1話
どうも幸星です。
初投稿ですがどうか、どうか暖かい目で見守ってください。
俺はなりふり構わず走った。
小学生だった頃に仲の良かった美咲ちゃんが、かえって来たと聞いたからだ。
俺は昔から彼女が好きだった。
だが彼女は6年生の夏に親の仕事の事情で、アメリカは渡った。
あれから3年がたった。
清楚でピュアで、でもどこか抜けていて。
彼女の俺に言った最初の言葉を思い出す。
「誠大君はやさしいんだね。」
美咲ちゃんは学年全体からいじめられていたが俺はずっと美咲ちゃんの味方だった。少なくとも俺はそうだと思っていた。いじめがなくなるから彼女からしてみれば、本望だったのかもしれない。
息を切らし、汗だくになりながら彼女の家の前まで来た。この3年間止まっていなかった車が止まっていた。もう帰ってきているのだろう。
以前とは変わってしまっているのではとか、俺のことは忘れられているのではないかという不安を抱えながらも、実は会えるという喜びがとてつもなく大きかった。
そのとき、ちょうど彼女の家族出てきて俺を見た。
「あらもしかして誠大君?」
美咲ちゃんの母が口を開いた。はい!と返事をし、おばさんのことを見た。
その後ろに1人、華奢な体つきをした少女がくっついていた。俺はその子が美咲ちゃんだと確信して声をかける。
「久しぶりだな!美咲!」
思い切って呼び捨てで言ってみる。
かなり張った声だったが返ってきた言葉に思わず俺は、……困惑した。
「あの、どちら様……ですか?」
「……!」
状況を理解できていない俺を見たおばさんは、俺に優しく声をかけた。
「色々思うことがあると思うけど、とりあえず中に入って。」
困惑し、冷や汗があふれ出し、涙がこぼれそうになるがそれを耐え、おばさんについていき家の中にお邪魔した。
中には美咲ちゃんの父がいた。おじさんは、俺に一言「すまない」と言い、彼女をつれ席を外した。
良く見慣れたこの家の内装はほとんど変わっていなかった。リビングに案内され、ソファに腰をかける。
「落ち着いて聞いてちょうだい。まずあなたに話しておこうと思っていたの。」
おばさんは顔をしかめて話を始めた。
「向こうにいたときの事、美咲はいつも通り友達と学校から帰る途中だった……」
それから話は続いた。
彼女は友達と別れ、自宅に近づいていた。
そこから家までは完全に安全だと信じきっていた。それは彼女の住んでいた町が割と治安がいいほうだったからだ。だがそんな町で非情なことに事件は起こった。
それは誘拐事件だった。
男2人の犯行であるとわかりその後2人は捕まったが、美咲の傷は癒えなかった、心身ともに。
誘拐され、彼女は強姦や辱め、暴行を受けた。それを聞くだけでも俺は、胸糞がわるくなって怒り、憎しみ、息が乱れた。だが裏腹に興奮してしまった俺があり、自分を殺してやりたいと思ったりもした。涙も目が赤くなるまで出した。
美咲はどうにか助け出され、犯人も捕まった。だがその後も彼女は苦しんだ。
大きなトラウマ、怒り、憎しみ、悲しみが抱えることになり、負の感情がどんどん大きくなっっていた。
そんなトラウマを抱えた彼女はある時、自らの記憶を閉じ込めた。……過去とともに。
それがだいたい1年前のことらしい。
「それで今こんな状態なの。覚えていたのは自分のことだけだった。いまはやっとこの生活に慣れたみたいだけど、こっちに戻ってきてまだ美咲も混乱しているの。」
おばさんは、涙ながらに語った。
俺も胸中にとてつもない憎悪が生まれていた。
その時、ぺたぺたぺたと階段から美咲が降りてきた。
薄い生地のワンピースを着ていた。腕や足、首などもよく見えた。
体には切り傷や火傷の後のようなものが数か所にあった。
「お母さん泣いているの?大丈夫?」
「……うん。大丈夫よ。」
おばさんは苦しい笑顔を見せた。何か胸に来るものがあった。
「美咲、この人はあなたがこっちにいたときに仲の良かった友達の誠大君よ。」
「そう……だったんだ。ごめんなさい憶えてなくて、これから仲良くしてね。あ、これから”も”だね。」
にこっと笑い手を差し出した。その差し出された手を引っ張り、俺は彼女を抱きしめた。
「え!急にどうしたの?」
困惑する美咲を横目に、おばさんがそっと優しく俺に言った。
「ありがとう。」