16話
遅くなりました!
すみませんでした!
うん、うん、今なら本当に何でもできるわ。
うん、それくらい妖力が大きくなった。何があったのかは知らないけど。
そもそもこれは妖力ですらないかもしれない。
使える物は何でも使う。
皆、無事ならそれで良い。
僕一人の犠牲で終わらせる!
「クロ…?」
「ナニ?赤鬼さん」
「本気か?」
「何ノコト?」
「正直、かくっていうのが何なのかは分からない。しかし、人間の反応を見れば、ヤバい物なのは明らかだ。お前の結界は確かに強い、強くなった、だが」
「…信ジラレナイ?」
「ああ、信じられない。これは私の勘だが、お前はきっと私達の前から消える。死んでしまうかも知れない」
まあ、確かに核爆弾二百個の爆発なんて見たことないし、感じたこともない。地獄の様な痛みが僕に降りかかるかも知れない。小学校の頃に道徳で見た、広島の被災者みたいになるかも知れない。僕はその他色々怖い事が身に降りかかることが凄く怖い。
でも、それ以上に守りたい、僕の生きた二千年と少しはそんなに安くない。
最初にこの世界に来たあの日も、
赤鬼さんとルーミアが喧嘩してた日々も、
山の皆と宴会した日々も、
僕が守る。
なにがなんでも。
妖力が尽きて消えてしまっても!!!
護る事は僕の専売特許だから!!!
「守ルヨ、ダカラ」
「っ!?ちょっ、まっt」
「先ニ逃ゲテテ下サイ」
よし、赤鬼さんも転移させたし、後はこの国を結界で包み込むだけだ。赤鬼さんと話をしている時に、結界を張る準備は終わったからね。力を入れれば大きな結界の出来上がり!でも、大きいので脆い、妖力で全体を補強しました。さらに、[強固]の呪いを掛けて強くして、まだ弱い箇所を更に補強。
そこまでしたところでなにか違和感を感じた。
…ああ、景色が横になってる、倒れたのか。原因は妖力の使いすぎかなぁ?
視界の端では空が徐々に黒に染められている、僕の結界だね。結界がここをすっぽり覆えば真っ暗になったりするのかな?
やっぱり死んじゃうのかな…。
―――――――――――――――――――――――――――
私は山からクロの結界が人間の住処を覆っているのを見ている。
私だけではないのだが。
「あの野郎…勝手に死んだら承知しねぇぞ…!」
「勿論だ!」
「とりあえずあいつには帰ってから良い酒を呑ませなきゃなぁ!」
「全員分の飯も作らせなきゃなぁ!」
「その飯で大宴会するぞ!」
「酔い潰すぞ!」
「三杯目くらいで潰れそうなのかー!」
宴会か、まあ当然だな。拐って来た人間共と一緒に呑んで騒ぐのも良いな。妖精も連れて来るか、あいつらは乗りも良いし元気も良いからな、場を盛り上げてくれるだろう。
そんな話をしている内に、黒い結界が覆い尽くしたみたいだ。中では何が起こっているのか。
そして、次の瞬間。
ドオオオォォォォォォォォ―――――――――ンンンンンン――――――
「っ!?な、なん…!」
―――――――――――――――――――――――――――
痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い痛い熱い痛い熱い痛い痛い熱い熱い痛い痛い熱い痛い痛い痛い熱い痛い熱い熱い痛い熱い痛い痛い熱い痛い熱い熱い痛い痛い熱い熱い痛い痛い熱い痛い熱い痛い熱い痛い熱い痛い熱い痛い熱い痛い熱い痛い熱い痛い熱い痛い熱い熱い痛い熱い痛い熱い痛い熱い
核が爆発した。自分の真下で。
下半身が蒸発した。やはり妖怪の体は強い。
打ち上げられた僕は、別の爆発に吹き飛ばされる、そしてまた別の爆発に吹き飛ばされる、そしてまた………―――。
何度も意識を吹き飛ばし、痛みで覚醒されて、いつの間にか地面に横たわっていた。
後はこの結界を解くだけだ。
「駄目ですよ。まだ放射線が強いですからね。」
だれ?
「お茶目な妖怪…ですよ。」
皆は?
「無事ですよ。紛れもなく貴方のお陰です。」
良かった…!
「ええ、良かったですね。そんな貴方にご褒美を上げましょう。」
ご褒美?
「願いを何でも叶えます。回数制限はありません。」
良いの?
「ええ、良いんです。」
じゃあ、皆のところに戻りたい。
「良いですよ。その壊れた体も戻して上げましょう。」
放射線も消して下さい。
「勿論ですよ。元からそのつもりですから。」
……ありがとう。
「いえいえ、人生…嫌、妖生は助け合いですから。」
そうだね。
「あ、そうだ。体を戻しても妖力は戻らないので、多分千年程眠る事になります。大丈夫ですよその間は良い夢を見せますから。きっと起きたら宴会に引きずりこまれると思いますよ?」
ありがとう。
「この程度、片手間で済みますから。」
あの、名前は…?
「そうですね…。白爺、白い爺と書いて白爺とでも読んでください。自分、長生きですから。」