少女の名前
…とても嬉しかった
正直あのまま捕まると思っていた。捕まったらどうなるか想像することを頭が拒否して、何も考えられなくなった。
でもそんな危ないところを彼が助けてくれた。どこか不思議な雰囲気を持った少年だった。
正直無理矢理お願いしたし、めんどくさいと言われたときは状況も忘れ話してしまった。
それに何があったのかよくわかんないけどあんな実力を持ってるなら逃げることもできたのに…(あっ、名前も聞いてなかった。家に帰ったらいろいろ話したいな~。名前も聞かなきゃ)
・・・・・・
水気は少女が宿を提供してくれるというのでついていった。
そこは宿というより旅館のような場所だった。綺麗な外装だがどこか歴史を感じさせるような高級感があった。
「ただいま~……!」
少女が玄関を開けると40ぐらいのおじさんが少女に勢いよくだきついてきた。
「あぁ、こんな遅くまで何してたんだ。何かあったのか?無事か?心配したんだぞ‼」
男はとても慌てていた様子だった。
どことなく少女の親なのだと感じた、髪の色が同じだった。
「えぇ、あのパパ」
すると玄関の方から30半ばくらいの女性が出てきた。この女性も少女と同じ色の髪をしているが顔や雰囲気も少女にとてもよくにていた。
「もーあなたリアが困ってるわよ。
でもリア、あなた本当に何があったの?私たち心配してたのよ。」
「ごめんなさい母さん、父さんも。でも本当に大丈夫だよ。」
「ねぇねぇ話終わった~?もう眠たいから宿に入りたいんだけど…いや、その前にお腹すいたな~、よし、なんか食べたいんだけど」
・・・・・・「「誰?」」
どうやら今まで気づいてなかったようだ。
少女が慌てて水気を紹介した。
「えぇと彼は今日困っていたところを彼が助けてくれたの。詳しくはあとから話すけど……え~と名前は…?そういえば聞くの忘れてた。あの私はリアと言います。リア・リノアです。」
「へぇ~。……名前言わないとダメなの?」
「お願いしたいんですけど」
「あらら、そう?え~と名前は茶見水気。
よろしくね~」
「「あ、よろしくお願いします」」
きれいにハモった
「父さん母さん続きは中で話そ?」
「あぁそうだな。ところで茶見君?はどうするんだこれから」
「ん?俺?俺はリアが止めてくれるっていってくれたから来たんだけど」
「おぉそうかならとりあえずついてきなさい」
リアとリアの父と母は家の中に入っていった。そのあとに続くかたちで水気も家の中に入っていった。
「いただきま~す」
水気は目の前に広がる美味しそうな料理に勢いよくとびついた。
「あらあらよく食べるわね。美味しそうに食べてくれてとても嬉しいわ。」
水気がご飯を食べる勢いを見てリアとリアの父は目を丸くして立ち尽くしていた。そんな中料理を作ったリアの母は水気に解説をしていた。
水気のまず目についたのは焼き魚だ。
おばさんの話ではミルトネという魚らしい。
とても身がふっくらしていて美味しそうだ。
一口食べてみた。
・・・ッ‼
口にいれると口いっぱいに肉の味が広がった。
「どう?すごく美味しいでしょ。その魚別名ミートフィッシュって言われていて魚なんだけどお肉の味がするの。でも本当に驚くのはこれからよ。そこの汁と一緒に食べてみて。」
汁は少しとろみのある白い色をしていた。まるでクラムチャウダーみたいだ。
言われた通りに魚と一緒に汁をすすってみた。
・・・これは!?
肉の味と同時に魚の味が広がった。しかも二つの味がとてもよくあっている。二つの味を見事にまとめているのがこのスープだろう。
しかし先程は肉の味しかしなかったのに何で魚の味が出てきたのだろう。
「どう?美味しいでしょ。そのスープわねミルトネからとったダシでね、普通は肉の味なんだけどそのダシと一緒に食べると魚の味も一緒に口の中に広がるの。面白いでしょ、身は肉だけどダシは魚なの。」
「うんとてもおいしーよ」
「でしょ。ダシと肉だけだと臭みが生まれて食べられたもんじゃないんだけどそこにミルクイモをすりつぶして入れると臭みも消えて二つの味がまとまってとても美味しくなるのよ。ちなみにミルクイモって言うのはここら辺じゃめずらしんだけど煮込むとクリームのようなまろやかな味になって少しとろみも出てくるの、肉や魚の臭みをとるのによく使われてるのよ。」
「へぇ。?そういえば二人ともどうしたの?」
立ち尽くす二人を見て水気が声をかけた。
そこでハッとなりようやくリアの父が口を開いた。
「そういえばリア、今日何があったのか教えてくれないか?困っていたところを助けてもらったっていってたけど何があったんだい?」
水気は食べながらも耳をかたむけた。
・・・・・・
その日リアは学校が昼までだったので本屋に来ていた。
この国一番の本屋でたくさんの本が売られている。大好きな作家の新作が今日発売になっていたので学校が終わるなり急いで来たのだ。
本を探していると、ちょうど本を鞄の中にいれている人たちを見かけ万引きかと思い注意した。その人達は本を戻して出ていったのでリアは満足して自分も目的の本を買い本屋を出た。
最近宿の方が忙しいので急いで帰って手伝いをしようと思い、普段は使わない裏道を通った。この道をいくと家まで近道なのだ。
裏道に入り少しして後ろから声をかけられた。
振り向くと黒いフードをかぶった5人の人が道を塞ぐように立っていた。
「おぃおぃ こんなところを一人で危ないね~、怖い人たちにあったらどうするの。」
右端の男がそう言うと他の男達が笑いながらこっちに向かい歩いてきた
「本屋で声かけられたときは少しビックリして見てなかったけど、君かなりかわいーじゃん。君学生?」
男たちが近づいてきたとき本能的に危険を感じ男たちとは反対側へ走って逃げた。
一心不乱に逃げていて今どこにいるのか分からなくなった。
そうして逃げているとき目の前に人影が現れた。男たちの仲間かと思いどうしようかと思ったが、その人影はその場から離れようとしていたので違うと思った。
なぜかその人は助けてくれる、大丈夫だと思った。
そして・・・