在が作り出す光景を。

 

 桜祭編、開幕

 


桜祭編が開始します。

次話から体育祭に舞台は移り、本編である文化祭へと話は進んでいきます。

桜祭の主は文化祭なので、体育祭は番外編に近い感覚になると思いますがお付き合いいただければ幸いです。


書店アプリ「まいどく」版も配信中ですのでよければダウンロードしてみてください!

一日一話無料で時間が掛かりますが、最後まで読んでいただくことも可能です。

アプリ版もお気に入り、評価よろしくお願い致します。

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