15話0
「これじゃない、これも、これも違う!」
扉を開ける一つ手前まで来た。
それなのに!
「どうやってパスワードを変更したのよ!」
セキュリティの完成段階で、これに触れるのは私だけだった筈…。クロは無い、そもそも理解してなかったし、姫様は論外だし。
本当に…いつの間に!
「…永琳様。妖怪共が近づいていますので、私はここで。」
「ちょっと、あなたも他の人を見捨てる気なの?!」
「違います、死にに行くだけですから。」
「は?何を…。」
「どうせ、あっちの船には乗せて貰えませんし、永琳様も、私の様な者と月まで一緒に居られないでしょう。」
「何言ってるの!あなたも逃げるに決まっているでしょ!逃がさないわよ!」
「…永琳様、知っていますか?」
「何をよ?」
「この地は核爆弾によって爆破されます。数はおよそ二百とか。」
「なっ…!」
「だからさ、ちょっと待っててくんね?」
「はい?」
「(こら、せっかく説得してるんですから出てこない。)すみません。今のは二重人格とでも思ってください。」
「ええと、ちょっと待って。二重人格はどうでもいいわ。核って、そんなものいつの間に!人もいるのに?」
「ついでに、妖怪に痛手を負わせるつもりでは?後、このような文明を隠す為…とかですね。さて、永琳様、決心は鈍りましたか?」
「何の…事かしら?」
「何故、そんなに外へ出たがるんですか?」
「…友人が、居るから。」
「外へ出ることもなかったのにですか?」
「…研究資料を忘れたわ。」
「大丈夫です、既にこの船に乗せてあります。」
「嘘ね、あの量の物を、私が、私の家からここに来る前に、全て運べる訳無いもの。」
「いえ、月に着いたら分かります。あれは、捨ててしまうには勿体ない。」
こいつ、いつ私の研究所に…?
私の研究所に居たのは、クロと私の二人だけの筈…。
ふと気づくと、私の手が止まっているのに気づいた。
私としたことが、こいつの話を聞きすぎていたらしい。
間に合わない。
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「着いたよ。人間。」
僕は、ロケットの前に居る。
許すまじ、人間。
そうやって、気合いを入れ直した、その時。
ズドォォォォォォン
爆音が鳴り響く。
目の前は煙でよく見えないけど、分かった。
ロケットが、飛んでしまった。
「ゲホッゲホッ!な、何で?!」
[予定の変更くらい、しないと思ったのか?まあ、低脳な妖怪には難しい発想か?]
上を見上げると、大きな画面が浮いていた。映っていたのは、なんか太った奴だった。とりあえず、(仮称)豚で良い。
しかし、しまった!予定変更されてる事を視野に入れていなかった!
頭に血が昇りすぎだった!
[その土地に核爆弾を沢山置いてきた。精々遠くに逃げてみろ。]
「おいこら!他の人間逹はどうするつもりだ!」
[ふ…何を言っている。人間は、この船に乗っている者達しか居ないぞ?]
何を言っている?
ちょっと理解が追いつかない。
つまり、地上に居る者達は、要らないの?
街の方から声が聞こえる。
ふざけるな、と
殺す気か、と
裏切る気か、と
呪ってやる、と
その声に比例して、僕の妖気が膨らんでいく。
今なら本当の意味で何でも出来そうだ。
「う、ウウ…クアア………力ガ…溢レル……」
これならあの船ごと破壊出来る。
でも、かぐやちゃんが死んじゃうし…永琳も死んじゃうなあ……。
核もどうにかしなくちゃ。
「お、居たな、クロ。なあ、核爆弾とやらはそんなに凄いのか?」
「…ウン。早ク、逃ゲテ?」
「何か雰囲気変わったな。妖気も私より多いんだけど。まあいい、ルーミア!全員に通達!人間拐ってとんずらしろ!」
「分かったのか!」
流石、赤鬼さん。指示が早い。
「さて、逃げるぞ、クロ。」
「ン?アア、イイヨ。爆弾ヲドウニカスルカラ。」
「はい?」
守る事は僕の専売特許だ。これだけ妖気があれば、この辺一帯を覆い尽くす結界が作れるね。
広島がどれだけ大きかったのかは忘れたけど、何とかしてみよう。
まずは結界を張ろうか。
永琳と話していた彼は、近い内にまた出ます。
出落ちキャラではありません(一応)。