旅立つ前に
ようやく、携帯が復活した~。
お待たせしましたー‼
「構えてっ!」
リア達の旅立ち三日前……
シルカの声に緊張する八人の少女。
少女達の手には様々な武器が握られ、背後にはたくさんの精霊がいた。
水気は辟易する思いで目の前の八人を見ていた。
全員が笑顔ながらも水気に敵意を向けている。
「はぁ~」
だるそうにため息を吐く水気だが、常人ならそれだけで即到してしまいそうな程の殺気をあびてこの態度だ。
何でこうなったのか……水気は数時間前のことを思い出していた。
「勝負しましょう」
水気は八人から同時に勝負を申し込まれた。
水気は顔をしかめて言った。
「何で?」
リア達は顔を見合わせると、再び水気に向き直った。
そしてクロットが口を開いた。
「ならまずはリアがやってその次にネルチャ、リズってふうに八人が交代でやっていこうか」
クロットの提案を聞いて水気はたまらなくなって口を出した。
「待ってよ...何でそんな何回もしなきゃいけないの?そんなのめんどくさいよ」
水気はクロットの顔に笑みが浮かんでいることに気づいていなかった。
「そんなに何回も勝負するぐらいなら一気に全員でした方が楽だよ」
リアやレーシア、トイス達八人は笑みがこぼれそうになるのを堪えていた。
これは数週間も前から作戦を立てていた。
そしてお互いに教え合い、高め合うと同時に戦術の練習や試行錯誤を繰り返していたのだ。
発端はクロットが負けた数日後のこと...
「僕は負けたのに水気君だけ負けてないのは納得が行かないよ‼」
食堂に皆を集めたクロットが発した第一声がそれだった。
テレやネルチャも……いや、全員が思っていたことだったが、自身の進化した技でもことごとく返り討ちに合わされるうちに諦めかけていたことだった。
顔を見合わせる一同を見て、一人うなずくクロット。
「こうなったら全員で協力して水気君を倒そう」
これには全員が唖然とした。
ネルチャは予想していたようだがいつもより長いため息をはいている。
リアがどうやってか、と聞こうとしたときクロットが続けた。
「これから数週間、作戦をたてて、それを勝負をしながら練習及び改善を行う。加えて戦いの中でお互いに教え合って高め合うんだ」
皆が何度目か、顔を見合わせてどうしようか……と考えていたとき不意に扉の方から声がした。
「もし勝てたら特別な報奨をあげるわよ」
シルカだった。
皆がシルカに注目するなか、シルカは皆の集まる机まで歩いてきた。
「勝負で勝つ度に雑用を押し付けられてあなた達は悔しくないの?」
机を叩く勢いでシルカが喋る。
その顔には負かされ続ける悔しさが有った。
「勝つ度に宿題を免除させられて、学園の方には騙し騙ししなくちゃいけない...そんなのもうごめんだわ!」
シルカの熱弁...後半は愚痴になっていたが、それを聞いたリア達にも負けたあとに待つ水気の代わりの雑用の日々に対する怒りが込み上がってきた。
「私やります」
立ち上がるリア。
「私も」
ネルチャが立ち上がった。
そしてついには皆が立ち上がった。
こうして翌日には作戦を立て、二日後からはそのための練習、試行錯誤が始まった。
しかし、これには大きな壁があった。
それは決行の二日前、集まる一同の前でテレが言った一言だった。
全員の準備が整い、体調も万全と言うなかで最後の確認のために集まった一同。
確認も順調に終わりクロットが皆を見て言った。
「この数週間、辛い練習にも耐え、ついに明日、決行の時が来た。明日は絶対に……ん?どうしたテレ」
勝つぞと言おうとしたクロットを手をあげたテレがさえぎった。
「作戦とかは完璧だと思うんですが……今思ったんですけど、一対八なんていう誘いに乗ってくれるんですかね?」
「え……………………?」
全員が固まった。
どうしてこんな単純で初歩的なことを...そして水気においてもっとも重要な難関を誰も考えようとしていなかったのだろうか...
その夜クロットは徹夜で考えに考え、さすがのクロットでさえ頭から煙がたちそうなほど考え抜いて翌日の夕方、つまり決行前夜に皆に発表した。
それがあの、必ずやらないといけない中で何度もやるくらいなら、全員を相手にするだろうという、クロットの案だった。




